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抗体創薬学分野の加藤 幸成教授らの論文がCellsに掲載されました
血小板凝集因子として発見されたポドプラニン(PDPN)(注1)は、絶対的なリンパ管マーカーとして有名である。また、悪性脳腫瘍、悪性中皮腫、肺扁平上皮がんなど、特に悪性度の高い腫瘍で高発現しており、標的分子として注目されている。その一方で、PDPNは全身の正常細胞に発現しているため、正常細胞に対する副作用が懸念され、PDPNが発現するがん細胞を特異的に攻撃する抗体医薬(注2)の開発が求められていました。
東北大学大学院医学系研究科抗体創薬学分野の加藤幸成教授の研究グループは、がん細胞を特異的に攻撃する抗体医薬(CasMab)(注3)の開発を行ってきました。本研究では新たに、PDPNを標的とするPDPN-CasMabを作製しました。今回開発したPDPN-CasMabは、がん細胞だけに反応し、正常の上皮細胞には全く反応しませんでした。さらに、PDPN-CasMabは肺がんに対する抗腫瘍効果を示したことから、肺がんに対する副作用のない治療法の開発が期待されます。
本研究結果は、2024年11月6日、科学誌Cellsに掲載されました。概要はYouTubeの抗体創薬学分野チャンネルでもご覧いただけます。
【用語説明】
注1.ポドプラニン(PDPN):血小板凝集因子や転移促進因子として知られ、多くのがん組織で高発現している。リンパ管マーカーとして、血管との鑑別にも利用されている。ヒトPDPNのThr52に付加されている糖鎖が血小板凝集に必須であり、そのレセプターはCLEC2(クレックツー)である。
注2.抗体医薬:抗体とは、リンパ球のうち、B細胞が産生するタンパク質で、特定の分子(抗原)を認識して結合する。血液中や体液中に存在し、細菌やウイルスなどの微生物に結合すると、白血球による貪食が起こる。がん細胞に結合しがん細胞を殺す働きもあり、多くの抗体医薬品が臨床で使用されている。
注3.CasMab(キャスマブ):Cancer-specific monoclonal antibody(がん特異的抗体)の略で、2014年に東北大学の本研究室が世界で初めて発表した(商標:第5690178号)。がん細胞と正常細胞に発現する膜タンパク質のアミノ酸配列が100%同一であっても、がん細胞に特徴的な構造の違いを認識する。