東北大学大学院医学系研究科・医学部

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医師として研究の考え方を学び
実験や観察の一つ一つに新鮮な発見
それを臨床につなげ、臨床を研究につなげる

インタビュー
医科学専攻
呼吸器外科学分野 在校生
冨山 史子
Fumiko Tomiyama
学年:博士課程4年
出身地:青森県青森市
2023.06.15

冨山 史子

医療の目まぐるしい発展・変化の基となる研究に関わりたい

●大学院に進学しようと思った理由を教えてください

呼吸器外科の医師として肺がんの治療に関わってきましたが、がん治療に限らず、現在の医療の発展・変化は非常に速く、その背景にはさまざまな研究があります。現在の医療がどのように進み、新しい治療がどのようにできていくのか、その基となる研究の考え方に触れ、できれば自分もその一部に関わりたいと思い、大学院での研究を考えました。研究の考え方を学ぶことで、今後医師として治療を行うにしても多面的な見方ができるようになりたいとも思い、進学を決めました。

●進学してみて、どうでしたか?

まずは、毎日の実験や細胞の観察の一つ一つが私にとって発見で、非常に興味深いと思いました。肺などの組織の中にある幹細胞(組織を修復・再生させる元となる細胞)に似た条件の細胞を人工的に作りたいという内容の実験をしています。特に、シャーレの中の細胞の様子が急に変わり、新しい性格を持った細胞のコロニーと思われるものを見つけた時は、自分しか知らないものがここにあるかもしれない、という気持ちで非常にうれしかったです。しかし、それを研究の結果とするためには、細胞の変化がどのような意義を持つのかについて客観的な指標や再現性が必要で、苦労している部分もあります。仮説に合うような実験の結果が得られることは多くはありません。実験の計画段階で仮説を立てた時に、それに合う結果だった場合、そうでなかった場合のそれぞれに考えられる原因と次の選択肢をたくさん準備しておくことが大切なのではないかと考えるようになりました。これからは在学中の限られた時間でどのように結果をまとめていくか、そしてどのように相手に伝わるプレゼンテーションができるかも課題となり、学ぶことがたくさんあると思っています。

外科医として、肺移植肺がん治癒の可能性が広がる再生医療に注目

●研究テーマとそれを選んだ理由を教えてください

肺を新しく作ろうという研究をしています。具体的には肺を形作る足場(骨格となる細胞外基質)のみを残して肺の細胞を取り除き、そこに新しい細胞を定着させることで肺を再生し、それを将来的には移植したいというものです。学生の時に肺移植に興味を持ったことから始まり、移植できる臓器を自分の細胞から作り出す再生医療に興味を持つようになりました。また、呼吸器外科医師として肺がんの手術をしていると、肺がんの切除可能性とともに切除後に肺機能をどれだけ残せるかを考えます。肺を部分的でも再生させることができれば、手術による肺がんの治癒の可能性も広がるのではないかとも考え、その点からも肺の再生に興味を持つようになりました。臓器の再生というと、一つの細胞から臓器を作るイメージを持っていましたが、そうではなく、臓器を足場と細胞に分けて考えるという組織工学の考え方を聞いた時、非常に新鮮で興味深いと思い今の研究テーマを選びました。

●研究室の雰囲気はどうですか?

呼吸器外科学分野の中で研究をしていて、指導してくださる先生の多くは呼吸器外科医で、肺がんや肺移植の手術を含めた治療をしている方々です。研究室では細胞を使った実験のほか、ラット、マウス、ブタといった動物を使った、より臨床に近いような実験も行われています。臨床データを使った研究に関しての相談もでき、研究に関してさまざまな選択肢があるのが良い点だと思います。先生方は話しやすい人が多く、直接の指導の先生以外にもいろいろと相談に乗っていただいています。

臨床と研究、両方の視点から医療が見られる医師に

●東北大学の良いところは?

分野の垣根が低いことではないかと思います。加齢医学研究所の中でもさまざまな分野との共同研究がありますし、私が行っている研究でも他学部の方にも協力いただいています。また、研究のサポートの仕組みが調っているのも長所だと思います。例えば、共通機器室があり、分野にない実験機材がそろっています。使い方など技術的な面に関してのサポートも充実しています。最近では電子顕微鏡での観察に関していろいろと相談に乗っていただいて、所属している分野だけではできないことがたくさんできるようになっています。

●今後の目標や抱負を教えてください

臨床と研究の両方の視点から医療を見られる医師になりたいと思っています。研究の面からは、現在行っている研究がどのように将来的に治療法につながり得るのかを常に考えたいです。臨床の面からは、現在の治療で分かっていない点、改善が必要な点を考え、研究につなげたいです。また、臨床でも研究でも、内容や考えを相手に伝えることを大切にしたいと思います。医療が高度化して選択肢が多くなるにつれ、そして研究分野が専門的になるにつれ、専門外の人に正しく伝えるのは難しくなります。相手に合わせて、何が必要な情報でどのように伝えると理解されるのかを常に考えたいです。大学院で異なる分野の学生・研究者の間でプレゼンテーションや意見交換をする機会が、それに役立つと思います。

mylife

510キロ程度のマラソン大会に出るのが好きで、朝や夕方によくランニングをしています。写真は広瀬川沿いの片道1キロほどのコースです。春は桜がきれいですし、季節と時間帯で変わる景色を楽しめます。

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PROFILE
医科学専攻
呼吸器外科学分野 在校生
冨山 史子
Fumiko Tomiyama

青森県青森市出身。東北大学医学部卒業後、青森県立中央病院で初期研修を行い、専門分野として呼吸器外科を選択。外科専攻医として研修後、東北大学大学院に進学。現在、学術振興会特別研究員(DC1)として研究を行っている。