医科学専攻
分子内分泌学分野
纐纈 拓海
2023.05.24
大学院説明会
特設ウェブサイト
学部4年時の卒業研究がきっかけです。それまでは学部を卒業したらすぐに就職することを考えていましたが、自分の興味を持つ遺伝子や疾患について、培養細胞やマウスなどを用いた多角的な解析を自ら手を動かして明らかにしていく過程が非常に楽しく感じました。さらに自分が出した結果が新たな発見であり、疾患の病態メカニズムの解明につながり得ると分かった時に研究にやりがいを感じるようになり、大学院への進学を考えるようになりました。そして、自身が始めた研究について、他の方に任せるのではなく自身の手で責任を持って論文などの形にまとめるところまでやりたいという考えもあり大学院への進学を決めました。
自身の研究に対してやりたいことが増えていき、いろいろな手技を学んでいくのは非常に楽しいものでした。その過程では、医学系研究科内の他の研究室の方々だけではなく、東北大学の特色の一つである融合領域研究として、薬学や工学など他の研究領域の方々とも連携しながらより良い成果を目指すということもあり、未知を明らかにするために充実した研究生活を送ることができていたと思います。
大学院ではグルコース応答性の転写因子ChREBPに着目し、本因子活性阻害による糖尿病性腎症の新規治療薬の開発という研究テーマに取り組みました。ChREBPは高血糖刺激に伴って活性化し、糖尿病下では過剰な脂肪合成による脂肪肝や肥満を誘導することが知られていました。さらに本因子の腎臓内での活性化は酸化ストレス反応を誘導することが分かっており、薬学研究科と共同で本因子を阻害する薬剤の開発に取り組むことにしました。私がこの研究テーマを選択した一番の理由は、中学生の頃に父が糖尿病を発症し治療していく様子を見ており、糖尿病の合併症である糖尿病性腎症の研究に携わりたいと思ったからです。身近な人の力になりたいという子どもの頃からの思いがきっかけで医学研究の道を選択しましたが、糖尿病は多くの人が抱える疾患であるため、糖尿病の合併症に対する有効な治療法の確立は多くの人の生活を豊かにすることができるという点も本研究を選択した理由の一つです。
分子内分泌学分野は内分泌代謝疾患やそれに関わる転写因子についての研究を中心に行っており、基本的な手技から丁寧に指導していただけます。研究室自体は非常に自由度が高く、興味のある因子や手法などについて自分で考えて実施することができます。また研究室内でのディスカッションも活発で、週1回の分野ミーティングにより分野メンバーと一緒に自身の研究内容を深めていくことができます。
東北大学の良いところはやはり総合大学であることを生かした研究環境にあると思います。学際高等研究院をはじめとして学内では分野・研究科の垣根を越えた交流が盛んに行われており、自身の研究領域の視点だけでは見えてこなかったことを見つけるきっかけになります。そして研究者として今後の研究を発展させるための幅広い知識を得ることにつながると思います。
東北医科薬科大学では大きく分けて学生教育と研究活動を行っています。学生教育は医学科学生に対して臨床実習における臨床検査部での実習指導・学生評価や課題研究指導、そして講義補助を行っています。まだ仕事に慣れる段階で勉強の日々ですが、東北大学大学院時の学生実習補助の経験から、学生に対してどのような教え方をするべきなのかを生かせているかと思います。また研究活動については、自身で立ち上げた研究と検査部での臨床データを用いた解析を行っており、研究手法や統計解析などの大学院での研究経験を生かせています。
臨床(患者さん)へとつながる研究を行っていければと思っています。基礎医学研究で見いだされた成果について、モデル動物ではどうなのか、そして実臨床ではどうなのかといったような臨床応用を目指した解析を進め、最終的には患者さんへの還元を目標とした研究を実施したいです。病気を原因として悩み苦しむ人たちに対して、微力かもしれませんが何かしらの力になれるような研究に取り組んでいきたいと思います。
星陵キャンパス内には桜をはじめとして四季を感じる自然が広がっていると思います。実験の合間や少し疲れた時にはキャンパス内を散歩しながら木々や野鳥を眺めて気分転換をしていました。
2017年3月東北大学医学部保健学科検査技術科学専攻卒。2019年3月東北大学大学院保健学専攻修士課程(分子内分泌学分野)修了。2022年3月保健学専攻博士課程(分子内分泌学分野)修了後、現職に至る。東北医科薬科大学では白血病細胞における代謝調節因子の機能解析に基づく白血病の病態解析に取り組む。東北大学には非常勤講師として在籍し、糖尿病性腎症の新規治療薬の開発の研究や学生の研究指導を行っている。