東日本大震災の記録

山本(前)医学系研究科長メッセージ

震災後1年を迎えるにあたって(平成24年3月8日)

昨年、3月11日に発生した東日本大震災におきまして、亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。また、1年を経てもなお、まだ不自由な生活を余儀なくされている方々、そのご家族の方々に心よりお見舞い申し上げます。

東北大学大学院医学系研究科も、始まって以来最大の危機的被害を受けました。我々の被災に対して、非常に多くの方々から、心温まる救援物資、人的な支援、情報・連絡の面での支援、輸送面への支援などをお寄せいただきました。心より御礼申し上げます。
また、国内外の多くの研究機関から、大学院生の実験場所の提供やサンプル退避の受入れのお申し出を頂きました。あわせて厚く感謝申し上げます。

皆さまから御支援を大きな励みに、本研究科の教職員と学生諸君は、一致団結してこの危機を乗り越えてきました。震災の直後から、本研究科の教職員は医学系研究科と大学病院の災害対策本部に結集し、被災した沿岸地域の医療支援や研究体制の復旧に大車輪で取り組んできました。
また、東北大学の「創造的復興」の方針に協力して、総合地域医療研修センターと地域保健支援センターを立ち上げ、さらに、東北メディカル・メガバンク機構を整備してきました。さらに、災害科学国際研究所の立ち上げにも積極的に参画しています。

本研究科は、今後も、震災からの復興の「核」になるような最先端研究拠点を形成するべく努めて行く所存です。

平成24年3月8日
東北大学大学院医学系研究科長・医学部長
山本 雅之

東日本大震災から1カ月以上が経過しました(平成23年4月14日)

大震災から1カ月以上が経過しました。時間が経つにつれて、沿岸部にもたらされた津波による被害がまことに甚大なことが明らかになりました。さまざまな支援活動の折に直接見聞しますが、本当に目を覆うばかりです。被災された方々に、改めて心からのお見舞いを申し上げます。幸いなことに、既に研究科の全教職員・医学部学生・大学院学生の無事を確認しています。

医学系研究科では、地震に伴う全面停電により、多くの教員が長年にわたって蓄積してきた貴重な研究試料を失いました。また、実験設備・装置などの面でも大きな被害を受けました。しかし、星陵キャンパスの主要な研究棟には次々とライフラインが復旧し始め、医学系研究科と医学部は着実に復旧のフェーズから、復興を考える時期に進んでいます。4月7日深夜の余震(マグニチュード7.1)は再び停電をもたらしましたが、私たちは歩みを止めることなく復旧を進めています。

東北大学医学系研究科・医学部は、東北地方の地域医療を支える人材育成の中核を担い、また、世界最高水準のライフサイエンス研究拠点を形成しています。私たちは、被災した東北地方全体の活性化ためにも、復興を急がなくてはなりません。多くの困難を乗り越え、震災前を上回るような最先端の研究・教育拠点の形成に邁進することこそが、私たち大学人に課されたミッションだと信じます。

例年より1か月遅れではありますが、4月25日には学部・研究科の授業を再開します。また、新入生へのオリエンテーションは5月6日から行う予定です。大学院生の新規募集も例年通り行いますので、それに向けて5月28日には大学院説明会を開催します。今回の震災を契機に、私たちにしかできないことはむしろ増えたと思います。多くの志の高い若者に、東北大学医学系研究科・医学部の歩みに参加して頂きたいと考えます。

この間に全国・全世界から、たいへん暖かいご支援を頂きました。皆様のご厚情に心より感謝いたします。私たちは、日本全体の新生につながるような復興を目指して、研究と教育、診療に取り組んでまいりますので、どうかより一層のご支援をお願い申し上げます。

平成23年4月14日
東北大学大学院医学系研究科長・医学部長
山本 雅之

東北大学大学院医学系研究科および医学部学位記授与式の式辞に代えて(平成23年3月25日)

本日、東北大学大学院医学系研究科および医学部を修了され、博士、修士、または学士の称号を得られた方々に、心からお慶びを申し上げます。
3月11日に起きた未曾有の大震災により、私たち医学系研究科と医学部は大きな被害を受けました。近隣の地域では、続いて起った大津波により多くの方々が家をなくされ、また、お亡くなりになられました。この場を借りて、改めて被災した方々にお見舞いを申し上げ、また、家族・友人を亡くされた方々に心からのお悔やみを申し上げます。このような事情ですので、伝統的な学位記授与式を行うことはあきらめざるを得ません。修了生の学業に対して、終始暖かいご指導を頂いた指導教員の方々、同僚や先輩・後輩の各位、さらに、学生生活を支えて頂いたご家族の皆様に列席して頂き、その前で感謝の気持ちを持って学位記を受け取って頂きたいという願いは、今回はかなえることはできませんでした。しかし、修了生諸君のたゆまぬ努力が結実して、本日を迎えることができましたことは、例年と変わらず、私の大きな慶びです。

昨今、我が国の学術研究の目指すべき方向として、「世界最高水準の研究の推進」「新しい学問の創造」「社会への貢献」の3本の柱があげられています。これらは、まさしく私たち研究科・医学部が取り組んできた目標そのものです。東北地方の多くの病院は、私たちの先輩が地域の人々の健康を守るために設立したものです。いま、未曾有の大震災に直面し、困難を極める被災地で、私たちの先輩や同僚たちが献身的な医療活動を行っています。このような社会に対する責任感に溢れた貢献は、世界最高水準の研究推進と合わせて、私の大きな誇りとするところです。

近年、科学技術振興や大学改革の大きな旗印の下で、医学・生命科学研究領域においても、ともすれば医療技術開発や臨床応用の側面が強調されてきたことは否めません。しかし、私たちが本研究科・医学部で取り組み、そして修了生諸君とともに学んできたのは、「科学に取り組む姿勢」であり、また、「科学の精神」なのです。諸君は、本研究科・医学部において、不正を許さない医学者としての姿勢を学ぶとともに、謎と神秘に満ちた自然の法則をいかにして解き明かすのか、また、いかに最短距離で雑多な現象の陰に隠れた基本原理の解明にアプローチするのかに日夜腐心してきました。さらに、実験室や病棟で不断に直面する教科書やマニュアルにない事象に対して、科学の目を持って、合理主義と実証主義で対応することを学びました。そして、批判精神を学び、既存の知識の壁を越えて、自由な発想能力を身につけることに邁進してきたのです。

本日、東北大学大学院医学系研究科・医学部から学位を得られる修了生諸君とともに研鑽を積んだこと、また、現在研究科・医学部に所属して、博士、修士、医師、看護師、検査技師、放射線技師などの称号を目指して日夜努力している学生諸君とともに学ぶことは、私たち東北大学大学院医学系研究科教員にとって誇りとするところです。本日学位を得て、研究科・医学部を旅立つ方々には、今後は東北大学の出身者として、研究あるいは臨床の場で、さらに修練を積み、才能を磨いて頂きたいと思います。その際には、いつも、本学を卒業するプライド、また、送り出した私たちの名誉を背負っていることを思い出して、困難な課題に直面しても、勇敢に立ち向かって欲しいと希望します。最後に、本日巣立っていく諸君の活躍と幸運をお祈りして、式辞にかわる言葉と致します。

平成23年3月25日
東北大学大学院医学系研究科長・医学部長
山本 雅之

東日本大震災被害からの復興に向けて(平成23年3月22日)

未曾有の大地震と津波から11日が過ぎました。徐々にではありますが、本研究科も復興に向かって歩みだしています。幸いなことに、震災から一週間後の3月18日には、医学部の学部学生全員の安全が確認され、同21日には教職員全員の無事が確認されました。通信事情の復旧が万全でないことから、一部の大学院生・研究生の安否確認はまだ終わっておりませんが、引き続き全力を挙げて確認してまいります。

日が経つにつれて、特に沿岸部を中心として、近隣地域での甚大な被害が明らかになってきました。お亡くなりになられた方々とご遺族に、謹んで哀悼の意を表します。多数にのぼる行方不明者の中から一人でも多くの生還者があることを祈ってやみません。東北大学病院は、地震発生直後から患者受け入れや医師派遣などを通して、被災された方々への医療支援を行ってきました。また、医学系研究科も、各自の専門性を活かして、直接的な医療面に留まらない多様なサポートを被災者の皆様にお届けしています。その様子の一部は、本研究科ホームページからご覧頂けます。

地震直後から、全国各地の大学・医療機関・企業・個人の皆様から、物心両面にわたる心温まるご支援を頂いています。皆様の暖かいご支援に、心より御礼申し上げます。頂いた物資は、被災地に向かう医師たちによって被災された方々に届けられています。また、本研究科の復興にも役たたせて頂きます。皆様のご厚情に応えるためにも、今回の悲惨な経験を乗り越えて、教育、研究、そして、それらを通じた社会への貢献に一層邁進してまいります。どうか今後とも、東北大学大学院医学系研究科への皆様のご支援を宜しくお願い申し上げます。

平成23年3月22日
東北大学大学院医学系研究科長・医学部長
山本 雅之

東日本大震災の被災について(平成23年3月15日)

3月11日に発生した巨大地震のために、本研究科も甚大な被害を受けました。多くの方々にご心配をいただきましたが、幸いなことに現時点で研究科内での職員・学生の人的な被害の報告はありません。しかし通信状態が良くないことから、全員の安否はまだ確認されていません。今後も全員の安否の確認に全力を挙げていきます。同時に被害を受けた研究科内の施設・設備の復旧にも職員一同力を合わせて取り組んでいきます。

大変残念なことに、今回の巨大地震では本研究科の位置する仙台市・宮城県および我々とも関係の深い近隣の地域で甚大な被害が生じております。お亡くなりになられた方々に謹んで哀悼の意を表します。大学病院はすでに患者の受け入れや医師の派遣などを通じて被災された方々への医療支援を行っております。今後は医療面だけではなく、我々の専門性を生かしたさまざまな面からのサポートを被災者の皆様にしていく所存です。

最後になりますが、我々はこれまでも多くの困難を克服してきました。東北大学大学院医学系研究科・医学部は、今回の未曾有の惨事にもひるむことなく研究・教育・診療の再建、さらには地域の再興に取り組んでまいります。このことが、我々に与えられた使命だと考えています。

平成23年3月15日
東北大学大学院医学系研究科長・医学部長
山本 雅之

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