東北大学大学院医学系研究科・医学部

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「死なない薬を作りたい」少年の夢は
社会全体を健康にする目標に変わり
疫学・公衆衛生学を通して実現目指す

インタビュー
公衆衛生学専攻
Public Health
公衆衛生学分野/個別化予防・疫学分野(兼) 教授
Epidemiology/Personalized Prevention and Epidemiology Professor
寳澤 篤
Atsushi Hozawa
2023.06.09

寳澤 篤

循環器疾患の疫学を中心に研究し、社会実装を考える

●研究の概要を教えてください

主に循環器疾患の疫学・要介護発生要因の疫学を中心とした研究を続けてきました。2012年に東北メディカル・メガバンク機構に着任してからのこの10年は東北メディカル・メガバンク計画のコホート調査のリクルート・運営に携わってきました。その中で、被災地における健康状況の把握と個別化予防の推進についての研究を続けています。さらに、新しく評価・測定が可能になってきている遺伝情報・ウェアラブルディバイス・地理情報等を活用した研究を開始しています。

疫学研究として挙がった成果を社会に実装させていくことについても研究を進めています。東北大学センターオブイノベーション(COI東北拠点)に参画し、ナトカリ計の特定健診現場への導入によって地域全体の血圧が下がる可能性について報告しています。社会全体を健康にするためには、どのような成果が必要で、それを社会にどのように実装していく必要があるのかを検討していきたいと考えています。

●研究室はどのような雰囲気ですか?

教員と学生とで週に1回勉強会を継続しています。社会人の方・遠方の方もいますので、平日の夕方からオンラインを含め実施しています。皆自由に発言をし、和気あいあいとした雰囲気で勉強できていると思います。ついつい自分も楽しくなってしゃべり過ぎることは個人的な反省点です(笑)。また、論文指導についても学生と教員の間で積極的に情報交換をし、成果を創出しています。

健康に過ごせる世の中をつくる道筋を学んでほしい

●学生にどのようなことを期待しているかなども含め、進学希望者へのメッセージをお願いします

学生さんには疾病予防の重要性を理解してほしいと考えています。各種疾患の治療法は進歩していますが、一番病気の予後を決めるのはどれだけ早期に見つけ、治療を開始するかです。それよりも重要なのは「何も起こさせないこと」で、住民の皆さまにそもそも病気にならずに健康に過ごしていただけるような社会をつくっていければと思います。遺伝子・生活習慣・環境要因などさまざまな因子が病気の発生と関連しますが、「集団」として何に気を付けるかと、「個人」で何に気を付けるかを明らかとして、皆が健康に過ごせる世の中をつくる道筋を学んでいただければと思います。また、私たちと一緒に研究することで社会に向けた成果を発信するとともにご自分のキャリアパスにもつながる仕事をしてもらいたいと願っています。

大学・行政・企業で 修了生は希望した進路を歩み活躍

●修了後はどのような進路がありますか?また、修了生はどのように活躍していますか?

大学で研究を続けている卒業生、行政に勤めている卒業生、企業に勤めている卒業生、いろいろなパターンありますが、いずれも自分の希望した進路に進んでいると思います。私の教室(個別化予防・疫学分野)の卒業生第1号の小暮真奈先生は現在、東北メディカル・メガバンク機構の講師として活躍しています。バックグラウンドの管理栄養士の資格を生かし、COI東北拠点の活動の中心として活躍し、第5回日本オープンイノベーション大賞 選考委員会特別賞の受賞者の一人として表彰を受けました。

●病院や企業に勤務しながらの修学は可能でしょうか?

はい。社会人学生さんも受け入れており、指導をしています。どうしても常勤的な学生さんと比べると研究時間に制限はありますが、ご自分の仕事量と相談しながら研究を続けています。

膨大な健康データと、それを解析する専門スタッフが集結

●東北大学の良いところは?

手前みそになりますが、東北メディカル・メガバンク計画において遺伝情報・生活習慣情報・疾患情報がそろったデータがあるところ、それを解析する各種専門スタッフ(遺伝統計・ゲノム解析+疫学・公衆衛生学者)が一堂に会しているところが大きな強みになると思います。

column

子どものころ曽祖母が亡くなった時に、自分は死んだらどうなってしまうのだろう…というのを強く恐怖に感じました。その時に「死なない薬」を作りたいと思ったのですが、大学に入ったあたりで現実的ではないな…と(そこまで気付かなかったわけではないですが)。ただ、その後巡り合った疫学・公衆衛生学は「何が健康の要因なのか」を知り、「どのようにそれを社会に実装するか」の学問であり、ある意味子どもの頃の夢「人を元気で健康でいさせるための学問」を実現するための道に進めたのかなと。同じ夢に共感してくれる学生さんを増やしていきたいですね。実は「死なない薬」の話はメガバンクのホームページにもインタビュー記事として掲載いただいたのですが、小学生の子から応援の手紙をもらいました。とてもうれしく勇気づけられました。私のところで一緒にやってくれている教員・学生にこの夢はつなげていきたいと思っています。

PROFILE
公衆衛生学専攻
Public Health
公衆衛生学分野/個別化予防・疫学分野(兼) 教授
Epidemiology/Personalized Prevention and Epidemiology Professor
寳澤 篤
Atsushi Hozawa

1996年3月 東北大学医学部卒業
1996年6月 山形県立中央病院 研修医
2002年3月 東北大学大学院医学系研究科卒業
2002年4月 日本学術振興会特別研究員(2005年3月まで)
2004年6月 University of Minnesota, Division of Epidemiology and Community Health Visiting Research Associate
2006年4月 滋賀医科大学社会医学講座福祉保健医学部門特任助手
2008年4月 東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野助教
2010年4月 山形大学大学院医学系研究科公衆衛生学講座助教・11月より講師
2012年4月 東北大学東北メディカル・メガバンク機構予防医学・疫学部門 教授
2023年4月 東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野 教授

●関連リンク

https://www.pbhealth.med.tohoku.ac.jp/
http://www.pprevention.megabank.tohoku.ac.jp/

●MAIL

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