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講義・セミナー名
東北大学脳科学GCOEセミナーのお知らせ
開催日時
2010-03-11 18:00
開催場所
星陵キャンパス・1号館2階 大会議室
概要

日時 2010年 3月11日(木)18:00-19:30

会場 星陵キャンパス・1号館2階 大会議室

演者 内村有邦 博士
    大阪大学大学院生命機能研究科 特任研究員

演題 マウスを利用した新しい哺乳類の実験進化モデル系の提案
    Evolution in Laboratory Mutator Mice

生物の進化は、集団中に新たに発生した突然変異が、自然選択や遺伝的浮動により、集団内で共有されていくことを繰り返すことで成し遂げられたと考えられている。また、生殖系列で発生する突然変異率は分子の進化速度と比例関係にあることが知られている。私たちは、突然変異率が上昇したマウス系統を用いることで、哺乳類の進化過程について直接的な解析を可能にする新たな実験モデル系の構築を試みた。
 生殖系列で生じる突然変異の多くはゲノム複製時のエラーに起因すると考えられているため、私たちは、主に複製に関わるDNAポリメラーゼδの改変によって突然変異率を上昇させたマウス系統を作製してきた。それらのマウス系統を兄妹交配の繰り返しにより継代していくことで、マウス個体の表現型が世代を追ってどのように変化していくのか解析を進めている。現在までに3年半にわたり最大で13世代の継代を進めてきた。それらの系統では世代を重ねるとともに、1回の出産あたりの産仔数の減少や水頭症の発生頻度の上昇などの変化が観察されている。驚くべきことに、それらの系統からは、毛色、手指、尾の異常など通常とは異なる表現型を示す個体が高頻度で誕生してきた。その中からは「ヒト可聴音域で小鳥のように鳴くマウス(シンギングマウス)」や「後足指数が減少したマウス」など、劣性形質で興味深い表現型を示す新規の表現型系統の樹立にも成功している。シンギングマウスは、性成熟期以降の雌雄で小鳥の鳴き声のような音声を発するマウスであり、多様な波形を持つ音素を発するマウスである。これらの結果は、本実験モデル系が、多因子変異や劣性変異による新規の表現型系統の作製方法として有効であることを示唆している。
 ヒト集団では世代あたりの突然変異率が通常の理論モデルの許容量の上限より高い値をもつことが知られているが、そのような高い突然変異率が集団にどのような影響を及ぼすのか、ほとんど分かっていない。ヒト以上に高い突然変異率をもつと考えられる本マウス実験モデル系を用いることにより、高い突然変異率が集団に及ぼす影響について解析することも可能になると考えられる。本セミナーでは、現在取り組んでいるこれらの進化実験モデル系を用いた解析について紹介する。

連絡先:形態形成解析分野・大隅典子 内線8203

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