活動内容

第13回東北大脳科学グローバルCOE若手フォーラム

2月20日(金)に、第13回東北大学脳科学グローバルCOE若手フォーラムが東北大学星陵キャンパス(医学部)にて開催されました。

 竹内先生には「ミクログリアによる神経細胞傷害」と題して御講演いただきました。
中枢神経系にはニューロンの他に3種類のグリア細胞(アストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクログリア)が存在していますが、ミクログリアは他のグリア細胞と異なり、骨髄系の単球由来と考えられ、神経保護、老廃物や異物の貪食、抗原提示などを通じて中枢神経系の恒常性を維持する役割を担っていると考えられています。
本講演は、ミクログリア研究の歴史やその機能などの基礎的な話から、ミクログリアと神経細胞死についてその機序の解明と現在竹内先生が従事されている治療薬の開発まで非常に盛りだくさんな内容となりました。蛍光画像も多用され、特に活性化したミクログリアの形態変化や、ミクログリアが活性化したことによりニューロンが切断される様子が印象的でした。

竹内英之先生

 竹内先生は神経細胞のエネルギー不足が続くことで神経細胞が機能不全状態から細胞死の状態に移ることを発見され、また細胞死に導く原因として活性化したミクログリアから放出されるグルタミン酸があることを明らかにされました。さらにこのことから、グルタミナーゼを阻害して細胞内でグルタミン酸産生を抑制する、あるいはギャップジャンクションを阻害して細胞内からグルタミン酸の放出を抑制するという2つの経路で治療薬を開発されました。


 
 治療薬の開発に至るまでの研究過程が順序立てて話され、参考になりました。そしてこれらの治療薬は、まだ非公開ですが多発性硬化症、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症といった変性疾患で治療効果を得られているそうですので、近日発表されるのが楽しみです。

(文責 神経内科学分野 高野里菜)


 柴田先生には、「ヒト視覚システムにおける選択的注意と可塑性についての研究」と題して、講演を行っていただきました。

柴田和久先生

 前半は、Cerebral Cortexに発表された論文を中心とした内容でした。視覚情報内の特定の情報に選択的注意を向けることで、ヒトは目的の情報に素早くアクセスしています。この研究では、選択的注意と呼ばれるその機能が、脳でどのように実現されているかを調べました。空間解像度の高いfMRIと、時間解像度の高いMEGを組み合わせることにより、非常に細かい時間空間解像度のもとで脳活動を解析していることが、この研究の新規な点とのことです。この技術を用いて、ヒトが色や動きに選択的に注意を向けている間に、脳のどの部位が、どのようなタイミングで活動しているかについて、解説がありました。


 後半は、現在投稿中の論文を中心とした内容でした。被験者が視覚的な学習を行っている間に、成績評価を与える実験で、成績評価を様々に操作した場合の学習結果の変化について検討されていました。面白いことに、ある状況下では、偽者の成績評価が本物の成績評価よりもよい学習結果を導くことが示されました。この学習過程は、ベイズ推定を用いた計算モデルによってよく説明できるとのことです。これらの発見から、最後にヒトの学習を最適化するための訓練方法についての枠組みについて話されました。

(文責 五十嵐 康伸)


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