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膵臓がんの細胞死を誘導する脂肪酸を発見 新たな補助化学療法確立への一歩

膵臓がん(注1)の治療では、抗がん剤による化学療法(注2)が大きなウエイトを占めます。しかし、抗がん剤には耐性獲得細胞の出現や副作用などの問題があるため、新たな化学療法の確立が望まれています。
東北大学大学院医学系研究科器官解剖学分野の香川 慶輝非常勤講師、医学部医学科学生の須田 朱音、同研究科病態病理学分野の古川 徹教授、病体液性制御学分野の阿部 高明教授、生物化学分野の五十嵐 和彦教授らの研究グループは、不飽和多価脂肪酸であるLAとαLA(注3)が、膵臓がん細胞にフェロトーシス(注4)を誘導し、がんの増殖を抑制することを見出しました。この抑制効果は、既存の抗がん剤に耐性を獲得した膵臓がん細胞にも発揮されました。本研究は、膵臓がんの補助化学療法の改善につながる可能性がある重要な発見です。また、この研究は医学部学生が遂行し、本学の「研究第一」の理念を体現したものでもあります。
本研究の成果は、2024年2月22日付のScientific Reports誌に掲載されました。概要は、YouTubeの医学系研究科公式チャンネルでもご覧いただけます(https://youtu.be/s1k9Qz_1wWc)。

【用語説明】
※注1.膵臓がん:初期には自覚症状がないことが多いため早期発見が難しく、受診の時点で外科的に治療可能なケースは2割程度である。
※注2.化学療法:ゲムシタビンは長年、膵臓がんの標準治療薬として使われており、副作用は比較的軽いが、生存期間の中央値は6.8か月である。近年は11.1か月の生存期間の中央値を示すフォルフィリノックス療法が推奨されるが、重篤な副作用のリスクも大きいため、適用には患者が一定の健康状態にあることが必要である。
※注3.LA(リノール酸)、αLA(α-リノレン酸):いずれも18個の炭素原子からなり、リノール酸は2つ、α-リノレン酸は3つの炭素原子二重結合を有する多価不飽和脂肪酸である。生体膜を構成するリン脂質の材料であり、生理活性物質の合成にも利用される。生物にとって普遍的で不可欠なものであるが、ヒト体内では合成できないため植物油などからの摂取が必要な「必須脂肪酸」である。
※注4.フェロトーシス(ferroptosis):2012年に発見された、プログラムされた細胞死の一つ。アポトーシスとは異なるものであり、鉄イオン代謝に依存して過酸化脂質や活性酸素種が蓄積され、細胞内小器官や細胞膜が破壊されることを特徴とする。

【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科器官解剖学分野 非常勤講師
(メルボルン大学フローリー研究所 上級研究員)
香川 慶輝(かがわ よしてる)
Email:yoshiteru.kagawa*florey.edu.au(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
TEL:022-717-8032
FAX:022-717-8931
E-mail :press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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