東北大学大学院医学系研究科・医学部

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患者さんに貢献したいと理想を掲げ
臨床に近い研究を重ねた大学院生活経て
新薬開発の最前線でやりがいある日々

インタビュー
医科学専攻
病理診断学分野 卒業生
元村 直樹
Naoki Motomura
修了年度:2021年度
修了学位:修士
現在の職場:独立行政法人医薬品医療機器総合機構
現在の役職:審査専門員
2023.06.20

元村 直樹

「臨床に近い研究を行える」ことを最重視した研究室選び

●大学院に進学しようと思った理由を教えてください

大学入学当初より研究に興味があり、大学院に進学することを目指していました。そのため、大学院進学には悩まなかった一方で、学部3年時の研究室選択では非常に悩みました。薬学部に在籍していたのですが、改めてどのような研究に携わりたいのかを考えたところ、自身の研究が医薬品開発の一助になるなど、患者さんに何らかの形で貢献できることが理想だと気付きました。そこで、研究室を選択する際の軸として、「臨床に近い研究を行える」という基準を設けました。当時は医学系研究科の病理診断学分野が薬学部生を毎年1人採っていて、その研究室は基礎研究と臨床研究の橋渡し(トランスレーショナルリサーチ)を掲げていました。トランスレーショナルリサーチを掲げる病理診断学分野であれば臨床に近い研究ができると考えたため、当該研究室を志望しました。その後、卒業研究で取り組んだテーマなどを深めていきたいと思い、修士課程でも同じ研究室で進学しました。

●進学してみて、どうでしたか?

「臨床に近い研究を行える」という希望がかない、充実した大学院生活を送ることができました。在学中には学会発表やファーストオーサーの原著論文作成をはじめとし、さまざまな経験を積ませていただきました。特に、韓国の研究機関(Korea Institute of Science and Technology)との共同研究に関わる機会にも恵まれ、英語でのミーティングに参加させていただけたことなどはかけがえのない経験だったと思います。

居心地の良い雰囲気の中、一人一人が興味のある研究に没頭

●研究テーマとそれを選んだ理由を教えてください

修士論文の研究テーマは「原発性アルドステロン症(PA)副腎組織内におけるカルシウム拮抗薬(CCB)の分布とステロイド産生制御機構の関連性に関する検討」でした。PAはステロイドホルモンの一種であるアルドステロンが過剰産生されてしまう疾患であり、二次性高血圧症の主要な原因の一つとなっています。PAの薬物治療では降圧剤としてCCBが汎用されており、CCBは細胞内へのカルシウム流入を阻害し、血管平滑筋を弛緩(しかん)させることで降圧作用を発揮します。一方、カルシウムはアルドステロンを含むステロイドホルモンの合成においても重要な役割を果たしており、CCBがアルドステロンの生合成に直接作用することが示唆されていました。私の研究では、PA患者の副腎組織内でのCCBの動態を検討し、ホルモン合成酵素等との関係性を明らかにしました。研究テーマを選択するに当たり、私が薬学部出身ということもあり、指導してくださった先生から、医薬品に関する研究テーマとして上記をご提案いただきました。医薬品の作用に関する研究内容に大変興味が湧いたため、当該研究テーマを希望し、研究を行いました。

●研究室の雰囲気はどうでしたか?

それぞれが自身の研究テーマに集中しつつも、居心地の良い雰囲気があったと思います。研究室の特徴として、複数人で一つの研究テーマに取り組むのではなく、学生一人一人が異なる研究テーマを担当していたことがあります。これにより研究の進捗管理など、個人の裁量も大きく、それぞれが自身の研究テーマに責任感を持って研究に打ち込んでいました。居心地の良い雰囲気については、非常に手厚く指導していただけたのが要因だったと思います。研究を進める中で、想定と異なる結果が出ることもありましたが、その際にはなぜそのような結果が出たのかを指導教官の先生と一緒に考えました。新しい仮説を考案したり、議論の中で今までの研究とつながりが見えたりした時のうれしさは格別で、研究の楽しさを実感できました。研究室の他の方々にもとても優しく接していただき、分からないところを質問すると詳しく教えていただけました。このように周りの方々に支えられ、自身の研究に集中して取り組めました。

大学院で身に付けた知識と経験を新薬承認の現場で生かす

●東北大学の良いところは?

門戸の広さと高い研究力だと思います。研究室には社会人大学院生やさまざまな国からの留学生が在籍していて、まさに門戸の広さを感じられる環境でした。研究力について、特に修士の2年においては、前述の韓国の研究機関との共同研究を行ったほかにも、複数のプロジェクトに携わることができました。短い期間でさまざまな研究に取り組めたのは、東北大学の恵まれた環境があったからこそで、今までに東北大学が積み重ねてきた実績があるからこそだと考えています。

●現在のお仕事について教えてください。また、大学院時代のご経験はどのように活かされていますか?

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)で、新薬の承認審査部門で働いています。具体的には、企業などの医薬品開発に関する相談対応や新薬の審査などに携わっています。いずれの業務でも、企業などから提出された科学的な資料や論文を読むことが前提であり、それらの内容を基にチームで議論をしています。資料を読み解くための基礎知識として、大学院時代に学んだ知識そのものが生かされていると感じることもありますし、大学院時代に実験結果や先行論文を基に思考を深めていった経験や、研究室生活で身に付けた、新しいことを自ら調べて理解していく力も業務の中で重要なものとなっていると感じています。

●今後の目標や抱負を教えてください

社会人生活2年目に入り、分かることも少しずつ増えてはきましたが、まだまだ自身の力不足に直面することも多いです。一方で、新薬開発の最前線での議論に参加する中で、研究をしていた時のように好奇心が非常に刺激されることもあります。また、業務を通じて新薬の開発、ひいては患者さんに新薬を届けることに貢献できているため、日々やりがいを持って働けています。今後の目標としては、議論における自身の発信力を高め、新薬開発にもより貢献できるよう、決して慢心せずに謙虚に日々の業務に取り組み、高度な専門性を持った人材に成長していきたいと思います。

mylife

東北の観光や、カフェ巡りをしていました。仙台は駅前が集中的に栄えているため、新しいお店を見つけやすく、また、それぞれのお店に独自の特徴があったので、カフェ巡りを楽しむのに最適だったと思います。お気に入りのお店はいくつもあるのですが、写真は特に好きだった「LINKS」という紅茶のお店です。緑も非常に多く、カフェまで散歩するだけでも気分転換になりました。

写真1

PROFILE
医科学専攻
病理診断学分野 卒業生
元村 直樹
Naoki Motomura

20203月、東北大学薬学部創薬科学科卒業。20223月、東北大学大学院医学系研究科医科学専攻修士課程修了。同年4月より独立行政法人医薬品医療機器総合機構勤務。