活動内容

第1回オプトジェネティクス講習会 (第4回オープンラボ)

 光感受性のイオンチャネルやポンプをニューロンに遺伝子導入し、光によってニューロンの活動をコントロールする技術はオプトジェネティクスと呼ばれ、神経科学の分野において近年非常に注目を集めている技術です。東北大学生命科学研究科脳機能解析分野ではオプトジェネティクスの研究を長年行ってきた実績があります。そこで、オプトジェネティクスの有用性をより認知してもらい、国内の研究者に有効に活用してもらうため、オプトジェネティクス講習会を初開催しました。

八尾寛教授による基礎講義の様子

 講習会は3日間の日程で、講義・講演および実際の光刺激実験を体験してもらう内容で行いました。講習会初日は、八尾寛先生(東北大学・生命科学研究科)にオプトジェネティクス基礎講義としてオプトジェネティクスの基礎知識、とりわけチャネルロドプシン(ChR)の構造と機能について詳細な解説をしていただきました。オプトジェネティクスを使おうという研究者でも、このようなイオンチャネルの基礎について聞く機会は少ないので、貴重な機会になったものと思います。


若手研究者による講演の様子

 続いてのオプトジェネティクスの研究事例紹介では、実際にChRを実験に用いている若手研究者5名による講演を行いました。生理学研究から病理研究、工学的な応用事例、そして光刺激電極の開発と、幅広い分野の研究について講演していただきました。受講者からは光刺激の方法についての質問がいくつも出され、光刺激を実際に行う上で工夫した点や苦労している点についても講演者に話していただきました。



 光刺激実験実技講習の方は、実験装置の都合上12名に限定していたにもかかわらず30名を超える応募があり、選考で選ばれた方々に参加していただきました。参加者の専門分野や実験手法は様々でしたが、共通していることはオプトジェネティクスで研究をより深化させたいということです。光刺激実験実技講習では、パッチクランプ法によるChR光電流の計測、ChR2トランスジェニックラットの海馬スライスでの光刺激と細胞外電位記録、そしてin vivoでの光刺激とマルチユニット記録の3つの実験をグループに分かれてローテーションして行ってもらいました。電気生理実験が初めての受講者も半数ほどおり、装置の使い方や記録した波形の意味などを解説しつつ、光刺激を体験してもらいました。光照射によって電流が流れる、あるいはニューロンが活動電位を発生させるのを目の当たりにし、驚きと感動を感じていただけたようです。また、ChRに関する質問、光刺激装置に関する質問、トランスジェニックラットに関する質問など多くの質問がなされ、参加者同士の議論も活発に行われました。実験や議論を通じて、オプトジェネティクスを研究に導入する具体的なイメージを持っていただけたと思います。


 本講習会を通じて、受講者の皆様にはオプトジェネティクスが意外と簡単にできる実験手法であると感じてもらえたものと思います。初めての講習会で運営が至らない点があったかとも思いますが、これからオプトジェネティクスを始めるのに役立つような講習会にできたのではないかと思います。


第1回オプトジェネティクス講習会 
若手研究者のためのオプトジェネティクス入門

■開催期間:平成23年9月23-25日
■開催場所:東北大学片平キャンパス 生命科学プロジェクト総合研究棟
■主催:東北大学生命科学研究科脳機能解析分野(代表:酒井 誠一郎)
■共催:東北大脳科学グローバルCOE
     東北大学脳科学センター
     特定領域研究「セルセンサーの分子連関とモーダルシフト」
     細胞感覚若手の会
     CREST「中枢神経系局所回路の状態遷移としての動的情報変換の解明」
     新学術領域研究「メゾスコピック神経回路から探る脳の情報処理基盤」
■後援:包括的脳科学研究推進支援ネットワーク
■講習会内容:
(1)講義・講演(9月23日)
  オプトジェネティクス基礎講義
  オプトジェネティクスを用いた研究事例紹介
(2)光刺激実験実技講習(9月24・25日)
  チャネルロドプシン光電流の計測
  海馬スライスでの光刺激と細胞外電位記録
  In vivo光刺激とマルチユニット記録
■参加人数:
(1)講義・講演:42名(講演者・スタッフ含む)
(2)光刺激実験実技講習:12名(受講者)

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