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学際領域ゼミ

平成29年度第3回学際領域ゼミ
東北大学材料科学高等研究所
水藤 寛 先生

東北大学材料科学高等研究所の水藤寛先生に、「臨床医学の諸問題に対する数学的・流体力学的アプローチ」のお話をご講演頂きました。

水藤先生は数学者として、様々な分野の方々との研究プロジェクトでご活躍されておりますが、臨床医と関わる契機となったのは「大動脈ステント留置後の血管変形のメカニズムを解明したい」との思いだったそうです。

例として、大動脈狭窄症術後の症例を提示頂きました。CTやMRIから大動脈モデルを作成したところ、血管内で渦が発生している部位が発見され、狭窄より下流の部位でも血管壁に負担がかかっていることがわかりました。

血管内の流れを考える際、管内がまっすぐであれば中心部の速度が上がり、「Deanの双子渦」が観察されます。しかし、曲がりや捩れがある場合は、流速の早い部分は壁付近に移動して強い壁面剪断応力をもたらします。曲率は個人差が小さく、捩率は個人差が大きいと言われています。さらに収縮期と拡張期での血流モデルも提示して頂きました。

上記のモデルから、“曲率が大きい部位では強いDean渦が発生し、大きな壁面応力が生じる”、“曲率が大きい部位に捩れがあると、Dean渦は崩れてひとつの旋回流になり、壁面応力は小さくなる”、“曲率が大きくない部位に捩れがあると、旋回流が発生し、壁面応力は大きくなる(特に拡張期)”、ということがわかりました。

血管の中心軸に沿った大動脈モデルでは、オリジナル形状と粗視化形状を用い、各々の壁面剪断応力の違いを検討し、大動脈瘤の発生部位と形状に関連がみられることが分かりました。モデルでの検討と同時に、AIによる手法についても解説して頂きました。

また、AIを用いた例として、「人工心肺の制御(MEの経験と勘)」「肝がん画像診断の判断倫理の抽出(放射線診断医の考え方)」などについて、classification treeによる言語化もご紹介頂きました。

講義の様子

質疑応答の様子

最初に水藤先生が仰っていた「臨床医と数学者の協同」について、講義が終わる頃には具体的なイメージを思い浮かべることが出来るようになっていました。また、「直接理解するにはあまりに複雑な対象から、本質的な部分のみを抽出する。これは臨床医と数学者の共通部分」という言葉が印象的でした。異なる分野が協力することで、お互いの分野のさらなる発展か期待できるということが分かりました。

耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野 野村 有理
撮影:老年・在宅看護学分野 大橋 由基

※所属や職名などは、記事発表当時のものとなっております。

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