東北大学大学院医学系研究科・医学部

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臨床から医療マネジメント研究を経て、
医療政策の道へ
学業と仕事の両立を継続

インタビュー
公衆衛生学専攻
医療管理学分野 卒業生
松村 彩未
Ayami Matsumura
卒業年度:2019年3月 公衆衛生学修士課程卒業
現在、医科学専攻 医療管理学分野 博士課程二年在籍中
卒業学位:公衆衛生学修士(MPH)
現在の職場・会社名:厚生労働省医政局
現在の役職:係長
2020.06.04

松村 彩未

幅広い知識とMPH取得を目指して

●大学院に進学しようと思った理由を教えてください

卒業研究が楽しかったので、いずれは修士課程に進んで研究手法について改めて学びたいと考えていました。それまではまず臨床経験を積みたいと思い、学部を卒業後は大学病院で働いていました。臨床にやりがいを感じる一方で、自分の知識や教養がまだまだ不足していることを実感することが多く、そのことが進学意欲をより強いものにしたと思います。
医療だけでなく社会学や数学の分野にも興味をもっていたため、研究手法を統合的に学び、加えてMPH学位が取得できる公衆衛生学修士課程を選びました。

●進学してみて、どうでしたか?

社会人入学制度もありますが、私はフルタイム勤務をしながら通っていたので当直空けに授業を受けたりするのは身体的に少々つらかったです。
職場には授業のある曜日や時間に合わせてシフトを組んでもらうなど配慮して頂き、大変感謝しています。授業自体はずっと望んでいたことだったので日々楽しく受けていました。
また、先生方が社会人学生に理解があることも学びに集中できた要因のひとつだったと思います。
様々なバックグラウンドを持つ友人が出来たことで自分が普段触れることのない多くの情報が入ってくるため非常に刺激になりましたし、見聞が広がったと思います。

将来に備えて医療をマネジメントしていくことの必要性をテーマに

●研究テーマとそれを選んだ理由を教えてください。

修士課程では認知症患者による臨床現場の業務負担に関する研究を行いました。
臨床現場では高齢化に伴い認知症の患者が年々増えています。認知症患者は症状が様々で、長期の入院になってしまうと症状が悪化するケースも多く現場の医療従事者はかなり疲弊します。
高齢化は世界的な課題のひとつですが、特に日本はその先陣を切っており、今後も限られた医療資源の中で医療の質を維持できるよう備えていく必要があります。しかし
果たして本当に医療の質を担保していくことが可能なのだろうか・・・という疑問と不安を持ちながら働いていました。将来に備えて医療をマネジメントしていくための示唆を得られないかと思い研究に取り組みました。

ビックデータを扱う知識とスキル

●研究室の雰囲気はどうでしたか?

所属する医療管理学分野は自主自律を重んじ、学生の興味関心を尊重して指導してくれます。またビックデータを扱う知識とスキルが身につくので、そのような分野に興味がある方にはうってつけだと思います。
入学の際には必ず研究室訪問を行い自分の興味と研究室の研究内容・方針の擦り合わせを行うようにすると良いと思います。

米国での研修を経て、医療政策の道へ

●現在のお仕事について教えてください。また、大学院時代のご経験はどのように活かされていますか?

修士課程卒業後は、臨床で働きながらそのまま博士課程へ進学しました。
それまではただ学びたいという気持ちだけで大学に通っており、なんとなくこのまま一生大学病院で働き続けるのだろうなあと漠然と考えていました。
正直具体的なキャリア形成についてさっぱり考えておらず、このまま臨床経験を積み管理職を目指したいかどうかという問いにも明確な答えを出せずにいました。
在学中、医療の質が高く、かつ医療従事者の満足度が高いことで名を馳せている米国の病院へ研修に行く機会があったのですが、自分にとって非常に刺激的な経験だったため、日本の医療の悪い点を改善し良い点をより良くしていくにはどうすれば良いのかを一層意識するようになりました。
大学病院も大きい組織ですが、その組織も制度あってのものです。自分の仕事も将来を含めた生活も、良くも悪くも国の政策ありきだよなと考え、検討した結果医療政策の大元である厚生労働省への転職を決めました。
現在、医師不足が進む中で多職種、とくに看護職へのタスクシフティングをいかにして効率的に進めていくかを検討し政策立案する業務を担当しています。
大学院で学んだ統計学や研究手法だけでなく、研究を実施する上で培うことができた思考過程や分析の視点は大学院に行ったからこそ身についたものだと思います。政策の現場においてそれらはすべて必要とされるものなので、学びが日々活かされていると実感しています。

●今後の目標や抱負を教えてください

目標のひとつであった医療政策の現場に携わり始めたばかりですが、アンテナを高くして幅広い分野を学び経験したいと思っています。 仕事をしつつ、研究者としてもスキルアップしたいです。

●入学を検討している方へ

進学する理由は人それぞれだと思いますが、人に語れる何かを持つ人になるために、大学院への入学は良い機会になると思います。
学位を取ることだけをゴールに設定するのではなく、学位を取ってその後に何をしたいか、何に活かすかが重要だと思います。
でないと、“修士号を持っているだけの人”になってしまいもったいないです。私自身もそうならないように・・・と日々奮闘しております。
また、自分がなぜ学びたいのか・将来どうなりたいのか明確にしておくと勉強と研究へのモチベーションを維持できると思います。頑張ってください。