医学科教育理念と目標
教育の理念
・教員と学生相互の協調により強固な教育基盤を構築し,
・医学・生命科学の根元を解明する研究および教育を実践し,
・豊かな人間性と旺盛な探求心を育み,
・人類の健康と福祉に貢献する指導的高度専門職業人を育成する。
教育の達成目標
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1
生体の構造と生命現象の理解
- 人体各器官の構造,機能,生理を理解する
- 生命の維持に関わる分子生物学,生化学,細胞生物学を理解する
- 生命の発生から成長,発達,加齢,老化に到る人の生涯過程を理解する
- 人間の心理と行動について理解する
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2
病因,病態,診断,治療,予防の理解
- 様々な要因(遺伝,発生,代謝,微生物,自己免疫,腫瘍,変性,外傷,病原体・有害物質,心理,社会,地域,経済,文化など)を理解する
- 疾患・障害による人体器官の構造・機能の変化(病理,病態生理)を理解する
- 様々な疾患・障害の診断方法を理解する
- 薬理学,治療学と治療法選択の根拠を理解する
- 疾患・障害の予防と健康の維持・増進について理解する
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3
コミュニケーション能力
- 言語表現,非言語表現,文書表現を用いて自分の考えを人に伝える技術,分かりやすく説明する技術,相手の話を傾聴する技術,を身に付ける
- 医療の様々な場面において,患者と家族,医療従事者,同僚に対し,誠実で相手の立場に配慮した双方向的コミュニケーションを行う技術を身に付ける
- 効果的で分かり易いプレゼンテーションを行う技術を身に付ける
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4
基本となる臨床技能
- 患者と家族に対し人間的で思いやりある態度を持って接する能力を身に付ける
- 患者と家族のプライバシーと尊厳の重要性を理解し,遵守する態度を身に付ける
- 病歴と関連情報を正確に聴取する技能を身に付ける
- 患者の全身所見を正確に診察する基本技能を身に付ける
- 病歴・所見を正確に記載する技能を身に付ける
- 病歴,診察,検査の情報を総合的に解釈し推論,判断を行う能力を身に付ける
- 基本となる検査・治療の手技を身に付ける
- 医療安全と危機管理の基本を理解し,身に付ける
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5
生命倫理,医の倫理,医療関連法規の理解
- 患者中心の医療を推進する
- 生命倫理,とりわけ生と死に関わる倫理の理論と規範について理解する
- 医学研究に関わる倫理規定を理解する
- 医療関連法規について理解する
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6
情報を管理・処理し活用する能力
- 医療に係わる個人情報保護規定を理解し遵守する
- 必要な情報を得る能力,情報の信頼性,妥当性を吟味する能力を身に付ける
- 研究,診療に関する情報を処理する技術,管理する技術および活用する技術を身に付ける
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7
問題発見・解決の能力
- 研究,診療に関わる未解決の問題を発見し,仮説を立て,検証・解決する態度と能力を身に付ける
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8
科学的方法論の理解と基礎・臨床研究へ応用する能力
- 医学研究における科学的理論と方法論を理解し,研究に応用する能力を身に付ける
- 常に新たな発見と創造を指向する態度と能力を身に付ける
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9
チームを率いる能力(リーダーシップ),教育する能力
- チームの一員として同僚に敬意を持ち,信頼・協調して研究,診療に従事する態度を身に付ける
- 医療チームや同僚から常に学び,また,教える態度と能力を身に付ける
- 患者と家族に対して,治療および健康の維持・増進に必要な事項を説明する能力を身に付ける
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10
地域,社会と医療制度の理解
- 医療法制度,社会保障制度,社会福祉制度を理解する
- 医療経済を理解する
- 地域,社会,国および全世界規模の環境・人口動態等と疾病の動向を理解する
- 疾病の予防と健康の維持・増進に貢献する責務と役割を理解する
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11
内省と自己啓発の態度,生涯学習の態度
- 自己の強み(strength)と弱み(weakness)を自覚し,常に改善する態度を身に付ける
- 他者からの意見を傾聴し,適切に対応する能力を身に付ける
- 時間と活動について効率よく自己管理する能力を身に付ける
- 専門領域において常に最先端の知識・技能を保つため,生涯学習を続ける態度を身に付ける
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12
国際人としての能力
- 地球規模の研究,診療に従事するため,国際的視野を身に付ける
- 国際人としてのコミュニケーション能力を身に付ける
アドミッション・ポリシー
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一般選抜
医学部では医学,人類を中心とした生命科学に関する教育により,真理を探究する姿勢を育成します。高い倫理観と使命感を持って,科学的根拠に基づく臨床医学・医療技術を実践できる医療人及び新しい医学のフロンティアを開拓し問題を解決できる医学研究者を養成することを目的としています。
科学の分野に対する優れた理解力・学習能力とともに,生命現象や医療の問題への関心・探究心を持ち,医学や医療を通じて人類の福祉に貢献したいという目的意識があり,病める人の立場になって問題解決のできる人間性を備え,国際的視野で行動できる人を求めています。 -
AO 入試Ⅱ期
人を対象とする生命科学や医学・医療に関わる学問に強い関心を持ち,旺盛な探究心と創造的な思考力と高い倫理観を有する人を求めています。東北大学で学部・大学院教育を受けることを希望し,大学や研究所で研究医として世界的な活躍をめざす情熱と積極性を有する人を歓迎します。筆記試験,書類審査,面接試験によって,医学・医療に関わる学問への関心,探究心,思考力,倫理観などを評価します。
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AO 入試Ⅲ期
将来,医学・医療の指導者として世界で活躍をめざす人を求めています。東北大学で医学教育を受けることを熱望し,対話による相互理解力と医学への強い学習意欲と探究心を持ち,リーダーシップを発揮できる人を歓迎します。大学入学共通テストの成績に加え,筆記試験,書類審査,面接試験によって,医学・医療に関わる学問への関心,探究心,思考力,倫理観などを評価します。
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国際バカロレア入試
国際バカロレアのディプロマ・プログラムにおいて優秀な成績を修めた者で,医療の諸問題やヒトを対象とした生命現象の解明に対して高いレベルの探究心と向上心を持ち,倫理性・自主性・協調性に優れ,国際的に活躍するリーダーになれる人を求めています。筆記試験,書類審査,面接試験によって,医学・医療に関わる学問への関心,探究心,思考力,倫理観などを評価します。
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帰国生徒入試
海外の教育機関で十分な基礎学力を修得し,その課程を優秀な成績で終了した者で,医療の諸問題やヒトを対象とした生命現象の解明に対して高いレベルの探究心と向上心を持ち,倫理性・自主性・協調性に優れ,国際的に活躍するリーダーになれる人を求めています。筆記試験,書類審査,面接試験によって,医学・医療に関わる学問への関心,探究心,思考力,倫理観などを評価します。
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地域枠入試
地域医療に強い関心を持ち,将来は地域医療で中心的な役割を担う人を求めています。東北大学で医学教育を受けることを熱望し,地域医療に従事する中で新たな医学や医療の発展を自らの力で生み出したいという強い情熱と,対話による相互理解力・旺盛な探究心・医学への強い学習意欲・創造的な思考力・高い倫理観を有し,信義を重んじる人を歓迎します。大学入学共通テストの成績に加え,筆記試験,書類審査,面接試験によって,地域医療や新しい医学への関心,探究心,思考力,社会性・倫理観などを評価します。
ディプロマ・ポリシー
医学部医学科では、次に掲げる目標を達成した学生に学士の学位を授与する。
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1
生命現象、人体構造並びに様々な疾患について、分子レベルから細胞・組織・器官・個体レベル、さらに地域・社会・国際レベルに及ぶ国際標準の知識を有している。未解明の事象に挑み創造的研究を行って先端領域を切り開き、成果を世界に発信する能力を有している。
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2
優れた倫理観と暖かい人間性を備え、科学的根拠に基づく医療を実践する基本的能力を習得している。地域に密着して医療を実践するとともに、国際社会に医療貢献する能力を有している。
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3
医療の実践と医学の研究を通して、我が国の医学研究、教育、医療を支えると伴に、ワールドクラスの研究の推進、新しい学問の創造、人類への貢献を担う能力を有している。多職種間の連携・協調、学際的研究交流等を円滑に行うコミュニケーション能力とチームを率いるリーダーシップの素養を有している。
カリキュラム・ポリシー
医学部医学科では、ディプロマ・ポリシーで示した目標を学生が達成できるよう、以下の方針に基づき教育課程を編成・実施する。
- 1、2年次は全学教育科目として幅広い一般教養科目と専門教育に活用可能な科目を提供する。1年次より専門教育科目を開始し、医療人、医学研究者として必要な基本的知識・技能・態度を6年間で段階的に修得させる。
- 研究第一の理念に則り、長期に亘り研究に従事し成果を発表する期間を設ける。医学研究PBL、基礎医学修練、高次臨床修練によって、医療リーダーや医学研究者として必要な能動学習・自己研鑽の技能と態度の涵養をはかる。
- 学習成果の適正な評価と個別フィードバックを行い、学習者の内省・自己啓発と能力開発を促進する。
以下のとおりカリキュラムを編成し、実施します。
全学教育科目では、幅広い教養を身につけるとともに、専門教育の基礎となる科目も履修します。特に「生命科学」の講義では、必修科目として医師として必要な人体の生物学を学びます。
専門教育科目では、「医学・医療入門/行動科学」「基礎医学/社会医学」「臨床医学」「臨床実習」を順番にすべて履修することが卒業の要件です。
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1. 医学・医療入門/行動科学
1年次の専門教育科目として「医学・医療入門/行動科学」があります。これは複数のテーマからなるグループ学習・実習・講義で、1年間続きます。少人数ワークショップ、早期医療体験実習、医療コミュニケーション実習、地域医療を担っている医師の講演など、様々な内容を学びます。
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2. 基礎医学/社会医学
1年次後半から3年次前半までの2年間学びます。ここでは、人体の正常な構造と機能を学ぶ科目(解剖学・生理学序説、肉眼解剖学、脳解剖学、組織学、生理学、医化学)と、病気の発症・進展のメカニズムおよび治療の基本原理を学ぶ科目(微生物学、免疫学、遺伝学、病理学、放射線基礎医学、薬理学)を開講します。さらに、集団、環境、制度、予防の観点から健康や病気を学ぶ(衛生学、公衆衛生学、法医学、医の倫理学・社会学)科目と、医学を学ぶ基礎となる科目(医学専門英語)も開講します。
また、3年次に20週間行う「基礎医学修練」では、研究室で実際の研究の方法や考え方を学び、基礎医学研究者や研究医となるための素養を磨く機会を提供します。
さらに、3年次終了後あるいは4年次終了後からは、将来の基礎医学研究者や研究医を目指す学生のために「MD-MC-PhDコース」「MD-PhDコース」も用意しています。 -
3. 臨床医学
3年次後半から4年次後半までの1年間学びます。ここでは、様々な疾病を多面的に把握しつつ、患者さんをひとりの人間として理解し、診察や検査、診断、治療の基本を学びながら、内科学、外科学、専門医学などの臨床医学の基本を学ぶカリキュラムを編成し、実施します。
4年次後半に、それまでに学んだ知識や技能を評価する全国共通の共用試験を実施します。「臨床実習」に進むには、これに合格しなければなりません。 -
4. 臨床実習
2年間以上の長期間にわたり、臨床実習および関連する学習や試験等を実施します。
4年次後半から5年次後半までは、全ての診療科を少人数グループで回り、臨床の現場で医療スタッフとともに診療の一部に参加しながら、実際の診療の基礎を学ぶ実習(臨床修練)です。診療科によっては、地域の病院への派遣も行われます。
続く5年次後半からの6ヶ月間は、各学生が興味や進路志望をもとに選択した診療科や分野で4週間ずつ学ぶ実習(高次臨床修練)です。この期間等を利用して海外で実習する機会も用意しています。
6年次後半に卒前最終講義を開講し、基礎系・社会医学系・臨床系分野の教授から、それぞれ専門領域の学問の理念・将来の展望について聴きます。6年次の2月には医師国家試験があります。
学修成果の評価について、定期試験、レポート、授業中の小テストや発表などの平常点で評価します。各科目の評価方法については、授業内容とともにシラバスに明示されています。
また、4年次後半には、それまでに身に付けた知識と技能を医療系大学間共用試験(CBT、OSCE)において検証します。6年次後半には、卒業までの6年間で身に付けた知識と技能を卒業試験(筆記、OSCE)において検証します。