活動内容
第11回東北大学脳科学グローバルCOE若手フォーラム
12月19日(金)に、第11回東北大学脳科学グローバルCOE若手フォーラムが東北大学星陵キャンパス(医学部)にて開催されました。
今回の若手フォーラムでは、「相互理解、興味を広げる」をキーワードに、担当研究室内でまずお互いの研究室の研究内容を勉強してから、質問を募集し、その質問に沿って発表内容を組み立てるという試みを行いました。
石黒研究室からは「運動安定化と運動探索をシームレスに統合可能なマルチリズミックオシレータモデル」という題目で発表させていただきました。石黒研究室では「生命のように生き生きと振る舞うロボットをつくる」というモチベーションのもとに様々な研究が行われておりますが,今回は特に脳科学グローバルCOEと親和性が高いと思われる,生物のような適応的ロコモーション生成のための脳・神経モデルについての研究を紹介させていただきました。
生物のロコモーションはリズミックな運動パターンにより生成されており,そのようなリズム生成を担うものとして生物にはCPG(Central Pattern Generator)と呼ばれる多数の神経振動子(オシレータ)から構成される神経回路網が存在します。このCPGが持つ特性として,外乱を受けても安定して運動を継続する運動安定化と,未知の環境においても適切な運動パターンを探索する運動探索という二つが挙げられます。従来では主に,上記の二つは階層構造をとるなど分離して考えられてきましたが,今回提案したマルチリズミックオシレータモデルにより,運動安定化と運動探索の機能を一つのオシレータ内部に共存させることが可能となりました。これにより,未知の環境においても運動しながらその環境に適した新奇の運動パターンを探索し,獲得するオンライン学習の実現が期待されます。
本研究で提案したモデルは,粘菌の記憶メカニズムという生物学的知見を基にしたものであり,人間など高次の生物における脳・神経モデルとの関連性も期待されます。今回の発表では,それについて実際に生物の脳について研究されている方々からも生物のリズム生成について多くのコメントをいただくことができました。具体的には,人間のサーカディアンリズムの安定性や,コオロギなどの昆虫が十数種類のニューロンで活動している点など,こちらとしても興味深い内容であり,相互理解を深めるという意味でも大変有意義でした。
(石黒研M2坂井善行)
今回は形態形成解析分野の胎生期を主に扱うエンブリオチームを紹介する、というコンセプトで転写因子であるPax6という分子を軸に発表させて頂きました。Pax6は当研究室教授、大隅典子の言葉を借りるなら「指揮者のように下流の因子を様々にレギュレーションする」分子であり、現在までに当研究室を含め様々な研究がなされていますが、未だに謎の多い分子です。当研究室では発生期から、生後脳における神経新生、更に神経疾患との関連性など多角的にPax6を研究しています。
今回の発表において一番気を付けたのは、「いかに他分野の人に自分の分野を魅力的に紹介できるか?」ということです。このため、まずは丁寧にバックグラウンドから説明しなくてはいけないため、もう一度基礎の論文から読み直すという事を行いました。普段はおろそかにしがちな古い文献などにも目を通し、「多分今回一番勉強になったのは自分だな」と苦笑したのを覚えています。もう一つ意識したのは、適度なユーモアを発表に盛り込むと言うことです。とかく硬くなりがちなこういう会ですが、学生が主体になってやる会なのであればある程度のジョークくらいならばむしろ全体の雰囲気を良くするのではないかと思い、スライドに大隅教授のコラージュ写真などを用いました(結果はややウケ、と満足いくものではありませんでしたが・・・)。発表後、アンケートにより、他分野の方が自分の発表をどのように評価してくれたか分かるという企画も良かったと思います。今後もこのような企画が隔月くらいで行われると良いのではないかと思います。
(大隅研 D3恒川雄二)
セミナー終了後は忘年会が行われ、こちらも「相互理解、興味を広げる」をキーワードにゲーム等を交えた企画となりました。参加者はあらかじめランダムにグループ分けし、グループごとにクイズ得点を競いあうことで、今まで話す機会のなかった方とも知り合うことができ、とても盛り上がった忘年会となりました。