医学科教育理念と目標
教育の理念
・教員と学生相互の協調により強固な教育基盤を構築し,
・医学・生命科学の根元を解明する研究および教育を実践し,
・豊かな人間性と旺盛な探求心を育み,
・人類の健康と福祉に貢献する指導的高度専門職業人を育成する。
教育の達成目標
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1
プロフェッショナリズム
- 患者中心の医療を理解し,診療に参加できる
- 社会のルールと良識に則って行動できる
- 倫理的事項を理解し,それに従い行動できる
- 活動,時間配分,健康について自己管理できる
- 自分のキャリアをデザインし,そのための学修を継続できる
- 様々な分野を横断する視点を持つことができる
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2
医学知識
- 人体の構造・機能・生理・生涯過程の知識を統合し,応用することができる
- 疾患・障害の原因と病態を理解し,応用することができる
- 疾患・障害の診断方法と治療方法を説明することができる
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3
コミュニケーション
- 自分の考えを相手にわかりやすく伝えることができる
- 他者の意見を受け入れ,他者から学ぶことができる
- チームのメンバーと協調して研究,診療に従事できる
- 科学的知見を論理的,効果的にプレゼンテーションできる
- 人の行動の背景にある心理や諸因子を考慮し,対応することができる
- 英語で医学・医療に関するコミュニケーションができる
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4
診療技能
- 病歴聴取と身体診察を行い,情報を整理し,診療録を作成できる
- 診療の基本となる手技・検査ができる
- 病歴,診察,検査結果から,病態を理解・推論し,鑑別診断と根拠を説明できる
- 科学的根拠に基づく治療計画を立案できる
- 患者および医療従事者に必要な安全の基本を実践できる
- 患者の状態に応じた適切な配慮と対応ができる
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5
科学的探究
- 研究に関する倫理的事項・法的事項を遵守できる
- 科学的理論と方法を理解し,医学研究を実践できる
- 研究・診療における未解決の問題を見出し,解決にむけて取り組むことができる
- 情報の信頼性と妥当性を評価できる
- 研究・診療で扱うデータを適切に管理し,解析できる
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6
地域と世界における医療
- 医療関連法規,社会保障制度,社会福祉制度を説明できる
- 医療経済と持続可能な医療を説明できる
- 災害時の医療の役割を理解し,基本を実践できる
- 地域医療の特性を理解し,診療に参加できる
- 地域から世界規模までの疾病の動向を説明できる
- 疾患・障害の予防と健康の維持・増進について説明できる
アドミッション・ポリシー
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一般選抜
医学部では医学,人類を中心とした生命科学に関する教育により,真理を探究する姿勢を育成します。高い倫理観と使命感を持って,科学的根拠に基づく臨床医学・医療技術を実践できる医療人及び新しい医学のフロンティアを開拓し問題を解決できる医学研究者を養成することを目的としています。
科学の分野に対する優れた理解力・学習能力とともに,生命現象や医療の問題への関心・探究心を持ち,医学や医療を通じて人類の福祉に貢献したいという目的意識があり,病める人の立場になって問題解決のできる人間性を備え,国際的視野で行動できる人を求めています。 -
AO 入試Ⅱ期
人を対象とする生命科学や医学・医療に関わる学問に強い関心を持ち,旺盛な探究心と創造的な思考力と高い倫理観を有する人を求めています。東北大学で学部・大学院教育を受けることを希望し,大学や研究所で研究医として世界的な活躍をめざす情熱と積極性を有する人を歓迎します。筆記試験,書類審査,面接試験によって,医学・医療に関わる学問への関心,探究心,思考力,倫理観などを評価します。
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AO 入試Ⅲ期
将来,医学・医療の指導者として世界で活躍をめざす人を求めています。東北大学で医学教育を受けることを熱望し,対話による相互理解力と医学への強い学習意欲と探究心を持ち,リーダーシップを発揮できる人を歓迎します。大学入学共通テストの成績に加え,筆記試験,書類審査,面接試験によって,医学・医療に関わる学問への関心,探究心,思考力,倫理観などを評価します。
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国際バカロレア入試
国際バカロレアのディプロマ・プログラムにおいて優秀な成績を修めた者で,医療の諸問題やヒトを対象とした生命現象の解明に対して高いレベルの探究心と向上心を持ち,倫理性・自主性・協調性に優れ,国際的に活躍するリーダーになれる人を求めています。筆記試験,書類審査,面接試験によって,医学・医療に関わる学問への関心,探究心,思考力,倫理観などを評価します。
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帰国生徒入試
海外の教育機関で十分な基礎学力を修得し,その課程を優秀な成績で終了した者で,医療の諸問題やヒトを対象とした生命現象の解明に対して高いレベルの探究心と向上心を持ち,倫理性・自主性・協調性に優れ,国際的に活躍するリーダーになれる人を求めています。筆記試験,書類審査,面接試験によって,医学・医療に関わる学問への関心,探究心,思考力,倫理観などを評価します。
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地域枠入試
地域医療に強い関心を持ち,将来は地域医療で中心的な役割を担う人を求めています。東北大学で医学教育を受けることを熱望し,地域医療に従事する中で新たな医学や医療の発展を自らの力で生み出したいという強い情熱と,対話による相互理解力・旺盛な探究心・医学への強い学習意欲・創造的な思考力・高い倫理観を有し,信義を重んじる人を歓迎します。大学入学共通テストの成績に加え,筆記試験,書類審査,面接試験によって,地域医療や新しい医学への関心,探究心,思考力,社会性・倫理観などを評価します。
ディプロマ・ポリシー
医学部医学科では、次に掲げる目標を達成した学生に学士の学位を授与する。
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1
生命現象、人体構造並びに様々な疾患について、分子レベルから細胞・組織・器官・個体レベル、さらに地域・社会・国際レベルに及ぶ国際標準の知識を有している。未解明の事象に挑み創造的研究を行って先端領域を切り開き、成果を世界に発信する能力を有している。
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2
優れた倫理観と暖かい人間性を備え、科学的根拠に基づく医療を実践する基本的能力を習得している。地域に密着して医療を実践するとともに、国際社会に医療貢献する能力を有している。
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3
医療の実践と医学の研究を通して、我が国の医学研究、教育、医療を支えると伴に、ワールドクラスの研究の推進、新しい学問の創造、人類への貢献を担う能力を有している。多職種間の連携・協調、学際的研究交流等を円滑に行うコミュニケーション能力とチームを率いるリーダーシップの素養を有している。
カリキュラム・ポリシー
医学部医学科では、ディプロマ・ポリシーで示した目標を学生が達成できるよう、以下の方針に基づき教育課程を編成・実施する。
- 1、2年次は全学教育科目として幅広い一般教養科目と専門教育に活用可能な科目を提供する。1年次より専門教育科目を開始し、医療人、医学研究者として必要な基本的知識・技能・態度を6年間で段階的に修得させる。
- 研究第一の理念に則り、長期に亘り研究に従事し成果を発表する期間を設ける。医学研究PBL、基礎医学修練、高次臨床修練によって、医療リーダーや医学研究者として必要な能動学習・自己研鑽の技能と態度の涵養をはかる。
- 学習成果の適正な評価と個別フィードバックを行い、学習者の内省・自己啓発と能力開発を促進する。
全学教育科目では、幅広い教養を身につけるとともに、専門教育の基礎となる科目も履修します。特に「生命科学」の講義では、必修科目として医師として必要な人体の生物学を学びます。
専門教育科目では、「医学・医療入門/行動科学」「基礎医学/社会医学」「臨床医学」「臨床実習」を順番にすべて履修することが卒業の要件です。
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1. 医学・医療入門/行動科学
1年次の専門教育科目として「医学・医療入門/行動科学」があります。これは複数のテーマからなるグループ学習・実習・講義で、1年間続きます。少人数ワークショップ、早期医療体験実習、医療コミュニケーション実習、地域医療を担っている医師の講演など、様々な内容を学びます。
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2. 基礎医学/社会医学
1年次後半から3年次前半までの2年間学びます。ここでは、人体の正常な構造と機能を学ぶ科目(解剖学・生理学序説、肉眼解剖学、脳解剖学、組織学、生理学、医化学)と、病気の発症・進展のメカニズムおよび治療の基本原理を学ぶ科目(微生物学、免疫学、遺伝学、病理学、放射線基礎医学、薬理学)を開講します。さらに、集団、環境、制度、予防の観点から健康や病気を学ぶ(衛生学、公衆衛生学、法医学、医の倫理学・社会学)科目と、医学を学ぶ基礎となる科目(医学専門英語)も開講します。
また、3年次に20週間行う「基礎医学修練」では、研究室で実際の研究の方法や考え方を学び、基礎医学研究者や研究医となるための素養を磨く機会を提供します。
さらに、3年次終了後あるいは4年次終了後からは、将来の基礎医学研究者や研究医を目指す学生のために「MD-MC-PhDコース」「MD-PhDコース」も用意しています。 -
3. 臨床医学
3年次後半から4年次後半までの1年間学びます。ここでは、様々な疾病を多面的に把握しつつ、患者さんをひとりの人間として理解し、診察や検査、診断、治療の基本を学びながら、内科学、外科学、専門医学などの臨床医学の基本を学ぶカリキュラムを編成し、実施します。
4年次後半に、それまでに学んだ知識や技能を評価する全国共通の共用試験を実施します。「臨床実習」に進むには、これに合格しなければなりません。 -
4. 臨床実習
2年間以上の長期間にわたり、臨床実習および関連する学習や試験等を実施します。
4年次後半から5年次後半までは、全ての診療科を少人数グループで回り、臨床の現場で医療スタッフとともに診療の一部に参加しながら、実際の診療の基礎を学ぶ実習(臨床修練)です。診療科によっては、地域の病院への派遣も行われます。
続く5年次後半からの6ヶ月間は、各学生が興味や進路志望をもとに選択した診療科や分野で4週間ずつ学ぶ実習(高次臨床修練)です。この期間等を利用して海外で実習する機会も用意しています。
6年次後半に卒前最終講義を開講し、基礎系・社会医学系・臨床系分野の教授から、それぞれ専門領域の学問の理念・将来の展望について聴きます。6年次の2月には医師国家試験があります。
また、4年次後半には、それまでに身に付けた知識と技能を医療系大学間共用試験(CBT、OSCE)において検証します。6年次後半には、卒業までの6年間で身に付けた知識と技能を卒業試験(筆記、OSCE)において検証します。