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講義・セミナー名 |
東北大学脳科学GCOEセミナーのお知らせ |
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開催日時 |
2009-09-24 15:00 |
開催場所 |
星陵キャンパス・5号館2階 201号室 |
日時 2009年 9月24日(木)15:00-16:30
会場 星陵キャンパス・5号館2階 201号室
演者 中村 俊 博士
東京農工大学大学院共生科学技術研究院
演題 共感性発達の神経回路機構
私達は、非言語コミュニケーションに着目し、コミュニケーション成立の核にある「共感性」の神経機構を解明することを目的に研究を行っている。共感性に着目する理由は、これが動物から人間にいたるまで社会生活を営む生物にとり必須の機能だからである。共感性の表現は、情動の伝播から、他者の行為の意図理解、さらに他者の心の動きや信念の違いの理解(心の理論)に至るまで多様で、生物種に固有な面もあるが、進化的には適応の諸段階と看做すことが可能である。
非言語コミュニケーションの生後発達は、とくに臨界期における環境と遺伝的なプログラムの相互作用で生じるため、同じ遺伝子型を持っていても後天的に表現型が変化し(epigenetics)、しかも長期にわたりその表現型が維持されることが知られている。人間において、環境の統制は不可能であるため、共感性の発達における他者との相互作用と神経回路発達の関係を因果づけることが出来ない。従って、共感性の発達を神経回路のレベルで解析できる動物モデルを開発することが必須である。そこで、私達は、「刷り込み学習」の神経機構が解明されつつあるニワトリのヒヨコと、多彩な音声コミュニケーション(call)を行う小型霊長類であるマーモセットをモデルに、社会性行動発達の行動学的解析を行い、個体間の運動感覚的相互作用によってcallの意味が獲得されることを明らかにした(ヒヨコ、マーモセット)。さらに、臨界期における社会的相互作用の不全を、セロトニン選択的トランスポーター阻害剤により部分的に補償できることをつきとめた(ヒヨコ)。最後に、これらの行動発達のepigenetics解析の進展についても紹介したい。
連絡先:創生応用医学研究センター 形態形成解析分野(大隅典子)内線8203