拠点メンバー
福土 審(心身医学)
1983年東北大学医学部医学科卒業、医学博士。1987年東北大学医学部附属病院心療内科助手、デュ-ク大学医学部研究員などを経て、1998年東北大学心療内科助教授、1999年より現職。専攻は心身医学・行動医学。機能性消化管障害国際ローマIII委員会委員。書籍に「Rome III: The Functional Gastrointestinal Disorders」(分担、Degnon Associates)、「心身症診断・治療ガイドライン2006」(共編著・分担、 協和企画)、「今日の治療指針2006」(分担、医学書院)、「過敏性腸症候群: 脳と腸の対話を求めて」(分担、中山書店)、「脳科学研究の現状と課題―脳とこころの病気の解明はここまで進んだ―」(分担、じほう)、「脳機能の解明―生命科学の主潮流―」(分担、ガイア出版会)、「内臓感覚──脳と腸の不思議な関係」(単著、NHKブックス)、など。日本心身医学会石川記念賞、アメリカ心身医学会Early Career Award、東北大学沢柳賞、文部科学大臣表彰科学技術賞研究部門などを受賞。
- 研究総括
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われわれのグループは、心身医学・行動医学のパラダイムを最大限に活かし、ストレス関連疾患の病態生理について国際的な評価を得てきた。特に、脳がどのように腸をはじめとする内臓機能を制御するのかという問題は、キャノンやパブロフ以来の科学的重要問題であるにも関わらず、研究者がきわめて少ない領域である。そこで、この問題に一早く取り組み、脳腸相関については、欧米の先端を走るグループと鎬を削って競争している。わが国から発する重要情報のほとんどを福土のグループが占める現状である。その過程において脳機能イメージング、脳腸ペプチド同定、遺伝子多型分析、新規心理療法、消化管機能測定、経頭蓋磁気刺激法などのあらゆる先端的手法を駆使している。
過敏性腸症候群(IBS)患者において、脳腸ペプチドcorticotropin-releasing hormone (CRH)拮抗薬投与による脳波周波数帯域の正常化を証明し、IBSモデル動物では大腸粘膜炎症による内臓知覚過敏の病態もCRH拮抗薬により改善させ得た。IBSをはじめとするストレス関連疾患のリスク性格である失感情症では内臓刺激に対する前帯状回、島、中脳の活性化が著しいことを見出し、行動選択上でもリスクの多い選択をするが、同時に内側前頭前野の活性化が生じにくいことを明らかにした。また、positron emission tomography (PET)を用いて、摂食障害における扁桃体でのヒスタミンH1受容体結合亢進を見いだした。ヒト大腸伸展刺激下のPETにより、前帯状回が活性化すること、ならびに、その程度がセロトニントランスポーター調節領域遺伝子s/s型でlアリル含有型よりも増強していることを見いだした。IBSでは、不安障害の一種パニック障害(代表的症状が頻脈)が高率に併存するが、ヒト大腸伸展刺激により心拍数が増加し、その反応は島の活性化程度と相関していた。更に、背外側前頭前野の経頭蓋磁気刺激によって内臓刺激由来の不安を抑制した。
成果はアメリカ消化器病学会のMasters Awardをはじめ、国内外の数々の賞、科学研究費基盤研究Aの獲得、国際Rome委員会常任委員就任などにより評価されている。
脳機能画像で得られた所見から、反復経頭蓋磁気刺激法により、右背外側前頭前野を刺激しました。すると、低周波数刺激では内臓刺激下の不安が抑制され、高周波数刺激では、内臓刺激後の大腸壁微細運動が惹起されることを明らかにしました。
- 代表的な論文
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- Fukudo S, Saito K, Sagami Y, Kanazawa M. (2006) Can modulating corticotropin-releasing hormone receptors alter visceral sensitivity ? Gut 55: 146-148.
- Chang L, Toner BB, Fukudo S, Guthrie E, Locke GR, Norton NJ, Sperber AD. (2006) Gender, age, society, culture, and the patient's perspective in the functional gastrointestinal disorders. Gastroenterology 130: 1435-1446.
- Saito K, Kasai T, Nagura Y, Ito H, Kanazawa M, Fukudo S. (2005) Corticotropin-releasing hormone receptor 1 antagonist blocks brain-gut activation induced by colonic distention in rats. Gastroenterology 129:1533-43.
- Kano M, Fukudo S, Gyoba J, Kamachi M, Tagawa M, Mochizuki H, Itoh M, Hongo M, Yanai K. (2003) Specific brain processing of emotion by facial expressions in alexithymia: a H215O-PET study. Brain 126: 1474-1484.
- Kanazawa M, Fukudo S, Nomura T, Hongo M. (2001) Electrophysiological correlates of personality influences in visceal perception. JAMA 286: 1974-1975.