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新たなATP産生メカニズムの解明と そのミトコンドリア病治療薬への応用

 東北大学大学院医学系研究科および大学院医工学研究科病態液性制御学分野の阿部 高明(あべ たかあき)教授、松橋 徹郎(まつはし てつろう)研究員(兼東北大学病院小児科)らは自治医科大学小児科の小坂 仁(おさか ひとし)教授、筑波大学の中田 和人(なかだ かずと)教授、岡山理科大学の林 謙一郎(はやし けんいちろう)教授らとともに、新たなATP産生活性化のメカニズムを解明しました。これまで阿部教授らのグループらが報告したATP産生メカニズムを活性化する薬剤Mitochonic acid 5(MA-5)は、ミトコンドリア病の患者由来細胞や病態モデルマウスにおいて病態を改善する効果があることを明らかにしました。
 ミトコンドリアは生命活動に必要なエネルギーであるATPの約95%を産生しています。ミトコンドリアに異常があるミトコンドリア病患者ではATP産生低下に伴う全身性の臓器障害が起こりますが、現在ミトコンドリア病に対する確定的な治療薬が無く、その治療法の確立が急務です。これまで阿部教授らのグループは、腎臓病患者の血液中にATPや造血因子の産生促進作用があるインドール化合物を見出し、その誘導体のうち最もATP合成能をもつ化合物をMitochonic acid 5 (MA-5)と名付け報告しました(Suzuki T. Tohoku J. Exp. Med. 2015, Suzuki T. JASN 2016)。今回、同研究グループは、MA-5はATPを合成するタンパク質(ATP合成酵素)の集合体の形成を促進し、その結果、ATP産生が活性化されるという新たなメカニズムを解明しました。また、ミトコンドリア病患者由来の細胞を用いた研究から、MA-5は細胞を保護する効果を持つことが明らかになりました。
 本研究の成果は、ATPを合成する新たな生命現象の解明であり、また現在有効な治療法のないミトコンドリア病に対し、MA-5は世界初かつ日本発の新しい治療薬の開発となりうることを示しています。今回の研究成果は、Cell誌とLancet誌が共同でサポートする新規オープンアクセス誌EBioMedicine誌に2017年5月に掲載されました。本研究の一部は日本医療研究開発機構(AMED)によってサポートされました。

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