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児玉教授らが薬剤耐性HIV(後天性免疫不全ウイルス)を強力に抑制する新薬候補の機序を国際共同研究で解明

児玉栄一 教授(災害科学国際研究所災害感染症学分野)は、ミズーリ大学、熊本大学、ピッツバーグ大学などとのタンパク構造解析共同研究によって、新しい抗HIV薬候補(EFdA/MK-8591)が、薬剤耐性HIV(後天性免疫不全ウイルス)に対してなぜ強力な効果を維持できるのかを明らかにしました。

HIVは免疫に重要なTリンパ球に感染し破壊するため、本来なら自分の力で抑えることのできる感染症を抑えられなくなります。近年、複数の薬剤を併用することで、免疫力の回復やHIV感染者からの感染拡大も阻止できるようになりました。しかし、薬剤耐性HIVの出現や服薬しなければならない錠数の増加、服薬の継続が問題になっています。

逆転写酵素はHIVがゲノムとして用いるRNAをDNAに変換するときに用いられるウイルス由来の重要な酵素です。一般的にHIV感染症治療には3種類の薬剤を組み合わせますが、その中でも逆転写酵素阻害剤は欠かすことのできない中心的な薬剤です。

新しい抗HIV薬候補(EFdA/MK-8591)はこれまでの薬剤よりも、阻害標的である逆転写酵素に疎水性結合と水分子を介した親水性結合の2つによって強力に結合していることが構造学的に明らかとなり、逆転写酵素が一度EFdA/MK-8591を取り込むと、構造的なひずみを起し、それ以上のDNA合成を阻害します。

EFdA/MK-8591は、現在米国メルク社によって臨床開発されている薬剤(HIV逆転写酵素阻害剤)です。たった1錠の服用で1週間以上の効果が臨床試験で明らかになりました。さらに徐放効果を有する注射剤にすると、一度の注射で6か月以上効果が持続することも、サルとヒトで示されています。これまで毎日複数の薬剤を継続しなければならなかったHIV感染症の治療を、大きく変えることが期待されています。

本研究成果は米国アカデミー紀要(『Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)』)に8月16日掲載されました。

タイトル:Structural basis of HIV inhibition by translocation-defective RT inhibitor 4′-ethynyl-2-fluoro-2′-deoxyadenosine (EFdA). PNAS 113 (33):9274–9279, 2016 doi: 10.1073/pnas.1605223113

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