• TOP
  • NEWS
  • 開放隅角緑内障に関わる新たな7遺伝子領域を同定 -1万5,000人の緑内障患者のゲノム解析から病因の解明へ-

お知らせ

  • プレスリリース

開放隅角緑内障に関わる新たな7遺伝子領域を同定 -1万5,000人の緑内障患者のゲノム解析から病因の解明へ-

  理化学研究所(理研)統合生命医科学研究センターの久保充明副センター長、統計解析研究チームの鎌谷洋一郎チームリーダー、秋山雅人リサーチアソシエイト、志賀由己浩研究生、東北大学医学部眼科学分野の中澤徹教授、西口康二准教授らの共同研究グループは、日本人の主な失明原因である開放隅角(ぐうかく)緑内障についてアジア最大のゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施し、発症に関わる7カ所の感受性遺伝子領域を同定しました。
 緑内障は視神経が障害を受ける眼疾患で、日本人の失明原因の第一位となっています。日本人における緑内障の有病率は5.0%であり、その主な病型は開放隅角緑内障ですが、開放隅角緑内障患者の遺伝要因の大部分は解明されていませんでした。

 今回、共同研究グループは、開放隅角緑内障の発症に関わる遺伝要因を明らかにするため、バイオバンク・ジャパンで収集された日本人の開放隅角緑内障患者3,980名と対照群18,815名を対象に、ヒトゲノム全体に分布する約600万個の一塩基多型(SNP)のGWASを行いました。さらに、開放隅角緑内障と強い関連が認められたSNPについて、独立した二つの日本人集団(患者:3,398名、対照群:17,570名)で再現性を検証しました。その結果、新たに7カ所の遺伝子領域(FNDC3B、ANKRD55-MAP3K1、LMX1B、LHPP、HMGA2、MEIS2、LOXL1)が発症に影響することが分かりました。また、これらの遺伝子領域について、他の人種(患者:8,357名、対照群:38,100名)における発症リスクへの影響を検証したところ、ニつのSNPがアジア系人種で、四つのSNPがヨーロッパ系人種でも発症に寄与していると考えられました。さらに、関連が示された遺伝子の特徴を明らかにするためパスウェイ解析を行ったところ、上皮成長因子受容体シグナルに関する遺伝子群が発症に影響している可能性を突き止めました。さらに、過去に開放隅角緑内障との関与が報告されている7形質について、遺伝学的相関の評価を行いました。その結果、開放隅角緑内障は2型糖尿病や心血管病と遺伝的背景を共有していることが明らかになりました。これは、生まれつき開放隅角緑内障になりやすい人が、これらの疾患になりやすいことを示しています。

 本成果は、今後、緑内障病因の解明や治療法の開発や予防医学研究に貢献すると期待できます。
 本研究は、英国の科学雑誌『Human Molecular Genetics』掲載に先立ち、オンライン版(2月14日付け:日本時間2月14日)に掲載されました。

ページトップへ戻る