障害科学専攻
肢体不自由学分野
汐川 菜々子
2022.05.30
大学院説明会
特設ウェブサイト
東北大学病院で看護師として臨床経験を積み、結婚・出産を経て、長女の小学校入学を機に仕事を一度辞めました。その後、3人の子どもたちの子育てに追われる日々でしたが、トライしては失敗し、でも日々成長していく子どもたちを見ているうちに、自分も新しいことにチャレンジしてみたいという意欲が湧いてきました。臨床経験の中で感じていた疑問や課題について学びを深めたいという思いから、修士課程を経て、博士課程に進学しました。
修士課程に入学時は一番下の子どもが2歳で、上の子どもたちも含め、いろいろ手がかかる時期でした。研究の世界は私にとっては未知であり、研究に必要な時間を十分に確保できるかという不安もありました。しかし、先輩方も同級生も仕事や育児をしながら研究活動を続けて頑張っておられたので、幅広い面でアドバイスを頂き、育児・家事をこなしながら自分の研究スタイルを構築できました。
興味のあるテーマは、ICUで看護師として働いていた時から、患者報告アウトカム、健康関連QOLです。医療の効果を評価する際、客観的に数値化できるデータは重要だと思います。しかし、患者さんの生活の視点を考えたときに、医療を受ける患者さんがその治療をどのように受け止め、その方々の生活がどう変わったのかという主観的な評価も医療の効果を評価する際には重要だと思っています。解析計画は立てていたものの、博士課程修了までにこのテーマについて、研究を通して深めていくことができませんでした。このテーマに関して臨床研究ができるようになりたいと思います。
私たちの研究室には、医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、そして私の職業である看護師などの医療専門職、さらには福祉や工学系出身者などさまざまなバックグランドを持つ学生が在籍していました。そのため、意見交換を通し、広い視野と新たな発見を得ることができました。私自身、研究を通し、障害者やその家族の役に立つ研究とはどのようなものかを考える能力を培うことができたと実感しています。
医療を取り巻く環境はより複雑化してきています。その問題や課題に必要な多角的視点を育むことができる場所だと思いました。指導教官の先生方の専門も多岐にわたり、学生の特性を理解し、それに応じた指導を受けることができました。私の所属した肢体不自由学分野の出江紳一教授、鈴鴨よしみ准教授からは、研究テーマの決定、データ収集、データ解析、論文化まで、科学的にどう進めていくかを丁寧にご指導いただきました。研究者としての姿勢を示してくださり、大変貴重な経験でした。
他分野との共同研究が盛んに行われており、さまざまな領域の専門家や研究者とも交流できる機会もあって、研究環境は整っていると思います。提供されるセミナーなども充実しており、自分のアンテナさえ立てておけば、研究に必要なスキルを身に付けるためのチャンスはたくさんあると思います。
博士課程修了後より、東北大学病院心臓血管外科で仕事をしています。心臓血管外科の先生方は、緊急手術は当たり前で毎日とても忙しい状況でも、臨床業務に加え、研究活動にも取り組んでおられます。私の役割としては、先生方が研究活動を円滑に進めていけるよう、サポートすることだと思います。修士・博士課程共に、指導してくださった鈴鴨よしみ先生からは統計解析について丁寧に指導していただきました。心臓血管外科での臨床研究の中でも、データの扱い方や解析結果に対して謙虚に向き合う姿勢など、大学院時代に学んだことを生かせればと思っております。
博士課程までにさまざまな職種の方々の視点や、先生方が展開している研究の視点を身に付けられました。今後は、それらをしっかり咀嚼(そしゃく)する力を付けられるようにしていきたいと思います。幸運にも研究活動を続けていける環境にいますので、もっと研究というものを理解していき、さらに興味のあるテーマを含めた臨床研究ができるようになりたいと思います。
星陵キャンパス、川内キャンパスからも近い広瀬川周辺の写真です。朝夕は川沿いの土手を散歩したり、ジョギングしたりしている方も多く、周辺住民の方々の憩いの場所でもあります。近くには宮城県美術館や国際センターがあり、季節によって、桜や紅葉など美しい景色を楽しめます。ただ歩いているだけでも癒やされます