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Tsukushiによる網膜幹細胞/前駆細胞の未分化性維持機構
開催日時
2008-01-21 16:30
開催場所
加齢研大会議室
概要

講 師 : 太田訓正 (Kunimasa Ohta)
所 属 : 熊本大学 医学薬学研究部 (Kumamot Univ. Graduate School of
Medicien.)
演 題 : Tsukushiによる網膜幹細胞/前駆細胞の未分化性維持機構
(Tsukushi is a Frizzled4 ligand that, in competition with Wnt2b, regulates
the proliferation of retinal stem/progenitor cells)
講演言語 : 日本語
担 当 : 仲村 春和(所属 分子神経研究分野・内線 8550)
Harukazu Nakamura (Molecular Neurobiology)
要 旨 :
眼はほとんどの動物が持つ重要な感覚器官であり、外界からの80%以上の情報は眼
を介して獲得される。神経網膜は、一度傷害を受けるとその機能を回復することはで
きないと考えられていたが、成体網膜での網膜幹細胞の発見により、細胞移植による
機能再生が現実味を帯びてきている。神経網膜において、幹細胞/前駆細胞として機
能しうる細胞は、毛様体、虹彩、網膜周辺部、網膜内で同定されており、その細胞増
殖や分化の分子メカニズムは明らかになりつつある。しかしながら、幹細胞/前駆細
胞が最終分裂を終えた後、これらの細胞がどのようにして未分化状態のままに維持さ
れているかという問いには明確な答えは示されていない。
私達は、ニワトリ初期胚における発現パターンが土筆に似ていることからTsukushiと
名付けた分泌型プロテオグリカンが、動物種をこえて眼の幹細胞/前駆細胞が局在す
る毛様体辺縁部に発現していることを見出した。ニワトリ胚を用いたin vitro & in
ovoの解析により、TsukushiはWnt2bによる幹細胞/前駆細胞の増殖を阻害することが
明らかになった。また、生化学的解析により、Tsukushiは細胞外領域においてWnt受
容体であるFrizzledに直接結合し、WntのFrizzledへの結合を阻害することが示され
た。さらに、Tsukushi KOマウスではコントロールのマウスと比べ て、毛様体領域が
拡張し、単離されたSphereの大きさやその数が増加していた。以上の結果は、
TsukushiがWnt シグナルを阻害することにより、網膜幹細胞/前駆細胞を未分化性に
維持するニッチ分子として機能することを示唆するものである。

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