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人類の未知の問題に挑み 医療の未来を拓くために


高瀬圭/医学科長(放射線診断学分野:教授)、本間経康/保健学科長(医用画像工学分野:教授)、石井直人/医学部長(免疫学分野:教授)

医学・医療技術の急速な発展の一方で少子高齢化に伴う課題、新型感染症などの新たな脅威があり、医療従事者に求められる知識は増え続けています。予測困難な未来の医療を担う東北大学医学部を目指す高校生に向けて、大学時代に培うべき力、そのために用意している教育の特色、将来に向けた期待を、本年度新たに医学部長、学科長に就いた 3人に語ってもらいました。

答えのある知識の習得に加え 自ら問題を見つけ解決する力を

医療従事者に必要な知識が増加し医療ニーズが多様化する中、医学部の学生はどんな力を担う必要があるでしょうか。

本間:一つは高校生の皆さんが勉強されてきた、正解と思われるものが分かっていることに対する勉強や知識を整理する能力です。保健学科の場合は4年間の後に国家試験でその知識を問われることになります。もう一つは、正解が今のところ分かっていないものへの応用力、対応力。医療の現場で患者さんと接する中では知識だけでは解決できない、正解が一つとは限らない問題もありますので、その対応力も培っていただく必要があります。

高瀬:先人が築き上げた医学の膨大な知識を覚えて、医師としての能力を身に付けるのは、受験勉強に通じると思います。一方で、臨床でも基礎研究でも、ここまでしか分かっていないとか、ここから先は治せないとか、そういう限界に案外早く突き当たるはずです。その時に、世の中や患者さんが何を求めているのかというニーズを拾い上げる力、本間先生のおっしゃった、正解のないものを自分で問題提起して解決する力が求められていきます。

石井:これまでの医学・医療は、例えばがんのような慢性疾患に関して、分子生物学やゲノム医学の知見を結集し、その患者さんに適切な個別化医療を構築しようという流れが世界的にありました。ところが新型コロナが出てきて、公衆の健康をいかにして守るかとか、危機対応としてワクチンをいかに早く接種するかとか、従来の医学が向かっていた方向とは別のニーズが現れてきたわけです。人類が経験していないようなことが起きて、医学・医療が求められることもより幅広くなりました。従って、これからの医学科あるいは保健学科の学生さんに求められるのは、未知のものに対応すべく自分で問題を発見して解決し得る能力、またその意識の高さだというお二人の意見に100%賛同します。

臨床現場を見て研究にも触れ 将来への実感を伴いながら学ぶ

その力を付けるために、東北大学医学部にはどのような環境がありますか。

本間:知識を整理し正解を答えられるようにする部分は、医学部の専門科目でしっかり学んでいただけます。その次の、問題自体を探し解決することに関しては、保健学科では数年前に卒業研究の時間を倍ほどに増やし、知識の整理だけではなく研究にも触れ将来に役立てられるカリキュラムになりました。4年間の制約があり国家試験もあるため、他の学部と比べると専門科目がぎっしりと入っているような状態ではありますが、他の大学の保健学科に比べると、研究に触れることに多くの時間を割いているのが特色の一つです。

高瀬:医学科でもまずは医師になるための教育が基本としてあって、それは最も欠かせないものです。東北大学ではかなりブラッシュアップされた講義を用意するとともに、十分な臨床実習の期間を設け、教育担当の下で実のある実習ができます。われわれの頃は1、2年の時に、いつになったら医学を学べるのだろうかと不安に襲われることもあったんですけれども、今は早期医療体験実習などにより、1年生の時から臨床医や研究者がどんなことをやっているか見て触れる機会があり、今学んでいる基礎医学が患者さんの役に立つ、必要な知識なんだと実感しながら学べるような工夫がされています。入学したら直ちに、6年後を見据えて学習意欲を高められるのが非常にいいところだと思います。

石井:ほかに、医学科の3年時には20週間研究室に配属する基礎医学修練がありまして、研究室配属では日本の医学部で一番長いのではないかと思います。学部時代に自ら研究に従事し、答えが存在するかどうかも分からないことに取り組むというのは貴重な機会です。研究者に限らず、将来医師あるいは技師、看護師になる方たちも一定期間そのような研究に取り組むことは、先ほど話した自ら問題を見つけて解決する姿勢を身に付ける上で非常に有益です。そこが東北大の教育の特長であり、卒業生が高く評価されている理由の一つではないかと考えています。

生活全般を通して人間力を育み その力を融合し医療発展へ貢献

将来的に臨床や研究の現場で活躍できる人になるために、大学生活をどんなふうに過ごしてほしいですか。

本間:リベラルアーツと一言で言えば簡単ですけれども、一見医学に関係ないことも含めた知識があるからこそ気付けることも多いので、幅広く教養を身につけ、学業以外でもいろんな体験をして人間力を高めていただきたいですね。サークル活動などを通して学ぶ人間関係やリーダーシップの取り方は、臨床の現場に出た時にも使えるスキルになると思います。

高瀬:個人の力で突破できることは基礎研究の部分を除くと限られていて、その後世界で幅広く患者さんに新しい医療を開発するような時は、周りを渦のように巻き込む力が必要になってきます。学生時代というのはその縮図でもありますので、部活動やサークルに限らずアルバイトなど私生活全般を通じて、周りの人を巻き込む力を鍛えてもらいたいです。

石井:人類の未知の問題に取り組むために、リーダーシップを取れる人材になれればいいですし、巻き込まれる側でも大きな貢献ができますから、どちらにしても自分の人間力を培うのは重要だと私も思います。学生時代にしかできない有益なことに挑戦する際には、われわれ教員も大いに応援しますし、そのための制度もありますので、ぜひ学生生活をエンジョイして、いろんなことに挑戦してほしいですね。

高瀬:東北大学は全体が非常にレベルの高い総合大学であり、例えば新しい医療機器を開発しようという場合に、工学系の学部や研究所があって、学内に適切な、しかもピカイチの専門家がいることも強調しておきたいです。在学中に他の学部の研究者や学生と友達になって、将来一緒にこんなことをしようと夢を語れるような学生生活を送ってもらいたいです。

石井:本間先生は医工学の教授を兼任されていらっしゃいますので、そうした知の融合について、ぜひ一言頂けますか。

本間:日本の大学で独立研究科として初めて医工学というものを標榜したのが東北大学で、医療系、工学系はもちろん、それ以外の学部を出られた方も在籍しています。そういうさまざまな分野の専門家同士が物理的に近くにいると、自然発生的にいろいろな効果が期待できます。改めて誰かを探すとか、技術を求めるとかしなくとも、自然に融合が生まれる組織になっているのは非常に大きいことだと思います。

失敗を恐れず夢を持って挑戦し 世界の未来に貢献できる人材に

そのように恵まれた環境が周りにある東北大学医学部を目指す高校生に向けて、メッセージをお願いします。

本間:大学での数年間は人生の中で非常に中身の濃い時期です。その間、同じ志を保つというのは大変なことですので、医療に携わるという高い志をしっかり確認して入ってもらいたいのが一つ。それから、解決するのが難しい問題だからこそ挑戦するわけで、失敗も覚悟してほしいです。学生の間は大概の失敗は致命傷にはなりません。失敗を恐れて何もしないのではなく、たとえ怖くても挑む挑戦心のある方に入ってきていただければと思います。

高瀬:東北大学の医学部に入ってくる人たちというのは、良い医療者になるのはもちろんですが、日本の医療を良くする使命を持っていると思っています。目の前の病気、患者さんを治すことだけではなく、社会全体を良くするために医療がどうあるべきか、そんなところまでも幅広い視野で考えられる医療人になるという自覚と夢を持って入ってきてほしいですね。

石井:もしかしたら無理かもしれないと思うようなことにまで若いうちにチャレンジをして、いろんな経験を積んだ人こそが日本の未来、世界の未来に貢献できる医療人材もしくは研究者になっていけるんだと思います。東北大学には何かに挑戦したければ何にでも挑戦できる環境が全てそろっていて、その先の人生におけるありとあらゆる選択肢を選べます。医療従事者になりたい人はもちろん、それ以外のさまざまなことに向かえる人を育てていますので、将来の選択肢を広げたい方はぜひ医学部に入っていただきたいなと思います。

(2023.3.29 取材)

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