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口腔粘膜からの遺伝性ジストニア関連情報を確認 ー新たな非侵襲的診断ツールとして期待ー

遺伝性ジストニアDYT-KMT2B(注1)は、DYT28とも呼ばれる比較的稀な疾患です。主に小児期に下肢のジストニアとして発症し、根治療法は存在しないものの発症早期に適切な介入を行うことにより、歩行能を含めた運動機能予後は改善しうることが知られています。そのため早期の診断が求められますが、診断は全エクソーム解析(注2)やメチル化DNA解析(注3)などの遺伝子解析を要することから、簡便ではないという課題があります。
東北大学大学院医学系研究科神経内科学分野 菅野 直人(すげの なおと)助教らの研究グループは、東京都立神経病院神経小児科の熊田 聡子(くまだ さとこ)部長らとの共同研究において、DYT-KMT2B患者およびコントロール(対照群)由来の口腔粘膜サンプルを用いて、H3K4me3(注4)というマーカーが患者群で有意に低下していることを突き止めました。
口腔粘膜の採取は低侵襲でしかも簡便であることから本疾患のスクリーニング法としての応用が期待されます。
本研究成果は、2024年5月27日に医学分野の専門誌Parkinsonism & Related Disordersのオンライン版に掲載されました。

【用語説明】
※1.遺伝性ジストニアDYT-KMT2B:ジストニアは、体の筋肉が意図によらず過剰に緊張した結果、異常な姿勢や運動をきたす状態。遺伝性ジストニアに関連する遺伝子はdystonia(ジストニア)より最初の3文字をとりDYT(番号)として表記されてきたが、近年は疾患背景を理解しやすくするため、the Movement Disorders Society (国際運動障害学会)により DYT-(遺伝子名)とすることが推奨されている。本疾患はKMT2B遺伝子異常にもとづくジストニアであることからDYT-KMT2Bと呼ばれる。遺伝性ジストニアの頻度は10万人あたり16人とされ、その中で単一遺伝子の異常が検出されたのが19%であり、その内訳としてもっとも頻度が高い(9%)のがDYT-KMT2Bである(Zech M., et al. Lancet Neurology 2020)。
※2.全エクソーム解析:次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析のひとつ。ゲノム全体ではなく、遺伝子情報がコードされる部位(エクソン)のみを解析する手法。
※3.DNAメチル化解析:DYT-KMT2BではDNAメチル化のパターンに特有の変化を生じることが知られている。解析にはバイサルファイト法を組み合わせた次世代シーケンサー、または遺伝子アレイが必要となる。
※4.H3K4me3:DNAはH3, H4, H2A, H2Bによって構成されるコアヒストンに巻き付くことによりヌクレオソームを形成する。コアヒストンタンパクのメチル化やアセチル化といった修飾によって、DNAと転写に関わる因子との関係は変化する。中でもH3の修飾は影響力が大きく、本タンパク質の4位のリジン残基(K4)に3つのメチル基を付加(トリメチル化:me3)はH3K4me3と呼ばれ、関連する遺伝子の転写効率に正の影響を与える。

【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科神経内科学分野
助教  菅野 直人(すげの なおと)
TEL: 022-717-7189
Email: sugeno*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
東北大学病院広報室
TEL: 022-717-8032
Email: press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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