ピックアップ

  • Interview

大学院特集2019

2017.11
医科学専攻 器官解剖学分野
大和田 祐二 教授

Q. どのようなテーマで研究をされていますか?

私たちは、三大栄養素の一つである脂質が、神経系細胞の形態や機能にどのように影響するのか、という研究をしています。脂質を対象とした研究は、蛋白質や遺伝子に比べて、解析が難しく、以前は静的な数値上の分析データとして捉えられていました。しかし最近では、脂質のダイナミクスに着目して、例えば、ある脂質に蛍光トレーサーで標識し、細胞質やオルガネラの間をどのように動いているのか、あるいは外部刺激やストレスに呼応して、その動きをどのように変化させるのかを観察しようとする試みを進めています。
動脈硬化・脂肪肝などの疾患では、脂質の過剰摂取が悪影響を及ぼすことは知られています。しかし、脂質が神経系を構成するニューロンやグリア細胞の機能や、記憶や情動などの脳の働き、さらにはパーキンソン病などの神経変性疾患や精神疾患に与える影響や作用メカニズムについては、まだ良く分かっていません。私たちは、こうした謎を解き明かすべく研究を進めています。

Q. 専攻の特徴を教えて下さい。

医科学専攻は、人間を深く知り、私たちを苦しめる疾病の克服をめざす医学研究者や医師を育てることを目標にしています。東北大学医学系研究科では、文字通り総合科学である医学の研究・教育分野のエキスパートが全力を挙げて、地域や日本のみならず、将来世界をリードする医療人の育成に取り組んでいます。また本研究科には、国内有数の施設や設備はもちろん、国内外から数多くの多様性に富んだ若い人材が集結しています。是非、このような素晴らしい環境の中で、同世代の皆さんと互いに切磋琢磨しながら、自分の可能性を追求して欲しいと思っています。

Q. どのような学生に大学院に来て欲しいですか?

大学院で研究したいと思う動機は人それぞれだと思っています。純粋に実験や研究が好きな人、将来のキャリアアップのために学位が欲しい人、就職や進路に迷って入学する人、など様々です。恥ずかしながら、自分が基礎系の大学院で研究を始めたのは、臨床医時代に指導教授からの強い進めがあったからで、決して自ら積極的に決めたわけではなく、実際に研究の楽しさや喜びを知ったのは、入学後しばらく経って自分の論文が初めて掲載された雑誌を見た時だったのを覚えています。生命現象や病気について、何か新しいことを見つけ出す楽しさとは、どんなものなのかを垣間見たいと思っている、どんな学生さんも歓迎します。

Q.医学部で研究するということはどんな意義があるでしょうか?

医学部での研究というと、患者さんを対象とした臨床研究が頭に浮かぶかもしれません。もちろん、臨床研究が医学研究において重要であることは言うまでもありません。しかし私は、基礎医学研究は、臨床研究と同じ、あるいはそれ以上に重要であると思っています。臨床応用が進みつつあるiPS研究には、これまで蓄積された膨大な基礎医学の成果が集約されています。さらに今年ノーベル賞 を受賞した体内リズム研究も、今後患者さんに還元できるまでには、基礎・臨床医学の新発見が必要となるでしょう。基礎医学研究のブレークスルーなしには、臨床研究の更なる発展はないと言えます。どうか遠い未来を見据えた基礎医学研究にもチャレンジしてみてください。

※所属や職名などは、記事発表当時のものとなっております。

ページトップへ戻る