活動内容

日本学術会議シンポジウム「社会性の脳科学」(09.10.31)

10月31日(土)東京・お台場でサイエンスアゴラ2009の一環として、日本学術会議市民公開シンポジウム「社会性の脳科学」が、東北大学脳科学グローバルCOEの後援で開催されました。

講演1・藤井俊勝氏(東北大学・准教授)
講演2・村井俊哉氏(京都大学・教授)

 
 近年、脳研究は、言語や記憶といった個々の機能ではなく、さらに高次の、従来では心理学や哲学で扱われてきた領域である「社会性」といったものまでも、その対象とするようになってきました。藤井俊勝先生がご紹介になった「嘘とだましのメカニズム」や村井俊哉先生の「駆け引きする脳」というお話は、嘘をついたり何か決定したりという日常行為から「社会性」の神経基盤に迫った研究であり、面白く分かり易いご講演でした。

講演3・三村將氏(昭和大学・准教授)
講演4・山末英典氏(東京大学・准教授)

 
 今回のシンポジウムは、さらに踏み込み、「社会性」に著しい困難を呈す病気と脳に関するお話にもセッションが割かれました。三村将先生(「統合失調症の社会脳」)、山末英典先生(「自閉症スペクトラム障害と社会脳」)、貝淵弘三先生(「遺伝子から見た統合失調症」)からの御講演がそういったもの。統合失調症は人口の約1%で発病し、自閉症もさらに多くの方が苦しんでいらっしゃるような病気であるにも関わらず、未だその発症原因は不明であり、曖昧模糊とした「社会性」の障害で苦しんでいらっしゃる方は少なくありません。


講演5・貝淵弘三氏(名古屋大学・教授)

 そのような中、貝淵先生による統合失調症発症脆弱性遺伝子DISC1についての御講演は科学的に病気の本質に迫る研究の進展を示すもので、統合失調症にとどまらず、統合失調症様精神症状を呈する病気の解明にも繋がるのではないかとの期待を抱く内容でした。





講演6・和田圭司氏(国立精神・神経センター・部長)

 最後は、和田圭司先生による、マウスを用いた親の生活習慣などの環境因子と子の脳機能発達との関連性に関するご講演「物質的な母子間コミュニケーション」でした。発達研究の枠を越え、進化論的な面(とくにラマルキズムの観点)を示唆する研究であり、「子の次の世代は?」とフロアからの質問にもありましたが、現在進行中であるという次世代(孫世代)の結果が大変楽しみな内容のお話でした。


全体質疑応答

 シンポジウムの最後には、30分の質疑応答の時間が設けられましたが、終了後にも御質問をぶつけられる参加者の方々がいらっしゃるなど、充実感にあふれたものになりました。


(医学系研究科高次機能障害学:小川七世、医学系研究科行動医学:相澤恵美子の原稿をもとに構成)

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