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講義・セミナー名
第18回東北大学脳科学グローバルCOE若手フォーラム
開催日時
2009-10-09 17:00
開催場所
医学部5号館201号室
概要

日時 : 2009年10月9日(金)17時00分〜
場所 : 医学部5号館201号室
演者および演題 :
平林祐介博士(東京大学・分子細胞生物学研究所・情報伝達研究分野・助教)
「 ポリコーム群タンパク質による大脳皮質神経系前駆細胞の分化運命制御 」

講演要旨:
 神経系前駆細胞(神経幹細胞)は多分化能を有するが、その分化方向は発生過程の時期によって大きく変化する。大脳新皮質において神経幹細胞は、時間を追って順次各種のニューロン(6層→5層→4層→2/3層)を産生し、その後にアストロサイトなどのグリア細胞を産生する。この分化運命の変化のタイミングは、各種ニューロンやグリアの数の決定に重要である。神経幹細胞の運命変化の制御には、幹細胞の細胞自律的な要素、即ち神経幹細胞の分化ポテンシャルの制限、が貢献していることが示唆されているが、そのメカニズムについては多くが明らかになっていなかった。
 我々は最近polycombによるエピジェネティックな制御が神経幹細胞のニューロン分化期からグリア分化期、及び5層ニューロン産生期から4層ニューロン産生期への転換に必須の役割を果たしていることを見出した。Polycombの構成因子Ring1BあるいはEzh2を神経幹細胞特異的に大脳発生後期にノックアウトすると、ニューロン分化のマスター制御因子であるNgn1の発現がグリア分化期においても維持されていた。同時に、本来はニューロン分化期が終了してグリア分化が開始する周産期付近においてもニューロンの産生が続いていた。さらに、5、6層のニューロンが産生されている時期からRing1BあるいはEzh2を欠損させたところ、神経幹細胞は5層ニューロンを産生し続け、4層のニューロンの産生は遅れることを見いだした。従って、polycombは神経幹細胞の発生における運命転換のうち、少なくとも2つの転換点において必須であることが示唆された。これらの結果は、神経幹細胞から産生される細胞種のスイッチにPolycombによる神経幹細胞の分化ポテンシャルの制限が重要な役割を果たしている事を示唆している。

プレスリリース:
http://mainichi.jp/select/science/news/20090910dde041040009000c.html
http://www.47news.jp/CN/200909/CN2009091001000820.html

文献:
Hirabayashi, Y., Suzki, N., Tsuboi, M., Endo, T.A., Toyoda, T., Shinga, J., Koseki, H., Vidal, M. and Gotoh, Y.
Polycomb limits the neurogenic competence of neural precursor cells to promote astrogenic fate transition.
Neuron 63, 600-613. (2009)

Hirabayashi, Y., Itoh, Y., Tabata, H., Nakajima, K., Akiyama, T., Masuyama, N. and Gotoh, Y.
The Wnt-beta-catenin pathway directs neuronal differentiation of cortical neural precursor cells.
Development 131, 2791-2801. (2004)

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