東北大学大学院医学系研究科・医学部

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出産・育児と大学院の両立生活に苦労も
教授からの問いで気付いた研究の本質
経験生かし女子大学院生を支える

インタビュー
医科学専攻
量子診断学分野 卒業生
森 菜緒子
Naoko Mori
卒業年度:2008年度
卒業学位:博士(医学)
現在の職場・会社名:東北大学放射線診断科
現在の役職:助教
2022.05.30

森 菜緒子

出産子育てと並行し、臨床業務と研究をなりふり構わず

大学院に進学しようと思った理由を教えてください

私は2001年の卒業ですが、当時同級生や臨床研究の先輩方は大学院に進学する人が多く、私も迷わず進学しました。臨床研修は福島県いわき市の磐城共立病院(現いわき市医療センター)で3年行いました。3年間、月当直が7回という激務でした。3年目で東北大学の医局入局を考えましたが、少し臨床業務の割合を減らし研究を行うことが、医師としての人生の中で良い経験になるだろうと考え、量子診断学分野の大学院に進学しました。

進学してみて、どうでしたか?

苦労しました。最も苦労したのは出産・育児と大学院生活の両立でした。27歳で大学院に進学しましたが、28歳で第1子、30歳で第2子の出産をしました。医局の先輩方には驚かれました(笑)が、私としては大学院卒業後に教員になったり、一般病院に出向してから出産したりするよりは今の方が迷惑をかけないだろう、自分の責任でどうにか乗り切れるだろうと思っての決断です。高橋昭喜名誉教授と麦倉俊司教授がテーマの選択や研究の手法を指導してくださったため、4年半で卒業することができました。高橋教授と麦倉教授には本当に感謝しています。お二人の支援と、自身の若さもあり、無謀な計画を押し通し、なんとか卒業できたと思います。子どもの送迎、日中の臨床業務、データ取得、論文執筆などをなりふり構わず行って、医学博士を取得できた経験は貴重です。

研究テーマとそれを選んだ理由を教えて下さい

先に述べたように大学院生活は出産育児と同時並行だったため、研究テーマを自分でいくつか考えたりする余裕は全くありませんでした。当時、麦倉俊司教授が行われていたもやもや病のFLAIR画像のivy signについてのテーマ「もやもや病におけるfluid-attenuated inversion recovery(FLAIR)画像での軟髄膜の高信号“ivy sign”についての検討; 脳循環予備能の低下を反映するか?」を研究させてもらうことになりました。

普通の人が常識的に考えて明らかにすることが研究

研究室の雰囲気はどうでしたか?

私の研究は日中の診療業務の合間に画像ビューアーを用いて画像所見を記録したり、診療録から患者さんのデータを入力したりというものでした。夕方になると、麦倉先生に取得したデータを見てもらい、統計解析の行い方、今後のデータ取得の方針を相談しました。自分の取ったデータに有意差があり、仮説が正しいことが統計的に証明された時はうれしかったです。
論文執筆の段階では、高橋教授が一字一句見てくださいました。英語で理論的に説明することはこんなに大変なものなのかと驚きました。英文を書きながら、さらに必要なデータや検定があることが分かり、気が遠くなるような道のりでした。それでも、高橋教授が「君はどう思う?AとBに行った介入は平等だと思う?」と聞いてくださった時、研究に参加できていると強く感じました。普通の人間が、常識的に考えて明らかにすることが研究なんだということに気付かされました。最後に論文を投稿しアクセプトされた時は本当にうれしかったです。またやってみたいと思いました。

東北大学の良いところは?

多様性だと思います。医局には臨床、教育、研究、それぞれで得意分野の異なる先生方がいます。基礎医学研究、工学部や医工学の先生方とも共同研究が可能で、このような研究環境は恵まれていると思います。教育では医学科学生へのリサーチマインドを重視した講義もあり、このような講義の中で医学科学生を研究補助員として雇用してきました。医学科学生さんたちは考えが柔軟で、モチベーションにあふれ、良い刺激を受けています。

自身の経験基に、女子大学院生の博士号取得をサポート

●現在のお仕事について教えてください。また、大学院時代のご経験はどのように活かされていますか?

東北大学放射線診断科で助教として日々の放射線画像読影、学生教育、研究を行っています。特に女子大学院生と外国人留学生教育を重点的に行っています。私だけでなく、女子大学院生は出産、育児というライフイベントと博士号取得の両立が問題となることが多いと思います。自身の経験から、テーマの選択、時間配分、研究補助員の利用、学内サポートシステム(男女共同参画推進センター:TUMUG)の利用などの助言を行い、大学院生を指導するようにしています。
研究効率の向上は、時間確保の困難な女子大学院生が研究結果を出すために不可欠で、研究補助員として医学科学生を雇用し、データの保存、解析補助を行わせることにより大学院生の研究を促進するようにしています。このような大学院生指導ができているのも、無理をした大学院時代の経験と反省があるからこそと思っています。

効率的で正確な画像診断を臨床現場に導入するために

●今後の目標や抱負を教えてください

研究の幅をもっと広げたいと考えています。放射線画像研究の発展には画像解析と機械学習が不可欠です。効率的で正確な画像診断が臨床現場で導入されるために、このような研究にもっと携わっていきたいです。

mylife

休日は、1週間分の作り置きを料理しています。趣味はスパイスカレー食べ歩きです。写真はお薦めのスパイスカレー(レーゲンボーゲン)です。

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PROFILE
医科学専攻
量子診断学分野 卒業生
森 菜緒子
Naoko Mori

2008年度に医学系研究科量子診断学分野(現放射線診断科)で医学博士を取得。その後大学で教員となる道を選び、現在はマンモグラフィー、乳房MRI、CT、肝胆膵(すい)のMRI、CT等の日々の読影と大学院生の教育、画像解析によるがんの切除可能性判定、術前化学療法後の効果判定についての研究を行う。医学科学生にも研究補助員として画像解析研究に参加してもらい、学会発表、論文執筆まで指導している。

●関連リンク
東北大学放射線診断科