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悪性中皮腫を光で破壊! 〜新たな近赤外光線免疫療法の応用〜

 名古屋大学大学院医学系研究科呼吸器内科学博士課程4年(現、一宮市立一宮市民病院呼吸器内科)の西永 侑子 大学院生(筆頭著者)、同大高等研究院・最先端イメージング分析センター/医工連携ユニット(若手新分野創成研究ユニット)・医学系研究科呼吸器内科学の佐藤 和秀 S-YLC特任助教(責任著者、筆頭著者)、同大未来社会創造機構・最先端イメージング分析センター/医工連携ユニット(若手新分野創成研究ユニット)の 湯川 博 特任准教授、同大医学系研究科呼吸器外科学の 芳川 豊史 教授、同大大学院工学研究科の 馬場 嘉信 教授および国立病院機構名古屋医療センターの 長谷川 好規 院長らの研究グループは、米国がんセンター(NCI/NIH)分子治療診断部門の小林 久隆 主任研究員、東北大学未来科学技術共同研究センター/東北大学大学院医学系研究科抗体創薬研究分野の加藤 幸成 教授らとの共同研究により、前臨床研究として、ポドプラニンを分子標的とする悪性中皮腫に対する近赤外光線免疫療法の開発に成功しました。

 悪性胸膜中皮腫は予後不良で、将来的に世界中で患者数が増加すると予想されています。しかし、悪性胸膜中皮腫に対する有効な化学療法は限られており、切除不能例に対する治療法は非常に限定的であるため、新たな薬剤や治療方法の開発が望まれています。ポドプラニンは、悪性中皮腫に発現が報告されているタンパク質であり、病理診断においての陽性マーカーとして使用されてきました。共著者の東北大学の加藤教授らのグループは、ポドプラニンをターゲットとした抗体医薬として新規の抗ポドプラニン抗体であるNZ-1を開発しました。

 近赤外光線免疫療法(NIR-PIT)は、共著者の米国立がんセンター(NCI/NIH)の小林博士らのグループにより開発された新しいがん治療法です。がん細胞が発現するタンパク質を特異的に認識する抗体と光感受物質IR700 の複合体を合成し、その複合体が細胞表面の標的タンパク質に結合している状態で近赤外光を照射すると細胞を破壊します。現在、局所再発頭頸部扁平上皮がんに対する国際的な第III相臨床試験(LUZERA-301)が行われており、近い将来認可が期待されております。

 今回の研究では、ヒト悪性胸膜中皮腫外科切除検体でのポドプラニンの発現を検討した上で、NIR-PITとNZ-1を組み合わせた、ポドプラニンを標的とする悪性中皮腫に対する近赤外光線免疫療法の効果を証明しました。今回の研究で、ポドプラニンを標的としたNIR-PITが、悪性胸膜中皮腫に対して有望な新規の治療法になりうることが示唆されました。

 本研究は、JST科学技術人材育成費補助事業「科学技術人材育成のコンソーシアムの構築事業:若手研究者スタートアップ研究費」、文部科学省研究大学強化促進事業、文部科学省「ナノテクノロジープラットフォーム」事業、国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (AMED)・先端的バイオ創薬等基盤技術開発事業/創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS)等のサポートを受けて実施され、科学誌「Cells」(2020年4月20日付電子版)に掲載されました

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