拠点メンバー
筒井 健一郎(認知行動神経科学)
東京大学文学部心理学科卒業、同大学院博士課程修了・博士(心理学)。日本学術振興会特別研究員(日本大学医学部生理学教室所属)、ケンブリッジ大学解剖学科助手を経て、2005年 東北大学大学院生命科学研究科助教授。2007年 新職階制移行のため同准教授。専門は、認知行動神経科学、生理心理学。2003年度日本神経科学学会奨励賞受賞。訳書に「カールソン神経科学テキスト(共訳)」。
- 5年間の研究業績のまとめ
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前頭連合野機能の研究 経験的に獲得した機能的カテゴリに基づいて行動の切り替えを行わせる「グループ逆転課題」を考案してサルに訓練し、課題遂行中に前頭連合野から単一ニューロン活動の記録を行った。その結果、前頭連合野には、特定のカテゴリに属する刺激に共通して反応するニューロンがあることが分かった。また、それとともに、異なるカテゴリに対して、それぞれどのように対応するべきかというルールに関する情報を保持しているニューロンも見つかった。これらのデータをもとに、機能的カテゴリ=知識と、ルール=文脈情報に基づいて行動を選択することを実現する、前頭連合野内の神経回路モデルを作成した。上記の成果のうち一部はすでに論文として発表し(Yamada et al., 2010)、現在、数編の論文を執筆中である。
報酬・学習系の研究 脳機能イメージングによって、報酬や罰に感受性のある脳領域を同定する実験を行い、帯状皮質に報酬領域および罰領域を同定した(Fujiwara et al., 2009)。また、前頭連合野が報酬に関する高度な認知判断(相対的な価値判断)にかかわっていること(Fujiwara et al., 2009)、報酬や罰に対する感受性の個人差が前頭連合野の活動の違いに基づいていること(Fujiwara et al., 2008)を示唆する結果が得られた。学習の神経機構を明らかにするため、線条体から単一ニューロン活動の記録を行い、学習における教師信号と考えられる報酬予測誤差を表現するニューロンを見つけ、線条体が学習に重要な役割を果たしていることを示した(Oyama et al., 2010)。
単一ニューロン活動の慢性記録実験に適用可能なニューロン標識法の開発 ガラス電極に蛍光タンパク質の遺伝子をコードしたプラスミドを充てんし、単一ニューロン活動の記録を行った後に、そこに大電流を流してプラスミドを細胞に導入する技術を確立し、in vivoで長期間持続する単一ニューロンの標識技術を確立した。
- 代表的な論文
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- Oyama K, Hernádi I, Iijima T, Tsutsui KI. Reward prediction error coding in dorsal striatal neurons. J Neurosci 30, 11447-57, 2010
- Yamada M, Pita MC, Iijima T, Tsutsui KI. Rule-dependent anticipatory activity in prefrontal neurons, Neurosci Res 67, 162-71, 2010
- Fujiwara J, Tobler PN, Taira M, Iijima T, Tsutsui KI. Segregated and integrated coding of reward and punishment in the cingulate cortex. J Neurophysiol 101, 3284-93, 2009
- Fujiwara J, Tobler PN, Taira M, Iijima T, Tsutsui KI. A parametric relief signal in human ventrolateral prefrontal cortex. Neuroimage 44, 1163-70, 2009
- Tsutsui KI, Sakata H, Naganuma T, Taira M Neural correlates for perception of 3D surface orientation from texture gradient. Science 298, 409-412. 2002