interview01

  • 医学科3年
  • 大堤 聖香 さん

  • 医学科
    放射線腫瘍学分野
  • 神宮 啓一 教授

  • 医学科3年
  • 西田 悠莉 さん

※肩書、役職は取材当時のものです。

放射線腫瘍学分野で学べる事と特徴を教えてください。

我々の分野は、臨床の分野です。病院にある放射線治療科を担当します。放射線を使ったがん治療を学びます。

具体的にどのような事を学べるのでしょうか?

がんと言ってもいろいろな種類のがんがあります。それぞれに対して治療のため放射線をあてるのですが、どれくらいの放射線をどの範囲であてればいいのか、どんな種類の放射線をあてるのか、それぞれ違うんですよね。その最適な治療を目指して医学の発展を目指しています。

先生が医療の道を目指そうと決めたきっかけはありますか?

きっかけは高校生の時、部活動で足を痛めてしまいなかなか治らず、スポーツ医学を学びたいなと思ったことです。家族にも医師がいて、身近な職業だったことも大きかったと思います。

整形外科を目指して入学して、今は放射線腫瘍学を専門にしていらっしゃるということですが、放射線腫瘍学を専門にした理由はなんですか?

東北大学の医学科では、3年生の時に希望の分野に配属され研究を行う基礎医学修練(※1)というカリキュラムがあります。どの分野に参加するか悩んでシラバスをパラパラめくって探していたら、現在、放射線生物学の細井義夫教授が当時准教授でいらっしゃって、シラバスに“放射線の感受性を左右する遺伝子の研究をしている”と書いてあるのを見てそんなことがわかるのか、とすごく面白そうだと思って、放射線生物学(当時はゲノム生物学)の配属を希望しました。基礎医学修練での研究などを通して放射線について学び、医学的にも分かっていないことが多い分野だと気づき、自分も大いなる謎に挑戦したいという気持ちになりました。漠然となんとなく放射線が面白いなと思い始めてそこから整形外科ではなくて放射線関係の仕事に就こうと思いました。それがきっかけですね。

その後、6年生の時の高次臨床修練(※2)というカリキュラムで、希望する診療科に配属されます。その時も放射線治療科を希望して回ってみて、まだまだわからない事が多いけれど、手術をせずに放射線をあててがんの治療ができることに改めて面白そうだなと感じて、決め手になりました。

先生が東北大学を受験しようと思ったきっかけはありますか?

そうですね、私は高校生の時、部活ばっかりやっていて、勉強をほとんどしてなくて、医学部を目指せるような成績ではなくて、それで東北大学の他の学部を受験したんです。その時に仙台に初めて来て、すごく落ち着いたいい街だなと思って、学生時代を過ごすにはすごく良いんじゃないかと思いました。

その年の受験は残念ながら落ちてしまったのですが、浪人している間もずっと東北大学に行こうと思って、一生懸命勉強して医学部に合格して、念願が叶いました。

先程のお話にもあったのですが、どのような高校生時代を過ごしましたか。

部活をひたすらやっていて、親には、いい加減勉強してくれと頼まれたぐらいです。医師になりたいという目標はありましたが、部活や恋愛、友人との交流で忙しく、楽しい高校生活を過ごしましたね。学生の本分は勉強だとは思うのですが、高校生の時にたくさんの経験ができてとても良かったです。楽しい高校生活を過ごした分、大学に入ってからは学業に専念できました。

大学生時代はどのように過ごしていましたか。

大学生時代はまじめに学業をやっていましたね。基本的には全部の授業に出るようにして、まじめな医学部の学生だったと思います。部活にも参加してはいたのですが、学業をメインでやっていましたね。アルバイトはそんなに多くはやっていなかったです。毎日会う同級生もほんと一握りで、その中に優秀な奴がいて、彼がどう思っていたかは別として、私としては彼をライバル視していて、張り合って勉強していましたね。

学業がメインだったということですが、大学生のうちになにか経験しておいてよかったなと思っていらっしゃることはありますか。

学生のうちに、遊びや恋愛もいろいろと経験したので、医師になってからはもう落ち着いたもんだという感じでよかったかなと思いますね。

医師になると忙しいですし、関わる人も限られてきます。病院ではたくさんの患者さんやスタッフと関わるので、学生のうちにいろいろな人とのコミュニケーションをとって、人の気持ちがわかるようになっておくのはとても重要ですね。

高校時代から通して考えると、接客業などのアルバイトを経験しているととてもいいのかなと思います。今の学生さんにもおすすめします。高校生はアルバイト禁止のところもあるでしょうし、医学科の勉強はとても大変なのですが、ぜひそういう機会を持ってほしいです。また、医師になっても英語はとても大切なので学生のうちに習得しておくことを強くおすすめします。それから、現在は難しいですが、海外にもどんどん行って世界を見てくるといいと思います。

放射線腫瘍学分野の研究の魅力についてどのように感じていますか。

私ががん治療の放射線治療を専門にしようと決めた学生の頃は、世間がIT革命と言われていた時代で、コンピューターの技術がどんどん進んでいる時代でした。放射線治療ってコンピューターをすごく使うんですね。これはこれからの分野だと、これからの治療だと、そう感じたので放射線治療をはじめました。放射線をいかに正確に、余計なところにあてずにがんだけにあてるかというのを目指してたくさんの研究がされています。機械をつくる、機械を発達させるっていうのもひとつですし、放射線の感受性を上げる、がんの感受性を上げる、あるいは正常組織の感受性を下げる、などですね。研究と治療を通して、どんどん患者さんが治っていくのを見ると、研究をやっていてよかったなと思いますし、放射線による治療はこれからも発展していく分野だと思いますね。

放射線をあてるということだけではなく、あてられる側の感受性を高めたりあるいは周りの正常細胞の感受性を下げたりという、別の角度からアプローチできるというのが聞いていて面白いなと思いました。

放射線のあて方も、外から放射線をあてるというのが一般的なんですけど、それだけじゃなくて、今は放射線物質を抗体などにくっつけて、がんに特異的にくっつく抗体に放射性物質をつけたり、細胞レベルで放射線を選択的にあてるっていうことができるようになってきているので、まだまだこれからも発達していく、すごく面白い分野です。

お話を聞いて、工学系や他分野との連携が重要な分野だと思いました。

そうですね。放射線治療というのは機械的な発展・生物学的な発展があり、いろいろな発展の道筋があるので、研究も多岐にわたります。特に機械的な発展がすごく重要で、新しい機械がどんどん開発されています。機械を作り、機械を使って、がん治療を行うということですね。医学だけではなく工学系の技術が医療に直結して患者さんの治療に役立つので、工学部、理学部とかそういったところから共同研究の話もたくさん上がってきます。おっしゃるとおり他の分野と連携がとても多い分野です。

では、最後に医学部を目指す受験生にメッセージをお願いします。

東北大学の医学部を目指す方はどんな分野でもよいので日本を牽引するような人になってほしいですね。そのためには何でも経験して何でも吸収するんだ、という貪欲さが必要だと思います。医学の発展に寄与して患者さんのために人のために役に立ちたいという人に、ぜひ東北大学医学部に入ってほしいですね。

あとは、他の質問でもお伝えしましたが、医師になりたい人には今の高校生のうちにいろんな経験をしてくださいというところですね。医師は知識だけあればよいという職業ではないので、若いうちに多くの経験をしておくとよいですね。

※1

基礎医学修練
3年次、学生が希望する分野に配属し、月曜日から金曜日のフルタイムで20週間、研究を行います。中には海外の研究機関で基礎医学修練を行う分野もあります。最後には研究の成果を学会形式で報告・討論を行います。

※2

高次臨床修練
6年次、希望する診療科に4週単位で配属になります。学生は各科の医療チームの一員となって診療に従事します。

After Talk

インタビューを終えて

取材日 2022年12月2日

  • 医学科 3年(取材当時)
  • 大堤 聖香 さん
  • [ 秋田県立秋田高等学校出身 ]

神宮先生が自身の専門を決断したきっかけが、現在私たち3年生が履修している基礎医学修練であることに驚きました。私自身、医学科に進学し医学の道を歩んでいる今も、将来に期待と不安を抱えています。勉学や部活動に励む何気ない日々が、経験豊かな医師としての土台になることを改めて実感しました。大学受験も人生の大きな分岐点となりますが、受験生の皆様にはぜひ新鮮な気持ちで様々なことに挑戦し、自身が何を目指したいのかをよく見定めてほしいと思います。応援しています。

  • 医学科 3年(取材当時)
  • 西田 悠莉 さん
  • [ 鷗友学園女子高等学校出身 ]

放射線腫瘍学というなかなか触れることのない分野のお話を聞くことができて大変勉強になりました。特に研究と臨床をどちらも行っている分野であり、他学部の分野とも連携して研究をしているというところに興味が湧きました。

受験生へのメッセージではありましたが、なんでも経験してなんでも吸収するんだ、という貪欲さが必要というお話で私も今後さまざまな経験のチャンスを逃さずに、人として成長できるよう努力していこうと意識を新たにすることができました。

  • 医学科
    放射線腫瘍学分野
  • 神宮 啓一 教授

福岡県出身。2002年に東北大学医学部を卒業。同放射線治療科に入局。放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター、米国スタンフォード大学などを経て、2012年4月東北大学大学院医学系研究科放射線腫瘍学分野教授に就任。