百年の歴史、百年の未来

The Tohoku Journal of Experimental Medicine (TJEM) は、東北帝国大学医科大学に教授として招聘された加藤豊治郎(内科学)、佐武安太郎(生理学)、藤田敏彦(生理学)の3名の教授によって1920年に創刊された国際的な英文総合医学雑誌です。日本で最古の定期的に刊行される英文総合医学雑誌でもあります。創刊当時は英語、ドイツ語、フランス語で刊行されていましたが、1956年以降、使用言語は英語のみとなり現在に至っています。

TJEMの際立った編集方針の一つとして、「定期的かつ永続的な刊行に努める」ことが挙げられます。事実、1920年の創刊以降、終戦直後の1946年を除き連綿と刊行され続けてきました。1923年に関東大震災で東京の印刷所が被災した際は、各方面の協力により米国フィラデルフィアのウィスター研究所で印刷されました。また、2011年の東日本大震災の際にも、印刷会社が被災したため冊子体の刊行は約1ヶ月遅れたものの、オンライン掲載は滞り無く行われました。このように、TJEMの刊行は幾多の困難にも屈すること無く行われてきました。そして、来たる2020年にTJEMは創刊百周年を迎えます。このTJEMの刊行を支える柴原茂樹編集長をはじめとする編集部の方々に、TJEMの運営についてお話を伺いました。

話し手:柴原、石垣、東、坂本、近藤(TJEM編集部)
聞き手:広報室
(敬称略)

世界中から送られてくる投稿

広報室:はじめに、TJEM編集部の業務内容についてお聞かせください。

石垣:まず、全世界の研究者たちから投稿されてきた論文を受け付ける作業をします。つぎに、投稿された論文の様式を吟味して、編集長にお届けした後、査読者の方々に審査していただいて、審査に通過すると改訂版を再投稿していただきます。その後、論文が受理されましたら、印刷業者と連絡を取りながら校正稿(ゲラ)を作り、著者と確認をしながら校正の作業に入ります。最終稿が確定すると、電子版としてオンラインに掲載する作業と、冊子体を作る作業に入ります。

広報室:年間にどのくらいの投稿があるのでしょうか?

東:例年だと年間で600~700本くらいですが、今年は700を超えるくらいになると思います。平均すると一日あたり2本程度ですが、月曜日ですと週末に投稿された分が溜まっていることもあるので、多い時は10本超えていることもあります。
まず、私が担当する投稿の受付から改訂までのプロセスをご説明したいと思います。最初に、投稿された原稿を、不備がないかどうか確認します。不備があれば、著者に連絡して、不備を直して投稿していただきます。不備がなければ、審査に回すかどうか柴原編集長や編集委員の先生に確認していただき、査読者を探すという段階にはいります。TJEMでは、査読者が決まっているわけではありませんので、柴原編集長や編集委員の先生と相談しながら査読者を探して、依頼するという形になります。

柴原:時々ある不備は、共著者のe-mailアドレスが間違っていることです。殆どの場合は入力ミスですが、共著者が投稿論文を読んでいない可能性もあるため、注意しなければなりません。

東:不備のチェックの段階で最も気にするのが、コピーアンドペースト、つまり剽窃についてです。近年、研究不正が大きな問題となっておりますので、特に気をつけるようにしています。TJEMでは、剽窃検知ソフトを2012年から導入しております。検知ソフトで検出された文章について一つ一つ目を通しまして、程度のひどいものですと、柴原編集長のご指示によって却下されます。
審査段階に進んだものは、査読者が決まった分について、査読をしていただきます。査読者からのコメント等が戻りましたら、改訂になるのかリジェクトになるのか、柴原編集長に判断していただきます。改訂と判断されたものについては、著者が改訂版を投稿しますので、そこからは石垣さんの方に受け渡します。

柴原:例年、論文の採択率は20%程度です。不採択となった論文の著者の皆様にとって、我々の意見が今後の研究に少しでも参考になればと願っています。一方、査読者を探すのは難事業です。貴重な時間を費やし論文審査をしてくれる査読者の皆様には心より感謝しています。

東:TJEMとしては決まった査読者の先生はいませんので、十人に打診しても見つからないことや、やっと一人見つかりましたということもあります。

オンライン公開のメリット/デメリット

石垣:私は改訂版の投稿受付から論文公開までを担当しています。改訂版が投稿されましたら、編集長と査読者からのコメントに従って修正されているかどうかを確認して、そこで不備があれば著者へ差し戻します。再審査になれば、再査読を依頼する場合や、編集長・編集委員の方に見ていただく場合もあります。
審査は、1回で通ることもありますし、2回、3回となる時もあります。改訂される過程で、新しい著者が加えられることもありますので、改訂投稿以降は、全著者のサインを頂くようにして、間違いがないよう厳しく確認をしています。もちろん公開が決まったときにも、コピーライトとして著者全員のサインを頂いています。
論文がAcceptされた後、印刷会社にゲラの作成を依頼し、著者に確認をしていただきます。それと合わせて、掲載に関わる書類もお渡しし、公開の最終段階へ進みます。

最終稿の確認が終わりましたら、オンライン公開のための電子版(HTML/PDF)と冊子体の作成を印刷会社に依頼します。編集部と印刷会社双方で確認をするのですが、著者からの修正が正しく電子版に反映されているかどうかは編集部で確認しますので、その作業に時間がかかっています。また、電子版ではテキスト中のリファレンスにリンクを貼っていますので、リンクが正しく移動するかどうかも確認しています。

広報室:それは大変な作業ですね。

柴原:冊子体の刊行だけの時に比べて、倍の作業になります。

石垣:冊子体の校正作業では、表紙や中表紙も作らなければなりません。また、冊子体とオンラインのページ番号などを全部一致させていかなければいけないので、矛盾がないように確認していきます。

柴原:オンライン公開の場合、特にHTML版には著者の目が入りません。PDFのゲラ校正は著者の責任ですが、オンライン公開の方は著者が確認できないため、非常に気を使います。

石垣:最近の傾向として、論文からではなくネット上の記事をリファレンスに引用したり、文科省などウェブページからガイドラインを引用したりする場合も増えています。本当にそのリファレンスが存在するのか、著者名やグループ名が正しいか、そういうものも追跡調査をして、正しいリファレンスかどうかを確認することもあります。
少しでもより良いものを公開していきたいので、どうしても時間をかけてしまいます。公開になった暁には、全著者にメールで公開のお知らせもしています。

近藤:私の主な仕事は東さんと石垣さんのサポートです。新規投稿も改訂版の投稿も担当しています。1日でも早く、より良い論文を公開できるよう、全力で論文と向き合っております。スピードも正確さも求められる業務ですので、論文が公開になるまでに、何度も編集部全員で確認しています。

坂本:私も近藤さんと同じくお二人のサポートをしています。他には会計の仕事です。著者の方にインボイスを送ったり、入金の確認を送ったりという業務に関わっています。おかげさまで、著者の方々のご協力によって入金も順調です。

真摯に誠実に

石垣:TJEMは総合医学雑誌なので、どなたが読んでもわかりやすいようにということをポリシーとして掲げています。特に、タイトルとアブストラクトには重きをおいているところですので、よりわかり易い表現を提案させていただくこともあります。

柴原:著者のためにという思いで、全員が編集業務に従事しています。関連して、TJEMの特徴は、できるだけ明快な英文になればと提案することです。英語が母国語でない著者が多いため、文法的に正しい英文であっても論理や表現に問題のある論文が散見されます。著者側から見るとおせっかいととられるかもしれないのですが、英文の修正についてもかなり踏み込んで提案しています。

広報室:そこまで誠実に対応してくれる雑誌は他にないですよね。貴重なお話をありがとうございました。

TJEM編集部にお話を聞いて、編集部の方々がTJEMに対する愛情と誇りを持って運営されていると感じました。TJEMの「定期的かつ永続的な刊行に努める」編集方針のもと、つぎの百年に向けて、今後も真摯な誠実さを持って刊行が続いていくと信じています。

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東北ジャーナル刊行会
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