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COE第3回
   国際シンポジウム


医学系研究科
21世紀COEプログラム



糖尿病の新規治療法の開発
医学系研究科内科病態学講座分子代謝病態学分野 教授 岡 芳知

 日本だけでなく世界中で糖尿病が増えている。飽食・運動不足のライフスタイルがよくないことは明らかだが、現在の糖尿病治療で何が欠けているのか。糖尿病の新規治療法の開発に向けて、我々は次のようなアプローチを行っている。


1)膵β細胞の維持・再生機構からの治療法ーウオルフラム症候群原因遺伝子WFS1を切り口にして

 ウオルフラム症候群は、若年発症糖尿病と視神経萎縮を主徴とする常染色体劣性遺伝疾患である。我々は、日本人3家系を主要な解析家系としたpositional cloningにより、この原因遺伝子を世界に先駆けて同定しWFS1と名付け(Nature Genetics 1998)、さらに、ERに局在する膜蛋白であることを明らかにした(Human Mol Genet 2001)。 患者では膵β細胞が選択的に減少していることから、WFS1はERストレスへの防御機能を果たしており、その機能欠如が徐々に膵β細胞死を招き、糖尿病発症に結びつくと考えている。WFS1ノックアウトマウスの作製にも世界に先駆けて成功しており、膵β細胞の進行性の減少と糖尿病発症が認められる(図1)。この分野が最近非常に注目されているのは、ヒト糖尿病の大部分を占める2型糖尿病で膵β細胞量が健常者の半分以下に減少しており、それがアポトーシスの増加によることが最近示されたからである。飽食・運動不足では多くのインスリン分泌を必要とするのだが、それが膵β細胞のERストレスを生じ、これに対し脆弱なヒトではアポトーシスによる膵β細胞の減少から糖尿病発症という図式が考えられる(図2)。すなわち、膵β細胞の維持・再生機構の障害である。WFS1、ERストレス、膵β細胞のアポトーシスと再生、をキーワードに、研究を進めている。


2)エネルギー消費増加による治療法

 現在の糖尿病治療では、経口血糖降下薬もインスリンも、血液中の過剰な糖を細胞内に送り込むことにより血糖値を下げる。では、これが続けばどうなるであろうか。肥満によるインスリン抵抗性により薬剤の増量が必要になり、高血圧、動脈硬化などをきたすのは自明である。過剰なエネルギー摂取をしないこと、すなわち、食事運動療法が糖尿病治療の根幹となる理由はここにある。しかし、この徹底は飽食の時代にきわめて困難である。そこで、我々は過剰なエネルギー摂取を消費することでエネルギーバランスをとる治療法を開発すべく、高脂肪食による肥満糖尿病モデル動物を用いて、肝、骨格筋、脂肪組織へいくつかの遺伝子の導入発現を行ったところ、肥満糖尿病が改善することを見出した。この改善機構の解明のなかから、創薬の新たなターゲットを探索している。


2)エネルギー消費増加による治療法

 現在の糖尿病治療では、経口血糖降下薬もインスリンも、血液中の過剰な糖を細胞内に送り込むことにより血糖値を下げる。では、これが続けばどうなるであろうか。肥満によるインスリン抵抗性により薬剤の増量が必要になり、高血圧、動脈硬化などをきたすのは自明である。過剰なエネルギー摂取をしないこと、すなわち、食事運動療法が糖尿病治療の根幹となる理由はここにある。しかし、この徹底は飽食の時代にきわめて困難である。そこで、我々は過剰なエネルギー摂取を消費することでエネルギーバランスをとる治療法を開発すべく、高脂肪食による肥満糖尿病モデル動物を用いて、肝、骨格筋、脂肪組織へいくつかの遺伝子の導入発現を行ったところ、肥満糖尿病が改善することを見出した。この改善機構の解明のなかから、創薬の新たなターゲットを探索している。

図1 図2