東北大学大学院医学系研究科・医学部

大学院説明会
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卒業研究と臨床経験の中で
患者さんを支える役割が現場以外にもあると学び
機械学習による医療の困り事解決図る

インタビュー
保健学専攻
緩和ケア看護学分野 在校生
平山 英幸
Hideyuki Hirayama
学年:博士課程1年
出身地:栃木県
2022.05.30

平山 英幸

患者さんや医療者の困り事を明らかにすることで現場支える

●大学院に進学しようと思った理由を教えてください

学部生時代に現在の指導教員である宮下光令教授と出会ったことが大学院進学を考え始めたきっかけです。大学入学当初は、看護師免許を取得したら看護師として働き続けるのだと当然のように考えていました。しかし、宮下教授の下で卒業研究を行う中で、患者さんを支えるのは現場で働く看護師だけでなく、研究によってより良い看護ケアや患者さん・家族・医療者の困り事を明らかにし、現場に還元していくことも大切な役割だと学びました。実際に3年間の臨床経験の中でも、目の前の患者さんにもっと何かできることはないのだろうかと悩んでいる時に、研究で有効とされている看護ケアを実践し、苦痛の緩和につなげられたことがありました。そのような経験から、私も現場の困り事を解決できるような研究者になりたいと決意し、学部生時代にもお世話になった緩和ケア看護学分野に進学することにしました。

●進学してみて、どうでしたか?

大学院生活は今年で3年目となりますが、いろいろな経験をし、とても充実した生活を送っています。看護師として働いている間に、研究の方法論などについて忘れてしまっている部分もありましたが、修士1年の講義では研究の方法論や研究に必要な統計学について学ぶ講義があり、講義で学んだ知識を生かしながら研究を進めることができています。
現在、異分野融合や産官学連携などによって未来の医療課題を解決することを目標とした未来型医療創造卓越大学院プログラムにも所属しています。そこでは、医学系の学生だけでなく、医工学、生命科学、心理学、教育学、経済学など多種多様なバックグラウンドの学生と共にさまざまな研修・講義を受け、多くのことを学んでいます。

機械学習活用し主観に頼らないアセスメントを可能に

●研究テーマとそれを選んだ理由を教えて下さい

音声認識や画像認識を用いた患者の苦痛や満足度の定量化を博士課程のテーマとしています。修士課程では患者報告型アウトカムによる専門的緩和ケアの質評価に関する研究を行いました。患者報告型アウトカムは患者さん本人から直接得た回答のことで、苦痛がどれだけ改善したか、治療に満足しているかなどを質問し、医療の質を評価するアウトカムとして重要視されています。しかし、実際に研究で取得してみると、緩和ケアを受けている患者さんは意識レベルが低下している、苦痛が強いなどの理由で医療者の質問に回答することが難しい場面が少なくありませんでした。
現在、機械学習の進歩によって、音声や画像の情報からさまざまな情報が抽出できるようになっています。これらを用いて患者さんの苦痛や満足度を定量化できれば、医療者の主観に頼らないアセスメントが可能になると考えています。

教育リソースが充実し、学内での異分野連携もスムーズ

●研究室の雰囲気はどうですか?

緩和ケア看護学分野では、研究コースとがん看護専門看護師コースがあり、さまざまな経験を持つ看護師が所属しています。学部生からそのまま研究のために進学する方もいれば、看護師としてキャリアを積んだ上で進学する方もおり、多種多様な意見を聞くことができます。看護師として臨床で働きながら在学中の方も多く、現場目線で研究への的確なアドバイスをいつも頂いています。オンラインでの交流が多いですが、皆さん仲が良く、良い環境だと感じています。最近は中国やバングラデシュからの留学生も増え、国際的な研究室になりました。

●東北大学の良いところは?

研究のしやすい環境です。具体的には、教育リソースが充実しているところと総合大学として学内の連携がしやすいところです。
東北大学は豊富な教育プログラムがあり、学びたいことがあれば学内で何かしらのセミナーや講義を受けることが可能です。私は所属している卓越大学院プログラムでもさまざまな講義を受けていますが、それに加えて研究の知財に関するセミナーや、ビジネスについて学ぶ研修プログラムにも参加しています。
研究に関しては、博士課程のテーマに関して情報科学研究科の先生や大学院生に相談する機会を得て、共同研究として実施しています。学内に多分野の第一線で活躍されている先生方がいるため、異分野融合による研究をしたい時に相談することが可能です。

研究の成果を社会実装するため事業化へのチャレンジも

●今後の目標や抱負を教えてください

まずは、現在行っている研究にきちんと向き合い、医療分野におけるAIの活用について学びながら、患者さんや医療者の役に立つ成果を出していきたいです。さらに、研究の成果や学んだことを社会実装する手段の一つとして、事業化にもチャレンジしていきたいと思います。研究は、結果を論文や学会発表で公表するだけでは実際に活用されるかは現場任せになってしまいます。これまでに積み上げてきた成果を良い形で社会に還元できるような研究者になりたいと思います。

mylife

星陵キャンパスから少し歩いた所にある大崎八幡宮です。学部生時代には大崎八幡宮のすぐ近くに住んでいたので、頻繁にお参りに行っていました。今でも初詣やどんと祭などの行事や散歩で時々訪れています。伊達政宗の時代から仙台の守り神として祭られており、野球やサッカーのプロ選手も祈願に訪れる観光スポットです。私も勝負事の際にはお参りに行くようにしています。

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PROFILE
保健学専攻
緩和ケア看護学分野 在校生
平山 英幸
Hideyuki Hirayama

東北大学医学部保健学科卒業後、国立がん研究センター東病院の呼吸器内科外科・食道外科・胃外科の混合病棟で看護師として3年間勤務。2020年4月に東北大学医学系研究科修士課程へ進学、未来型医療創造卓越大学院プログラム生採用。2022年4月に博士課程進学。現在は患者報告型アウトカムを用いた専門的緩和ケアの質評価と、音声認識や画像認識による患者報告型アウトカムの代替指標の探索について研究を行う。