活動内容

第1回脳神経科学サマーリトリート(松島)

 1枚のポスターの前で、国籍も所属先の国もばらばらの4人の大学院生が、英語で熱いディスカッションを行っている――、オーストラリアの大学に籍を置く日本人大学院生が流暢な英語で口頭発表し、日本の研究機関に所属する高名な研究者が質問に立つ――。こうした光景が頻繁に見られたのが、第1回脳神経科学サマーリトリートin松島理化学研究所脳科学総合研究センター(以下、理研BSIと略)の共催を得て、2008年8月20日―21日に、7カ国から50人の参加者を集めて、ホテル松島大観荘を会場に開かれました。共催者である理研BSIが毎年実施している、サマープログラムの最終日の翌日を開催日として設定し、同プログラムのために来日した海外の若手研究者から多くの参加を得ました。

 プログラムには、7件の講演、6件の若手口頭発表、21件のポスター発表が並びました。7件の講演のリストを、実施順(敬称略)に以下に示します。非常に豪華な顔ぶれ、と表現しても異論は上がらないでしょう。

・宮脇敦史 理研BSI 先端技術開発グループ・グループディレクター
New Fluorescent Probes and New Perspectives in Bioscience

・木村秀紀 理研BSI−トヨタ連携センター・センター長
Neural Control, Embodiment and Tacit Learning

・青木正志 東北大学大学院医学系研究科・准教授
Development of new therapy for amyotrophic lateral sclerosis using transgenic rodent models

・八尾寛 東北大学大学院生命科学研究科・教授
Shall we dance with Chlamydomonas?

・伊佐正 自然科学研究機構生理学研究所・教授
Strategy for functional compensation after spinal-cord injury

・吉川武男 理研BSI分子精神科学研究チーム・チームリーダー
Neurotransmission hypotheses of schizophrenia: from a genetic perspective

・大隅典子 東北大学大学院医学系研究科・教授
Pax 6: a multiple regulator for neurogenesis and gliogenesis


宮脇先生
木村先生

 
 分子1つを追う研究からロボット研究や、人間1人を治療しようとする研究に至るまで、脳神経科学が極めて幅広く、且つお互いが密接に結びついたものであることを如実に示すものになりました。ディスカッションも、生理学の研究者から臨床に近い研究に対する質問が出るなどといった、分野横断的なやり取りが多く見られました。

伊佐先生
吉川先生

 
 また、今回、初めての試みとして、若手の研究者が座長を務めるセッションを多く作りました。研究者としてキャリアを積んでいくにあたって、やがて必ず経験することを、比較的に小規模の親密な場で訓練できることは貴重だと考えて企画しました。事前に原稿を作ったり、質問がない場合に備えての準備もしながら、院生や博士研究員による座長も見事に行われました。

座長
座長











口頭発表
ポスター発表

 
 口頭発表は、若手研究者によるもの。理研サマープログラムに参加した国際的な面々から3件、東北大学から3件の合計6件でした。こちらも、6件とは言え、蛍光顕微鏡の方法に関する発表から疫学研究までにわたるもの。発表に対して、講演者陣から、積極的な質問・コメントが相次ぎ、緊張感溢れるセッションが展開されました。
 また、ポスターは、海外から3件、東北大から17件、その他1件の合計21件の発表。夜の研究交流会の後にスケジュールされリラックスした雰囲気の中、真摯な議論が展開されました。発表件数がそれほど多くなかったこともあり、講演者には全ポスターを1件1件熟読し、筆頭著者とのディスカッションを行って回る人もありました。また、ところどころで、ポスターの前で、胡坐をかいて座り込んでの議論も。白熱した議論は予定の時間を大きく回っても終わらず、運営側がポスターの片づけを促すのに苦労するような、極めて中身の濃いものになりました。

有銘 預世布
奥山澄人

 
 若手によるポスター発表と口頭発表に対しては、それぞれ全員による投票と、招待講演者による投票によって、得票上位者に表彰が行われました。表彰を受けたものを以下に記します。

■ポスター発表表彰者

・有銘預世布 東北大学大学院医学系研究科・博士課程
Prefrontal net blockade amlioretes prepulse inhibition defects in dopamine transporter knockout mice: Involvement of cortical-subcortical pathways

・奥山澄人 東北大学大学院医学系研究科・博士課程
Flexible behaviour in numerosity-based operation task by monkeys

・篠原広志 東北大学大学院医学系研究科・博士研究員
Downregulation of ninein, δ-catenin and FEZ1 at the apical side of neuroepithelial cells of the Pax6 mutant

■口頭発表表彰者

・五十嵐康伸 東北大学加齢医学研究所・特任助手
How to track a moving cell?

・Chun, Xu  Institute of Neuroscience, China・博士課程
GABAB Receptor Activation Mediates Frequency-Dependent Plasticity of Developing GABAergic Synapses


篠原広志
五十嵐 康伸

Chun, Xu





















会場の様子
最後に

 
 賞品などがあるわけではありませんが、多くの人たちが、吟味しながら投票を行った結果であり、若手研究者にとって、記念と、そして今後に向けての励みになるものになったと思います。オフィシャルなプログラム以外の時間も、交流会あり、初対面で同室となり話をした時間あり、松島を周遊した終了後のエクスカーションあり、盛り沢山で、実り多いリトリートになりました。

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