東北大学大学院医学系研究科・医学部

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臨床で携わる放射線治療への理解を深めたいと
社会人院生として進学を決断
仕事と両立しながら得た成果を現場で発揮

インタビュー
保健学専攻
放射線治療学分野 卒業生
加藤 雅人
Masato Kato
修了年度:2017年度
修了学位:修士
現在の職場:一般財団法人脳神経疾患研究所附属南東北がん陽子線治療センター
現在の役職:診療放射線技師
2023.06.14

加藤 雅人

社会人院生として苦労しながらも
良い経験積み学会で評価も

●大学院に進学しようと思った理由を教えてください

実臨床で放射線治療に携わるうちに放射線治療についての理解をより一層深めたいと思い、社会人学生として大学院進学を検討しました。いずれ放射線治療に関連した仕事をしたい、大学院へ進学して放射線治療に関して深く学びたいと学部時代に漠然と考えていましたが、さまざまなことを考えた結果、就職して臨床経験を積みながら興味のある研究テーマを見つけてから社会人院生として進学することとしました。修士号、博士号を有するスタッフが多いという職場環境にも影響されて、進学への思いがより強くなりました。

●進学してみて、どうでしたか?

仕事との両立は大変な面もありつつ、思い切って進学を決断したことで研究への道を歩むことができました。大学院へ進学する前から研究テーマに関連した内容を学会発表していましたが、進学後に論文化を見据えて取り組むに当たり、研究することの大変さ、論理的思考力のなさを実感しました。先行研究を調査する、新規性のある内容を検証する、論文を執筆する、という中でたくさん悩みながらも、それらを繰り返すことで論理的思考力を向上できたと感じています。社会人院生として進学したため仕事との両立は可能なのか、十分な研究をすることは可能なのか常に不安でしたが、2020年度には日本放射線技術学会から年間最優秀論文賞に該当する瀬木賞を受賞したことで一定の評価をいただけたと考えています。つらいことや大変なことも含めて、非常に良い経験でした。

研究室で議論の重要性を実感
論理的思考力を高め切磋琢磨

●研究テーマとそれを選んだ理由を教えてください

研究テーマは「Field matching法を用いた食道がん陽子線治療におけるmatchline profileに関する検討-呼吸性移動が及ぼす影響とその対策について-」です。外部放射線治療では、装置で実現し得る最大照射野サイズよりも大きな標的に対して線量分布が平坦となるように複数の照射野をつなぎ合わせるfield matching法(FM法)という照射技術があります。陽子線治療装置の仕様によっては最大照射野サイズが汎用型リニアックよりも小さい場合があり、髄芽腫に対する全脳全脊髄照射法、巨大肝臓がん、予防域を含める食道がんなどを対象にFM法は活用されています。食道がんに対する陽子線治療は、脊髄、心臓、肺といったリスク臓器に対する線量をX線に比べて効果的に低減することが可能です。一方、FM法を用いる症例において、つなぎ目の線量分布(matchline profile)に対する呼吸性移動の影響により線量の過不足が生じる潜在的なリスクが生じます。そこで、私の研究ではその影響の評価および改善策を検討しました。

この研究テーマを選んだ理由は、実臨床業務において呼吸性移動を伴う症例に対する治療について特に興味を持ったことです。治療計画用CT画像はある一瞬の状態を捉えた静止画ですが、実際の照射時には胸腹部領域に存在する標的は呼吸性移動により治療計画用CT画像の位置から動くことがあります。それにより、立案した治療計画の線量分布が想定外のものに変化する可能性があります。呼吸性移動を伴う症例の治療に対してどのように取り組む必要があるのか考えさせられたのが本研究に取り組むきっかけでした。

●研究室の雰囲気はどうでしたか?

異なる研究テーマの内容でも的確かつ積極的に議論でき、疑問に思ったことを率直に質問し合える研究室でした。私の研究テーマは実臨床で経験していないとなかなかイメージしづらいものだと考えていましたが、研究室の先生方やメンバーからさまざまな意見を頂くことで思わぬアイデアが浮かぶこともありました。研究室で多くの議論を経験したことで議論することの重要性を強く感じ、私も同じように論理的思考力を高めることで切磋琢磨(せっさたくま)していきたいと思うようになりました。また、社会人院生という立場上、研究室にいる時間が限られている中、不在の時でもメールで研究のアドバイスや論文の添削を頂くことで他の学生と同様に研究を進めることができました。

大学院で得た多くの知見と多角的な視点を実臨床に生かす

●東北大学の良いところは?

古くから実績のある総合大学であることから、さまざまな背景を持つ方々が集まり互いに刺激し合えると考えています。東北大学の理念として「門戸開放」が掲げられていて、私のように社会人院生として進学する場合にも十分対応できるようカリキュラムも整備されています。また、仙台は立地の面でも良いと感じました。社会人院生として福島県郡山市から通学する際、新幹線や高速バスで日帰りが可能で、仙台に到着してからもバスや地下鉄などで東北大学へのアクセスも良好でした。社会人院生の中には、北海道や関西方面から飛行機を利用して通学されている方もいました。

●現在のお仕事について教えてください。また、大学院時代のご経験はどのように活かされていますか?

南東北がん陽子線治療センターで診療放射線技師として放射線治療に携わっています。大学院の研究を通して多くの文献に目を通すことで実臨床にも通じる多くの知見を得られました。研究を通してさまざまなことを深く思考することを繰り返したことで、以前よりも実臨床で多角的な視点から解決策や問題点などを捉えられるようになったと自覚しています。実臨床では課題に突如直面することがあり、その際にも論理的思考を欠かさずに対応することの重要性を感じるようになりました。

●今後の目標や抱負を教えてください

大学院時代に力不足を痛感したことで、さまざまな資格を取得する、いろいろな学会やセミナーに参加して多様な知見を得るなど、専門性を高めたいという気持ちが芽生えました。学会発表などの学術活動を通して、日々の実臨床で患者さんに提供する治療品質を向上させていきたいです。

mylife

社会人院生を修了した後、家族と一緒に八木山動物公園へ行ったことが思い出に残っています。写真はCOVID-19が発生する前のものですが、また家族みんなで行きたいと思います。

写真1

PROFILE
保健学専攻
放射線治療学分野 卒業生
加藤 雅人
Masato Kato

2013年3月 東北大学医学部保健学科放射線技術科学専攻卒業
2013年4月 南東北がん陽子線治療センター入職
2016年4月 東北大学大学院医学系研究科保健学放射線治療学分野博士前期課程入学
2018年3月 東北大学大学院医学系研究科保健学放射線治療学分野博士前期課程修了
2021年6月 日本放射線技術学会2020年度学術業績賞 瀬木賞受賞