活動内容

第30回東北大学脳科学グローバルCOE若手フォーラム

 若手フォーラムでは現在、本GCOE内の若手研究者・学生間での相互作用を促進する活動に力を入れています。今回の若手フォーラムでは、学内の3名の先生に講演して頂きました。アカデミック版キャリアパスセミナーを柿崎真沙子博士(医学系研究科公衆衛生学分野)に、また研究をはじめてから論文としてまとめるまでの事例紹介を高橋将文博士(医学系研究科発生発達神経科学分野)にお願いしました。また今回は新しい取り組みとして最近催された2010北米神経科学会報告を中島敏博士(医学系研究科生体システム生理学分野)にお願いしました。また講演のあとは、懇親会をかねたポスターセッションが行われました。

「2010北米神経科学会報告会」
医学系研究科生体システム生理学分野 
中島敏博士

 中島博士には11月13日から5日間に渡って開催された2010北米神経科学会に参加したときの様子を、写真を交えて報告して頂きました。3万人を超える大きな学会のなかでは、多くの発表者のなかに自分の発表が埋もれてしまうこと、また騒音などの問題から、ポスター発表だけでは、なかなか自分の研究内容を多くの人には伝えられないということなど、実際に参加してみないと分からないような問題を伝えて頂きました。中島博士は、この問題に対して、学会参加者は是非とも口頭発表して効率的に自分の研究を発表するのが、コストパフォーマンスの面からも良いと述べられました。さらに博士は学会を有意義にする技術として、オンラインを使った学会のスケジュールの立て方や、英語の学習法など、有益な情報を提示して頂きました。会場では、他に学会に参加した方々との双方向的なやりとりがみられるなど、より学会の様子が伝わる報告会でした。


第6回 アカデミア版キャリアパスセミナー
医学系研究科公衆衛生学分野 
柿崎真沙子博士

 柿崎博士は、学生時代にはサイエンスエンジェルとしてご活躍なされ、一度企業への就職を経て、現在医学系研究科公衆衛生学分野の助教を務められております。経済悪化などにより現在研究者のキャリア形成は困難な現状がありますが、博士が実践なされたのは、徹底して自己分析をすること、ビジネスマナーを身につけること、研究室・大学以外の場所に顔を出すこと、名前検索されるようになること、そのために業績まとめページを作ることなどでした。「1000人に一人の天才ならば許されるかもしれないが、研究者といえども、社会不適合者は許されない」という、自らの経験に基づく言葉には説得力がありました。徹底して自己分析して、自分はそんなに素晴らしい人間ではないが、じゃあそこからどうするかを考えたという話は、自分の今後のキャリア形成を考える上でとても参考になりました。


第2回 研究をはじめてから論文としてまとめるまでの事例紹介
医学系研究科発生発達神経科学分野 
高橋将文博士

 研究者にとって、もっとも大切なことは、研究内容を論文としてまとめて世の中に形として出すことです。これがないと研究が業績として残らないのでキャリアを形成することができません。しかしはじめて論文を書く学生にとって、これは大きな壁です。高橋博士の講演では、ご自身が学生だった頃の視点と現在指導教官として指導する立場からの視点を交えて、論文執筆の全体像と執筆のポイントについて紹介して頂きました。そこでは、論文を書くのにはリミットがあるため期限を決めて具体的な目標ポイントを定めるとよいこと、また投稿前に論文を批判的に読んでくれる査読者を探すことといったアドバイスや、論文を書き始めてからの教授との具体的なやりとり、そしていざ雑誌に投稿してからのレビュアーとのやりとりの事例について紹介して頂きました。論文を仕上げるまでの全体像と仕上げるまでの個々の段階の詳細についてとてもわかりやすく解説して頂きました。


 3人の演者の方の講演を聞いて思ったことは、3人とも如何に自分をアピールするかを考えて、その結果行き着いているのは、「礼儀」であったり「気遣い」であったりと、相手を思いやることで共通しているということです。中島博士はポスターを見る人のためにハンドアウトを用意すること、柿崎先生は名刺交換した人には必ずお礼メールをすること、高橋先生は論文完成の飲み会では学生が先生にお酒をついで労うことなど講演で述べておられましたが、このような基本的な「思いやり」がアカデミックに限らずキャリア形成では大事なのではないかと今回の若手フォーラムに参加して感じました。これが成果として結実するよう、今後の研究活動や若手フォーラムの運営を進めていきたいと思います。

(文責:東北大学大学院生命科学研究科脳構築学分野・鈴木 歩)

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