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COE第3回
   国際シンポジウム


医学系研究科
21世紀COEプログラム



重症複合免疫不全症の遺伝子治療ならびにウイルス感染症・悪性腫瘍の免疫療法の開発
加齢医学研究所発達病態 教授 土屋 滋

1.原発性重症複合免疫不全症に対する遺伝子治療法の確立:原発性重症複合免疫不全症とは生まれながらにして免疫系に異常があり、造血幹細胞移植を行わなければ乳児期に死亡する重篤な疾患である。HLA一致同胞が存在しない場合の予後は悪く、新しい治療法の開発が望まれる。我々はX連鎖重症複合免疫不全症の遺伝子治療臨床研究実施許可を既に厚生労働省から受けているが、外国で発生した副作用のため、現在臨床研究実施を一時保留としている。本症に対する安全性を高めた遺伝子治療法の開発のほか、原発性重症複合免疫不全症の原因遺伝子の同定、病態解析および遺伝子治療の基礎研究も行なう。

2.ウイルス感染症・悪性腫瘍の免疫療法の開発:小児期のEpstein-Barr virus (EBV)感染症は通常無症候性感染の形をとり、乳幼児の70-80%は、3才までにその感染を完了する。しかし、中にはEBVに対する感染防御機構が作動せず、EBV関連血球貪食症候群(EBV-VAHS)、慢性活動性EBV感染症(CAEBVI)、NK細胞白血病のような予後不良の腫瘍性疾患としての挙動を示し、臨床的に大きな問題となっている。また、骨髄移植後の患者に発症してくるlymphoproliferative disease (LPD)やBurkittリンパ腫の原因ともなっている。最近、骨髄移植後のLPDに対しドナーの末梢血リンパ球を投与し、EBV感染細胞に対する免疫反応を誘導する治療法が広く行われ、EBVに対する免疫療法の有用性が注目されるようになった。また、抗CD20抗体のような細胞表面蛋白質に対する抗体療法も今後広く応用されていくものと考えられる。そこで、EBVに対する特異的抗原を用いた細胞療法や、抗体療法の開発を目指し基礎研究を行う。

図1.CD34陽性骨髄細胞を用いた
X-SCIDに対する遺伝子治療。
図2.先天性免疫不全症患者に合併したホジキン病腫瘍細胞におけるEBウイルスの解析。患者腫瘍組織にホジキン細胞(図A;矢印)が認められ、EBウイルスLMP1の発現が検出された(図B;矢印)。患者組識より抽出されたEBウイルスLMPl遺伝子に30bpの欠失が検出され(図C)、LMP1分子のC末端10アミノ酸に相当する領域の欠失が予想された(図D)