東北大学大学院医学系研究科・医学部

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アットホームな研究室で
多彩なメンバーと
遺伝性疾患の病態解明に挑み
新しい生命現象を明らかに

インタビュー
公衆衛生学専攻
遺伝医療学分野 教授
青木 洋子
Yoko Aoki
2021.06.02

青木 洋子

疾患が起こるメカニズムに深い疑問を持ち、解明する

●研究の概要を教えてください

私たちの研究室では「遺伝性疾患の病態から新しい生命現象を明らかにする」ことを目標に研究を行っています。2005年に世界に先駆けてがん原遺伝子RASの生殖細胞系列での変異を持つ疾患を明らかにし、RASシグナル伝達異常症(RASopathies)という疾患概念を提唱しました。RAS/MAPKシグナル伝達経路におけるさまざまな新規原因遺伝子を同定し、疾患モデルマウスの作製と病態解明を行っています。最近は新規プロジェクトとして、橈尺骨(とうしゃくこつ)癒合や血液疾患を伴う遺伝性疾患の病態解明、RASのユビキチン化と分解機構の解明、リンパ管腫症を含む脈管奇形のゲノム解析研究などを行っています。疾患がなぜ起こるのか、そのメカニズムに深い疑問を持ち、その疑問を解明していくことで、新しい生命原理を明らかにすることが目標です。当研究室は、東北大学病院で遺伝科として診療を行っており、遺伝性疾患に対するゲノム解析研究や遺伝カウンセリング研究も行っています。

●研究室はどのような雰囲気ですか?

こぢんまりしたアットホームな教室です。医局の中には、研究や診療に関連するさまざまな背景のメンバーがいます。

世界を意識して研究に没頭し、誰も見たことのない発見を

●学生にどのようなことを期待しているかなども含め、進学希望者へのメッセージをお願いします

基礎研究に従事する医学博(修)士課程の学生さんには、常に世界を意識して研究に集中、没頭し、まだ誰も見たことのない新しい「発見」を目指してほしいと思います。これまで小児科、神経内科、心臓血管外科、小児泌尿器科などさまざまな診療科の先生が大学院生として当科で研究を行っています。研究に触れたことがない方にも丁寧に指導します。

先輩たちは全国や海外の病院、大学で診療や研究に活躍中

●遺伝医療を担う重要な人材である認定遺伝カウンセラーを養成

2013年に東北メディカル・メガバンク機構(現東京慈恵会医科大学附属病院)の川目裕先生が遺伝カウンセラー養成コースを開講されました。2019年度から当分野に遺伝カウンセリングコースが移管されましたが、これまでに卒業生13人の方が認定遺伝カウンセラーとして資格を取得しています。ゲノム解析研究や遺伝医療に関わる様々な背景を持つ教官や、当コース卒業生の認定遺伝カウンセラー2人による充実した養成体制が整っています。学生さんには、臨床遺伝学や遺伝カウンセリングに関する専門的知識を習得するとともに、患者さんやご家族の気持ちに寄り添える認定遺伝カウンセラーを目指してほしいです。ゲノム解析研究やがんゲノム医療に触れる機会が豊富にあるためゲノムデータの解析・解釈も自然に身に付き、将来的に、新しい遺伝医療の資格であるジェネティックエキスパートを目指すことも可能です。

●修了後はどのような進路がありますか?また、修了生はどのように活躍していますか?

医学博士課程修了者の方は病院の診療科に属して診療や研究を続けています。海外留学して研究する方もおられます。公衆衛生・遺伝カウンセラーコースの卒業生の方は全国の基幹病院などで認定遺伝カウンセラーとして活躍しています。

●病院や企業に勤務しながらの修学は可能でしょうか?

当分野では原則受け入れておりません。博士課程の医師は当科で診療をしています。

研究に集中でき情報が得やすく他学部との共同研究も盛ん

●東北大学の良いところは?

「研究第一主義」を掲げており、研究に集中できる環境があることです。医療系、生命科学系、工学系など他学部の先生方との共同研究も可能であり、セミナーなども豊富で情報も得やすいと思います。大学病院はがんゲノム医療中核拠点病院でもあり、ゲノム解析研究の推進、保険収載での遺伝学的検査への対応などゲノム医療の中心として機能しているほか、遺伝関連人材育成の実績があります。

◆プレスリリース

  1. ヌーナン症候群の新しい原因遺伝子を発見- ゼブラフィッシュでヒト遺伝病の病態を再現-
  2. 新規ヌーナン症候群モデルマウスの作製に成功-治療法開発への応用に期待-
  3. 難治性疾患コステロ症候群のモデルマウス作製に成功-エネルギー代謝の変化を初めて発見-
  4. 血球減少を伴う先天性疾患の新たな原因遺伝子を発見-病態解明と治療法開発へ-

◆公衆衛生学専攻/遺伝カウンセリングコースのパンフレットはこちら

column

医学部のキャンパス内にある掬水(きくすい)の池がお気に入りの場所です。5号館前のイチョウの木、生協周辺の桜、ヒポクラテスの木、1号館南の樹木などと共に、星陵キャンパスの中で守っていきたい場所の一つです。

掬水の池の由来等:戦前より存在し、平成504月に当時の石田医学部長の依頼を受けた黒川利雄元東北大学学長によって命名された。命名の出典は、中国の唐の時代の詩集「全唐詩」である(令和3年学生便覧 p140より)。全唐詩の解釈については多数記載あり。「掬水月在手、弄花香満衣」の解釈には「日常的な営みや遊びから生まれる思いがけない喜びの発見(入矢義高監修/古賀英彦編著『禅語辞典』)をはじめ、さまざまあるようです。

参考リンク
https://zengo.sk46.com/data/mizuwokiku.html

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PROFILE
公衆衛生学専攻
遺伝医療学分野 教授
青木 洋子
Yoko Aoki

1990年東北大学医学部を卒業、小児科研修後1996年に東北大学大学院博士課程修了。1996年からハーバード大学・マサチューセッツ総合病院神経科学センターに留学し、20004月から日本学術振興会特別研究員(PD)、同10月に東北大学医学系研究科遺伝病学分野助教に就任。准教授を経て2015年から東北大学医学系研究科遺伝医療学分野教授。東北大学病院遺伝科長、遺伝子診療部長を兼任。

●関連リンク
遺伝医療学分野ウェブサイト