お知らせ
筋萎縮性側索硬化症(ALS)を対象とした肝細胞増殖因子(HGF)の第Ⅱ相試験(医師主導治験)を開始
東北大学大学院医学系研究科神経内科学分野の青木正志教授(東北大学病院神経内科 科長)は、大阪大学大学院医学系研究科神経内科学の望月秀樹教授(大阪大学医学部附属病院神経内科・脳卒中科長)と共同で、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者を対象とする肝細胞増殖因子(HGF)組換えタンパク質の第II相試験(医師主導治験)(以下、本治験)を実施します。本治験は、日本医療研究開発機構(AMED)の難治性疾患実用化研究事業による支援を受け、東北大学病院および大阪大学医学部附属病院において行います。
ALSは、主に運動神経の変性によって全身の筋肉にやせと筋力低下が進行し、やがては呼吸筋まひにいたる難治性の神経疾患です。症状を改善するような治療法がないため、新しい治療法の開発が切望されています。青木教授を中心とする研究グループはこれまで、日本で発見された神経栄養因子であるHGFを用いたALS治療法の開発に取り組んできました。
HGFはもともと肝細胞の増殖因子として発見された生理活性物質ですが、運動神経細胞の保護効果を示す神経栄養因子としての作用も強く、難治性神経疾患に対する治療薬として臨床応用が期待されてきました。青木正志教授らは、慶應義塾大学医学部生理学教室の岡野栄之教授および整形外科学教室の中村雅也教授、旭川医科大学脳機能医工学研究センターの船越洋准教授らと協同して組換えHGFタンパク質を医薬品化する創薬研究を行い、2011年~2014年、世界初の組換えHGFタンパク質の脊髄腔内投与による第I相試験を東北大学病院で実施しました。その結果、安全性と薬物動態を15名の軽症ALS患者で確認できました。
この成果を経て、今回はALSに対するHGFの有効性と安全性を確認するための第II相試験を計画しました。本治験では、東北大学病院、大阪大学医学部附属病院のそれぞれで24例ずつ、合計48例のALS患者に参加いただく予定です。本治験で使用する治験薬は、ヒトのHGFを遺伝子組換え技術により製造・製剤化したもの(開発コード:KP-100IT)で、クリングルファーマ株式会社から提供されます。
本治験の実施については、東北大学病院および大阪大学医学部附属病院の治験審査委員会(IRB)の承認を受けており、2016年4月28日に医薬品医療機器総合機構(PMDA)に東北大学病院で実施する治験計画届を提出しました。治験期間は2019年8月までを予定しています。