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情報遺伝学分野の有馬 隆博客員教授らのPreview論文がCell Stem Cell誌に掲載されました

胎盤を保有する哺乳類では、胎盤は母体から胎児へ栄養や酸素を供給し、その機能は動物種を超えて保存されています。しかし、着床、胎盤の発生様式や栄養膜細胞の構成細胞等は、多様性に富んでいます。胎盤の主要構成細胞である栄養膜細胞は、受精卵(胚盤胞)の栄養外胚葉に由来し、胎児と母体間の相互作用により、中心的機能を果たしますが、その機序は動物種間で異なります。例えば、小型のマーモセット(注1)などの新世界ザル類は、胚が子宮内膜の表面に着床しますが、ヒトや大型の旧世界ザル類は、胚は子宮内膜の奥深くまで侵入します。そのようなヒト特有の特徴が、ヒト固有の発生様式の確立やその破綻によって派生する周産期疾患(HDP(注2)や低出生体重児等(SGA))に関わります。これまで、このような動物種間の胎盤の多様性に繋がる要因については、ほとんど明らかになっていませんでしたが、ケンブリッジ大学のSiriwardenaやBoroviakらは、マーモセットのTS細胞(注3)の誘導に成功し、ヒトTS細胞との誘導および培養条件や着床機序などに関する共通点や相違点を明らかにし、報告しました。
今回、東北大学大学院医学系研究科情報遺伝学分野と熊本大学発生医学研究所胎盤発生分野らの研究グループは、Siriwardenaらの研究成果について、その有用性や研究の意義について概説しました。本論文は、日本時間2024年10月4日(木)午前0時(米国東部時間10月3日(木)午前11時)に科学誌Cell Stem Cell誌に掲載されました。

【用語説明】
注1.マーモセット:霊長目マーモセット科Callithrix属に分類される新世界ザルの一種です。Callithrix属の模式種。 マウスよりも人間に近い実験動物として利用されます。新世界ザルとしては初めて、全ゲノム配列が決定されています。
注2.HDP(妊娠高血圧症候群):妊娠高血圧症候群は妊娠高血圧腎症・妊娠高血圧・加重型妊娠高血圧腎症・高血圧合併妊娠に分類されます。全妊娠の5〜10%に発症し、母体死亡や周産期死亡(赤ちゃんの死亡)、その他母児合併症の原因にもなります。
注3.TS(胎盤幹)細胞:自己複製能と胎盤の細胞に分化する能力を持った胎盤由来の特殊な細胞。万能細胞として知られる胚性幹細胞(ES細胞)は、実は胎盤の細胞になることはできません。

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