活動内容

第21回東北大脳科学グローバルCOE若手フォーラム

2009年12月21日 (月) 東北大学星陵キャンパスにて、第21回東北大脳科学グローバルCOE若手フォーラムが開催されました。今回は、自然科学研究機構 生理学研究所 心理生理学研究部門から田邊宏樹先生に講師としていらしていただき、「脳機能局在研究から脳機能統合研究へ:ヒト脳機能イメージング研究の新たな流れ」というテーマで御講演いただきました。

ご講演中の田邊先生(その1)

 脳科学者をはじめとする研究者には、1つの専門性ではなく、複数の分野における知識や経験が求められるようになってきました。そのような中、田邊先生はmolecular scienceからimagingまで幅広いバックグラウンドをお持ちであるということで、講演テーマもさることながら、これからの研究者に求められているものを田邊先生から感じ取ろうといった意味でもとても注目度が高く、多くの方にご参加いただきました。


 これまでのヒト脳機能イメージング研究では、ある機能的に特化した脳部位(エリア)に主眼が置かれてきましたが、近年これらのエリアがどのように関連して働いているのか、という部分が注目されつつあります。つまり、システムとして脳をとらえようとする考え方であり、今回はこの領域間結合解析法の代表的な方法の1つであるDynamic Causal Model (DCM)についてお話しいただきました。近年、imaging領域では、従来の賦活部位の差分での報告では、ジャーナルにacceptされにくくなっており、DCMのような領域間結合による新しい視点での報告は、着目度が非常に高まっている解析方法です。さらにDCMは、imagingに限った解析法ではなく、遺伝子分野をはじめ各階層での研究に十分応用可能な解析方法であり、DCMの先駆者であるFristonらは、Imaging以外での応用を試みております。

ご講演中の田邊先生(その2)
ご講演中の田邊先生(その3)

 NeuroimaingにおけるDCMは、脳のある部位とある部位の神経活動の結合を検索するだけでなく、それらが、どのように影響しあっているか、またその結合が実験による変化(時間や認知)でどのように影響されるかを評価する手法です。
 脳内のある領域とある領域が機能的に結合していると仮定(model)すると、実験によりこの機能結合になんらかの変化がもたらされ(input)、その結果としてそれぞれの部位での反応(output: fMRIの場合hemodynamic convolution)が生じる。従来の、ある実験によりある部位での神経活動の変化が引き起こされたという考え方から、機能的な構造、あるいは機能的結合の状態が統合的に変化するという考え方に基づき、modelを検証していく解析する、といったDCMの概括をお話し下さいました。

後半はDCMを実際に用いた研究(ベンハムのコマを用いた主観的色知覚・失明者が触覚弁別課題を行っている際の視覚野への信号の入力経路) の紹介をしてくださいました。これまでのような特定の脳部位の活性を比較する方法では差がみられなかったものが、DCMを用いて個々の関連を解析すると、特定のコネクティビティの強さに差が見いだせたという実例はとても興味深く、これからの脳機能イメージング研究の新たな流れを知ることができ、参加者にとっていい刺激になったのではないかと思います。

忘年会の様子

 その後忘年会が60名以上の参加で開催されました。はじめに大隅先生より、今年の活動を締めくくるお話として6月に行われた東北大学脳科学GCOEのこの3年間の中間報告の結果、A評価をうけたことや、事業仕訳による今後の影響等について述べられた後ゲームやすっかりなじみになった他の研究室の仲間同士、大いに交流を楽しみました。




(文責: 相澤 恵美子, 鹿野 理子, 多那 千絵 社会脳科学グループ・福土研究室)

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