東北大学大学院医学系研究科・医学部

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研究はあくまでも「手段」。
自身が達成したい「目的」を
この機会に考えて欲しい

インタビュー
障害科学専攻
運動学分野 講師
門間 陽樹
Haruki Monma
2020.06.04

門間 陽樹

実社会で「するのと、しないのどっちがいいの?」に答える学問

●研究の概要を教えてください

私が所属する運動学分野は、身体活動、運動、スポーツ、生活習慣をキーワードに、 細胞から人集団まで各研究テーマに応じた幅広い領域の知識や技術を駆使して、競技力も含めた身体能力の向上や健康に関わるさまざまな問題を研究の対象としています。そのなかで私は、人集団を研究対象とした疫学研究を実施しています。疫学研究とは、実験室環境下ではなく、人が生活している実社会において「〇〇するのと、しないのではどっちがいいの?」という疑問に答えていく学問です。そして、運動やスポーツに関する疫学研究では「体を動かすのと動かさないのでは、どっちがいいの?」が最も根本的な問いになります。私の場合、特に興味があるのは、高い体力を維持することの影響です。一般的に、体力レベルが高ければ生活習慣病などの疾病リスクは低いことが知られていますが、体力は年齢とともに自然と落ちてしまうものです。体力の落ち具合が大きいと疾病にかかりやすいことは想像に難くないと思いますが、意外とそれを証明した報告は限られているのが現状です。そこで、「生活習慣病の予防には、体力を高く維持することが必要なのか、それとも一時的に高ければ十分なのか?」という点に注目して研究を行っています。

よい意味での距離感が魅力

●研究室はどのような雰囲気ですか?

端的に言えば、「入り口が2つある牧場」です。そして、この牧場の経営方針は、基本、放牧です(笑)。運動学分野を束ねる永富良一教授は、医工学研究科健康維持増進医工学分野の教授でもあり(こちらが主たる所属)、運動学分野を兼務されています。そのため、研究室には医学系研究科から入るルートと医工学研究科から入るルートの2つがあります。しかし、研究室のなかでは所属による隔たりは全くありません。大学院生の出身学部も、医学部、工学部、教育学部、理学部、農学部、保健学部、文学部、教養学部、体育学部など多彩です。また、アジアやヨーロッパからの留学生も多く所属しています。本研究室では、分子生物学から疫学まで一人一人が自分のテーマを持ち、様々な研究方法を用いて自分の問題解決に挑戦しています。もちろん、チームを組んで協力して取り組むこともありますが、基本的に自分の研究は自分の手で進めなくてはなりません。そのため、お互いに干渉しすぎることはなく、いい意味で距離感がある研究室だと思います。自分の時間をうまく管理することが求められますが、自分のペースで研究が進められる、そして、そのことが研究室として受け入れられている環境もこの研究室の魅力だと思います。

まずは自ら動くこと

●学生にどのようなことを期待しているかなども含め、進学希望者へのメッセージをお願いします

私は、学生時代を含め、かれこれ10年以上もこの研究室に在籍しています。先にも話しましたが、本研究室では一人一人が自分のテーマを持っています。しかし、この研究テーマが向こうから勝手にやってきてくることはまずありません。さらに、やりたいテーマを見つけても、そのおもしろさについて指導教員を納得させなければなりません。この研究室では、基本、自分でエサを見つけ、自分で食べる術を身につけていかなければ生きていけないのです。それが“放牧”と表現した所以です。ただし、相談にはいつでも(本当に)親身に応じてくれる環境があります。そのため、テーマを見つけるにしても、研究を進めるにしても、そして、相談するにしても、まずは自ら動くことが最も求められることだと思います。本研究室に進学を希望している方々には「暗い暗いと不平を言うよりも、すすんで明かりをつけましょう」というマザーテレサの言葉を送りたいと思います。そして、「望まないと何も起こらない、望めば何だってできる。ただし、望んだ以上のことが起こることは稀である」という門間陽樹(=私)の言葉も添えておきたいと思います。

●修了後はどのような進路がありますか?また、修了生はどのように活躍していますか?

修士課程を卒業した先輩方の多くは一般企業へ就職しています。教員や研究室からの紹介はなく、すべて自分自身で勝ち取っています。その他、自治体への就職や博士後期課程への進学した学生ももちろんいます。博士課程を卒業した先輩方は、海外への留学、大学等の研究教育機関や国に研究機関への就職など、アカデミアの分野で活躍されている方々が数多くいらっしゃいます。また、一般企業の研究開発部門への就職や、博士後期課程のなかで関わりをもった企業へ就職した先輩もいます。

●病院や企業に勤務しながらの修学は可能でしょうか?

本研究室には、病院や企業で働いている方、大学や高校で教員をされている方が数多く所属しています。社会人で入学される方々は、取り組みたい(解決したい)課題が明確であるものの、あまり時間が取れないという場合も多いようです。先にも記載しましたが、本研究室は自分のペースで進められることが魅力の1つですので、その点をうまく利用してもらえればと思います。勤務先と調整して週の決まった時間だけ研究室に来たり、オンラインで連絡を取り合ったりと方法は数多くあると思います。同じような境遇の先輩が多くいると思いますので、相談に乗ってもらうのがよいと思います。

論文をはじめ、研究・教育に関する情報が迅速かつ充実

●東北大学の良いところは?

何といっても研究を行う環境面が抜群にいいことです。私が他大学の修士課程に所属していたときは、論文を読むたびにコピーを取らざるを得なく、がんばればがんばるだけ貧乏になる…という悲しい思いをしていました。その後、東北大学に入学して、論文が無料で読めることを知ったときの衝撃(うれしさ)は、いまも鮮明に覚えています。また、研究や教育に関する情報が早くて充実していることです。例えば、国の倫理指針が「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に変遷した際は、他の大学よりも手元に来る情報が早く充実していると他大学の先生方と話して感じました。このように、倫理指針に限らず、基本的かつ最重要事項の情報が充実しているという環境は研究を進める上で欠かせません。他の良いところとしては、大学の中に超一流の研究者がいるということです。自分の研究室だけで解決できないようなことでも、他の研究室に協力を仰ぎながら研究を進められる環境はやはり魅力的です。私が博士後期課程に入学した際のガイダンスで、当時の研究科長であった先生が「東北大学で研究して成功しないわけがない。それぐらいの環境です。」というような内容のお話をされていました。とても印象的で、まさにその通りだと思います。

●関連リンク

研究室ホームページ

医工学研究科ニュースレター

東北大学大学院医学系研究科ANNUAL REVIEW 2017-2018

P27. 継続は“健康”なり-全身持久力の基準を継続的に達成すると2型糖尿病の発症リスクは低い

東北大学大学院医学系研究科ANNUAL REVIEW 2018-2019

P23. 筋肉の幹細胞を正常に保つ仕組みを解明 – 筋肉の再生医療への応用に期待 –

糖尿病ネットワーク

糖尿病リスクを減らすためには「運動を継続」することが必要
https://dm-net.co.jp/calendar/2017/027616.php
https://dm-net.co.jp/calendar/2018/028376.php

一般社団法人日本生活習慣病予防協会

全身持久力を向上させ高血圧を予防 「身体活動基準2013」で検討

academist Journal

簡便な体力テストで2型糖尿病のなりやすさがわかる? – 握力とバランス能力が鍵

Post

全身持久力を継続的に高く保つと2型糖尿病の発症リスクが低下する|東北大

column

私は入学した大学院生に決まって「何のために大学院に入学したの?」と質問をします。(嫌な教員ですね。)そうすると、多くの学生は「研究の方法を学ぶため」と答えます。たしかにそうなのかもしれませんが、その先を考えてほしいので「本当に?」とさらに質問します。(間違いなく嫌な教員ですね。)研究の方法について具体的に考えてみると、実験や調査のやり方、解析、倫理的事項を含む研究の手続き、学会や執筆等のプレゼンテーション、他者とのコミュニケーションなどが含まれると思います。学ぶ方法は、講義を受けたり、教員から指導を受けたり、セミナー・学会に参加したり、本を読んだり、とこちらも様々な方法があります。そう考えると、「研究の方法を学ぶ」という目的は、研究の方法×学ぶ方法の組み合わせで達成できてしまうことになります。けっこう簡単に達成できてしまうと思いませんか?しかし、これが達成できたからといってみなさんは満足するのでしょうか?私が大学院生のみなさんに考えてほしいことは、研究はあくまでも“手段”であるということです。研究という“手段”を通してどのような“目的”を達成したいのか、それをこの機会に考えてみて欲しいと思っています。

PROFILE
障害科学専攻
運動学分野 講師
門間 陽樹
Haruki Monma

2008年4月、東北大学大学院医学系研究科障害科学専攻博士後期課程に入学。東日本大震災が発生した2011年3月に修了。2011年4月から東北大学大学院医工学研究科で教育研究支援者、2012年4月から助教、その後、工学研究科、医工学研究科と所属が変わり、2018年4月より現職。専門分野は「運動とスポーツの疫学」。特に体力と生活習慣病に関する研究に従事。批判的思考やプレゼンテーションに関する直感的かつ理論的な教育を好む。モットーは「常に遊び心をもつ」。

●MAIL

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