活動内容

第1回脳科学GCOE脳カフェ「杜の都で脳を語る」(07.12.16)

一般の方へ脳科学を紹介する「第1回脳カフェ:杜の都で脳を語る」が2007年12月16日に、せんだいメディアテークにて開催されました。

会場の様子
NHKアナウンサー 熊倉悟氏

 
 講演は、作家であり東北大学機械系特任教授でもある瀬名秀明先生による「ミトコンドリアと脳のふしぎ」と、本GCOE拠点メンバーの東北大学大学院医学系研究科教授 森悦朗先生による「認知症と脳」の2題。
 ナビゲーターはサイエンスZEROでお馴染みのNHKアナウンサー熊倉悟さん(東北大学工学部出身)が務めてくださいました。講演途中の軽快な合いの手や質問により、専門用語等が分かり易い表現で言い換えられ、理解し易いかたちでお二人の話が来場者の方々へと届いたと思います。さらに各講演後には30分の質問時間が設けられて、その間途切れる事無く様々な質問が会場を飛交っていました。

瀬名秀明先生

 瀬名先生の講演は「クリスマスの奇跡と脳科学」とのメッセージのもと、坂口尚氏の『石の花』に書かれている“鍾乳洞にある巨大な石柱の壮大さを「石の花のようだ」とたとえ、石が花に見えるのには自己の「まなざし」のちからが必要なのだ。”という場面を引用されておりました。このようなモノの見方により奇跡が生まれるというのは、我々研究者が意識することで、日々の何気無いところからハッとする発見に繋がるのではないかと考えさせられたりもしました。


森悦朗先生

 また森先生の講演では、認知症が他人事ではなく自分自身あるいは家族に訪れるかも知れないため、来場者の関心は非常に高く、熱心にメモをとられている方が多く見受けられました。







社会脳科学グループのポスター展示

 学生やポスドク(博士研究員)からなる若手メンバーは、展示ブースを担当しました。GCOEは14名の拠点メンバーが3つのグループに分かれており、各グループの若手研究者(学生やポスドク)がそれぞれのグループの研究に因み、一般の方々が興味を抱くような脳科学研究の内容をブースに展示し、来場された方々に分かり易く説明を致しました。


子供達もたくさん来てくれました











 グループの1つであるゲノム脳機能科学グループは、「色々な動物の脳を見てみよう」と題し、さまざまな昆虫や甲殻類、哺乳類の脳神経標本をルーペで観察したり、顕微鏡でショウジョウバエの脳やラット脳切片の神経細胞の形態をみてもらう展示を行いました。 また身体性認知脳科学グループは、工学研究科の石黒章夫研究室によるロボット展示と、錯視や計数課題の体験ができる展示をしました。 もう1つのグループである社会脳科学グループは「こころの病気の研究」などのポスターを掲げ、ムービーによって、野生型マウスの記憶に関する物体認識実験や、マウス本来の行動であるグルーミングや探索行動、他者認識行動などを上映し、説明を加えました。
 そんな中、私は今現在、研究を生業としている一人として、忘れかけていた本当の気持ちを思い起こされたような、例えば“夢中で顕微鏡を喰い入るように眺めていた子供の頃……。時に芳しくない実験結果の続く日々のなかで、溜息混じりに接眼レンズに目を寄せている昨今の僕は、あの頃のボクに胸を張って会えるかな?”などと、時折物思いに耽りながらブースでの説明をしていました。
 開催された日はSENDAI光のページェントの期間中でもあり、数十分後には会場表の定禅寺通のケヤキ並木が無数のイルミネーションで彩られるという時間になると、点灯までの時間を過ごそうと、何気無くメディアテークに足を運ぶ、同じバッヂを胸につけたツアー客の方々も目立ってきました。彼らも始めは何をやっているのかと怪訝そうに会場を見ていたのですが、やがて珈琲片手に講演に耳を傾けたり、夢中になって神経標本をルーペや顕微鏡で覗いたり、錯視体験に驚いたりといつの間にか脳科学の世界に魅了されていました。
 脳という生命の中の謎多き宇宙を感じ会場を後にすると、並木道を彩る眩いばかりに輝く星空が眼前にひろがっていました。「脳カフェ」は多くの来場者にとって一足早いクリスマスプレゼントとなったのではないでしょうか。

工学研究科石黒研究室によるロボット展示
ゲノム脳機能科学グループの脳神経標本

 
 どのブースも常に大勢の方で賑わっており、若手らによる展示説明中、自ら説明に立つ拠点メンバーの先生もいらっしゃって、分かり易く伝える説明の仕方を若手の方に伝授している場面も見られました。このように来場者に説明している先生が、科学の面白さを一生懸命に伝えようとするひたむきな姿勢に心打たれ、また展示に見入っている方々の多さに脳科学へと寄せる関心の高さを再認識させられました。

文責:形態形成解析 篠原広志

 最後に、本GCOEの理念に謳われているような「先端脳神経科学の素養を社会に還流する人材の育成」と成り得るべく、来年以降の「脳カフェ」やその他のGCOEイベントの経験を将来に生かしていきたいと思います。


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